反撃開始
先程の出来事は夢か現か…一瞬分からなかったけど、この溢れる力が夢ではないという証か。
それに今しがたあった出来事はこちらではほんの少しの時間だったようで、戦況も何もかも全く変わりはないようだ。
こんなに力が溢れてるような感覚はいつぶりだろう。
今や本来の光の大賢者の時の力だけでなく英雄や魔王の力も継承している。今までの魔力無しが嘘のようだ。
まさか再びこのようなチートみたいな力を手に入れられるとは思わなかった。
そして力を手に入れたことで私の髪の毛の色が『リーナ』の時の様な淡い金髪になっていることを魔力でなびく自分の髪の毛を見て気付いた。
…魔力無しのままでも穏やかに過ごせて良かったんだけどな…まぁしかし、この状況を変える為には必要な力か…。
目の前にいるケルベロスはいきなり巨大な魔力を持った者が現れたことで怯んでいる。
ふと後ろを振り返りロゼリア様の安否を確認した…どうやら気を失ったままだが生きている。
そしてソフィアやアルバート殿下達がいる方へ目をやる。
…みんなは私を見て呆然としているようだ。…まぁ気持ちは分からんでもない。
「ロイド様、よろしいですか?」
ロイド様の方へ声をかけた。私の一声でロイド様は我に返ったようだ。
「ロゼリア様をそちらの方へ運んでもらっていいですか?
そしてソフィアはもう一度皆を守る結界を作って。今度は私も結界作りを手伝うから」
私の言葉にソフィアが泣きそうになりながら頷いた。
「シア…」
アルバート殿下は驚きと喜びが入り混じったような表情をしている。
「アルバート殿下、お話は後です。それよりもアルバート殿下にお頼みしたいことがあるのですがよろしいですか?」
「なんだ?なんでも言ってくれ。俺はシアが生きててくれて本当に嬉しいんだ」
「私、あのケルベロスを倒したいと思います。その為に力を貸していただけないでしょうか?」
そう言って今や警戒心だけでなく怯えも含まれたような目でこちらの様子を伺っているケルベロスを見る。
「ちょっと!殿下に何危険なことを」
「わかった。俺にできることがあるなら手を貸そう」
クリス様が慌てて止めに入ろうとしたがアルバート殿下の表情を見て自分の力では止めることはできないと悟ったようだ。
それに今の私ならケルベロスに勝てるかもしれない。そう判断したのかもしれない。
「グアアアア」
ケルベロスは自身を鼓舞する雄叫びをあげこちらへ突進してきた。
「やけくそ感満載ね」
「ルシア様!!!」
ソフィアの悲痛な叫びが聞こえた。
その時ケルベロスを巻き込んで大きな大爆発を引き起こした。
幸い仲間達はソフィアの結界(私の補強付き)のおかげで無事だった。もちろん仲間達のことも考慮しての魔法だよ!
「キャン!!」
あの巨体のケルベロスにすらダメージを与えるくらいの濃密な魔力を練り上げたことで満足したが、まぁそれでも立ち上がれるのはさすが地獄の番犬といったところか。
「それじゃあ更にすごいのおみまいしちゃおうかしら」
そう呟けばケルベロスが先ほどよりも大きな邪の光線を放ってきた。
そんなの多少の聖の力で消してやる。
私が手をかざせばたちまち私の手前で光線はかき消された。
「…すごい…まるで神官長様が前に教えてくれた大聖女様みたい…」
ソフィアがそう呟いた。
そして私の周りには直径3メートルくらいの大きな魔法陣が出来上がった。
「聖なる力と光の力をここに集約する…ホーリーシャイン!!」
まばゆい光が辺り一面に広がりそれが無数の光弾となってケルベロスに降り注いだ。
「グアアアアアア」
ケルベロスがドシンと大きな音を立てて倒れた。
今がチャンスだ!
私は仲間達の立っている場所に先ほどよりは小さめの魔法陣を出現させた。
そこから英雄から託された虹色の刃を持つ剣が出現した。
「アルバート殿下」
私は正面を見据えたままアルバート殿下に声をかける。
「これは限られた人間だけが扱える伝説の剣です。おそらくアルバート殿下も感じてらっしゃると思いますが、この剣には聖なる力が宿っています。
これを扱えばケルベロスも消すことができるのですが私には残念ながらその剣を扱うことができません。…アルバート殿下、どうか試していただけないでしょうか?」
これは少し賭けでもあったりする。その限られた人間というざっくりとした情報で確証は得られてないからだ。
先程英雄の話を聞く限り確かに私には扱うことが出来なそうだ。
しかし私の周りにその資格がありそうな人間と聞いて真っ先に思い出したのがアルバート殿下のこと。
彼は特別な力を持つ王家の一員で次期国王と名高い。
そして王家の歴史を紐解けば彼らの祖先に英雄王なる者がいたという。歴代の聖女で何名か王族の仲間入りしたことも特別な力を持つ要因の1つにはなっただろうが、英雄王の力は絶大だったのだろう。
「…わかった。やってみよう」
アルバート殿下はその剣を手に取った。
その瞬間虹色の光がアルバート殿下を包むようにパァっと光った。
…どうやらこの賭けには勝ったようだ。やはりアルバート殿下がこの剣の持ち主に相応しかったようだ。
「はああああああ!!」
地面を蹴り華麗な剣さばきでアルバート殿下がケルベロスを斬りつけ、ケルベロスがけたたましい声をあげなら絶命し、ブシャーーっと邪の瘴気を出しながら消えてった。
ようやくこのあたりの邪の気配が完全に消え去ったことを感じて私達はみんな心の底から安堵した。




