覚醒
いつの間にか私は魔王の目の前にいた。
仲間達は魔王が害を及ぼさないと判断し端の方で成り行きを見守っていた。
「さて…この魂を包んだ魔力は元々『前回の』私がもたらした結果なんだったな?ならば私がその責任をとってこの魂を包んだ魔力を解放しよう。」
そう言って魔王は私の胸の近くに手をかざし温かな魔力を流してきた。
私の中で魔力が流れるのを感じ取った。
「これでお前の本来の…いやそれ以上の魔力を使えることになるだろう。なんせ私の力の一部もお前に継承させたからな」
え…?そんなサービスまでしてくれたの?
その時私の体を柔らかく暖かな金色の光が包み込んだ。
「それならば俺もお前に力を分けよう…!俺を…俺達を…助けてくれてありがとう!」
振り返れば英雄が先ほどの魔王と同じように手をかざしていた。英雄だけではない、騎士の男性や魔導師の女性、弓使いのエルフの男性も私に手をかざして力を分け与えてくれてる。
「お前も聖なる力は僅かばかりか持ってるだろうが…その力を最大限まで引き出してやる!……だから次は生きてくれ」
泣き笑いを浮かべながら私を優しく見つめる英雄。
「ありがとな!リーナ!」
「今度は幸せになるのよ?」
「君との冒険は忘れない」
騎士や魔導師、弓使いも私に声をかけてくれた。
「さぁ…あるべき場所へ帰るんだ。」
その言葉を聞いた時、あぁ…やはりこの世界での『リーナ』はもう死んでいて存在しないということが改めて分かった。
でももう私には新たな居場所があるはずだ。
もう死んだと思っていたルシア…。だけどもし私がそのまま死んでしまったら、アルバート殿下やソフィアはどうなってるのだろう。ロイド様やクリス様、あんまり好きではないけどイザベラ様…そして生きて罪を償ってほしいロゼリア様。
…このままここで終わる訳にはいかない…!
「ははっ…それでこそリーナだ、もうひとつお前に餞別をやろう…」
そう英雄から渡されたのは虹色に輝く剣。これは確か英雄が愛用していた英雄だけが装備できる剣だ。
「でもこれはリーナには扱えない…だがお前の身近にきっと扱える人間がいるはずだ。お前に託した聖なる力とその剣でお前の未来を切り開け」
その言葉を最後に私を包み込んでいた金色の光がより一層強く輝き、英雄や仲間達、魔王の姿がとうとう見えなくなってしまった。
ソフィア視点
「シアアアアアアアア!!」
アルバート殿下の悲痛な叫びが響き渡る。
ルシア様とロゼリア様が先ほどいた場所はケルベロスの撒いた邪な瘴気に覆われていて、その中がどうなっているのか…私達には全く分からなかった。
ケルベロスの邪の光線はそれほどまでに威力があったのだ。
私は聖女ではあるけども魔力の大きさはそれほどでもなく、いくら聖なる結界とはいえここももうじきもたなくなる。
しかし気になるのは先ほど邪の光線を受ける瞬間まで私達の事を気にかけてくれたルシア様のことばかり。
彼女は最後の最後に私達を逃そうとしていた。おそらく自分もロゼリア様を連れて逃げることができないと悟ったのだろう。
「ルシアさまああああああああ」
私も涙を押し込め声をあげる。
「皆、ルシア嬢の頑張りを水の泡にする気か!!!ひとまず逃げるぞ!!」
ロイド様も断腸の思いなのだろう。ここにはアルバート殿下という命に代えても守らなければならない主もいる。
ここで『逃げる』決断をしなくてはならない。
アルバート殿下の頬には涙が流れていて「シア…」と呟き涙を拭って決断しようとした。
その時
「…待ってください」
私の言葉にみんなが私に振り返った。
私は先ほどルシア様がいたあたりから小さな気配を感じ取った。
変わらず瘴気が立ち込めていて何も見えないが、あの中に何かがいるという確信を持った。
もしかしてルシア様が生きておられるのか…。
私は目を凝らして探っていた。
その気配は少しずつ…少しずつ…大きくなっていき、その気配もだんだんどのような物かを感じ取れるようになった。
それは温かな聖なる光の魔力。
ただルシア様は…魔法が使えないお方…。この力は誰の力?
「……え」
どうやら聖魔力を保持して全属性の魔法を扱えるアルバート殿下にも気配を感じ取ったようで、みんなに「まて」と命令した。
どんどんその聖魔力を含んだ光の力が溢れていき瘴気もどんどん薄くなってきた。
ケルベロスも何かを感じ取ったように距離を取って唸っている。
とうとう瘴気を完全に消し去り今や膨大になってる聖なる光の力も少しずつ収まって、その中の人物をなんとか確認できるまでになった。
「え」
そこにいたのは恐らくルシア様であった。
恐らくといったのはお顔立ちもルシア様だし、さらさらの髪の毛はルシア様のそれなのだが、色は淡い金色なのだ。ルシア様本来の色は濃い茶色い髪だった。
あと目も本来のルシア様は濃いめの茶色なのだが、右目はサファイアのような青色で左目はエメラルドのような緑色だった。
そして更に驚いたのがルシア様の背中には金色の光で模った天使のような翼が生えていたこと。
私含めみんな驚きで声も出ずただルシア様?を見つめていた。
ルシア様は自分の両手を眺めて「ふふっこの魔力の溢れる感じ久々だわね」と笑った後、ケルベロスを睨みつけた。
「さて…ここからは1000倍返しといきましょうか?」
ケルベロスは僅かに怯んだような気がした。




