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森の中から現れたものは

次の日の朝、朝食を済ませた私とソフィアは昨日訓練した場所と同じ森の中に来ていた。


森の中といっても開けた場所で8人で集まっても全員がそれなりのスペースで訓練できるくらいの広い場所だ。

他にも同じような場所が何か所かある為他の班も似たようなところで訓練しているのだろう。



「ふふっ私、ルシア様と同じ班で良かったです」

ソフィアがにこにこと嬉しそうに話した。


「私もソフィアと一緒でとても嬉しい」

私がそう言えばソフィアが喜んでくれた。



「朝から鬱陶しいわね」

背後からイザベラ様がイライラした声が聞こえた。

赤い髪の毛を後ろに靡かせて不機嫌そうにこちらを睨む。


「鬱陶しいと言えばあなたがいちいちルシア様とソフィアさんに突っかかる部分も鬱陶しいですわね」

イザベラ様の後ろからロゼリア様が現れた。


「ロゼリア様?あなたはあからさまですわよね?アルバート殿下にアピールに勤しんで大変そうだわって昨日見てて思いましたもの。」

イザベラ様が馬鹿にしたような笑いを浮かべてロゼリア様に噛みつく。


「あら…アピールだなんてはしたない…でもそうですわね、あなたと違って私はアルバート殿下と楽しくお話させて頂いてますわ?アルバート殿下はいつも話題が豊富でお話が飽きませんもの…」

にこやかにマウントを取るロゼリア様にソフィアがガタガタと震えているのを視界の隅に捉えた。


イザベラ様は怒りの形相だ。今にも殴り掛からんとする雰囲気だ。



「また君たちか、少しは仲良くできないのか」

アルバート殿下とロイド様、クリス様が到着した。あとはルークだけか。


「あっそういえばルーク様が今日の訓練用の魔石を準備してくださるそうで少し遅れるって言ってました。」

ソフィアが思い出した様に言った。


「はぁ!?その当番あなたのはずじゃない!?」

イザベラ様がソフィアに噛みついた。…この人はいちいち噛みつかなければ気が済まないのだろうか…。


「えぇ…そうなんですけど、ルーク様が明日他の班の訓練を見てみたいと仰って…今日と明日の当番を交換してくれとのことでした…」

少しビクビクしながらもきちんと答えるソフィア。あぁ…確かに本当なら今日がソフィア、明日がルークだったと言われて思い出した。ルークめ、セーラの班に見に行く気だな。


「多分ルーク様は今、森の少し入った所にいると思います。」

「あぁ…魔石を自然に漂う魔力で清める為ですね?」

クリスが森の方へ目を向ける。

「そんなに奥に入ってないと思うのでもう少しで来るでしょう…少し待ちますか」

クリスの提案にみんな頷く。








「ーーーーーーー!!」


鳥達が逃げるように飛び立っていった…と思ったら今一瞬何か聞こえたような…。


それは他の人も感じた様でみんな一斉に何かが聞こえた方…森の中の方へ視線を向けた。


「今みんなも聞こえたか?」

ロイド様が私達1人1人の顔を見る。


「え、えぇ…何か聞こえたような気がしますわ」

イザベラ様が少し驚きながらも答えた。


「……ルークが心配だな、ルークを呼びにいくぞ」

アルバート殿下が森の方へ歩を進め…ようとしたが、ロゼリア様がアルバート殿下の前に立ち塞がった。


「万が一アルバート殿下の御身に何かあってはなりません、ここは臣下である私達にお任せください。」


アルバート殿下がじっとロゼリア様を見つめていた。少しの間をあけてから口を開いた。


「…いや、それを言うならばみんな一緒に行動した方が安全だろう。」

アルバート殿下の言葉にロゼリア様が退かざるを得なかった。ロゼリア様は何か言いたそうな顔をしていたがため息をついてアルバート殿下に道を譲った。





森の中を歩き始めて10分くらい経っただろうか。

「…何やら嫌な予感がするな」

アルバート殿下の額に汗が流れた。

ソフィアも聖女の力で何か感じたのだろう。カタカタと震えていた。

「なんで私まで行かなきゃならないのよ!!」

イザベラ様もさすがに恐怖を感じたのか、怒鳴り声が少し震えている。

「そもそも、ソフィアさん達が当番交換なんてしたからややこしくなったんじゃない!!ソフィアさん1人に行かせれば良いのよ!」

何やらとんでもない理屈を並べだした。

仮にソフィアとルークが当番を交換しなかったとしても問題は発生しただろうに…



「いい加減にしろ、行きたくなければ1人で待ってればいいだろう?」

流石のアルバート殿下もイザベラ様の物言いには腹が立ったのだろう。冷たい声でイザベラ様を睨みながら怒った。


「も、申し訳ございません…」

イザベラ様はアルバート殿下がここまで怒ったのは初めて見たのか、驚きと冷たい対応にショックを受けたのと2つの感情で目にうっすら涙を浮かべながらしおらしくなった。


静かになってくれて良かったなという思いと、もし私もアルバート殿下にあの冷たい対応されたら泣くわという思いを頭の隅に追いやって目の前の道なき道を進むことに集中する。



少し進んだ先に何かの気配を感じたのか先頭を歩いていたロイド様が立ち止まる。


「…何かいるな」

目の前にある木々の向こう側を睨むようにアルバート殿下が呟いた。



木々を避け少し開けた場所に出てきた。

いや、開けた場所というのは語弊が生じるな…この開けた場所の奥の方にいる大型の魔物…あいつがここら一帯の木々を無くしたのだろう…。


大きな魔物は犬の顔を3つ持ち、私達の存在に気が付いたソレはそれぞれ牙をむき出しにして私達に殺気を当てた。



「そんな…噓でしょ…」


ソフィアが真っ青な顔をし目を見開き大きな魔物を見つめた。


「何故地獄の番犬ケルベロスがここにいるの…!」



そう、そこにいた大きな魔物は魔界にしかいないはずのケルベロスだった。

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