視察と息抜きと
アルバート殿下とのお茶会の後、アルバート殿下は何やらお父様と話があるようで応接室に入って行った。
アルバート殿下ご一行は領地にある町の一番良い宿屋に2泊していく予定とのこと。
私は次の日、アルバート殿下に領地の案内を頼まれた。
アルバート殿下を案内したのは農地が主だった。
田舎領地だから案内できるところは限られてくるが、私はこんなのどかなシュレーゼン領が大好きだ。
アルバート殿下はこの畑では何を育てているのか?といった質問や農業や畜産業を纏める為の組合の仕組みを熱心に聞いていた。
そこまでは良かったのだが…。
「お嬢様は野山を駆け回って野草集めしていたんですよー」
「お嬢様が私達が仕事で子供の面倒を見てくれてたんです。鬼ごっこやかくれんぼ等子供達を喜ばせる遊びを考えて遊んでくれてたんです」
「畑仕事も率先して手伝ってくれたんですけどねー。こう見えてお嬢様…虫があまり得意じゃなくて…こっそり土を使わずに一部の野菜を栽培できる水耕栽培なるものを考案したんですよ。
実はハンバーガーだけではなく農業関係でも新しい手法を考案してたすごい方なんですよねーお転婆ですけど…」
…等々あまり他の人には知られたくないお転婆だと言われてた時代の話を組合のお偉いさん方やその奥様がアルバート殿下にお話していた。
アルバート殿下もアルバート殿下ですごいグイグイ私の昔話を聞くもんだから、みんな気を良くしてあれやこれやと教えてくる。
「ひいいい、こ、これ以上は勘弁して!!」
私は顔を赤くしながら堪らず待ったをかけるが、奥様方は不満顔で
「せっかく我らがお転婆姫の良さを王太子殿下に売り込んでいたのに!!」
と口を尖らせていた。
「ふふふっルシア嬢は領民にとても愛されているんだね」
アルバート殿下はキラキラした笑顔をこちらに向けてきた。
一応人の目があるということで『ルシア嬢』呼びにして、表向きは優しそうな笑顔に見えるが私は知っている…これは面白い話を聞いたいたずらっ子のような笑みだということを…。
一通り私の話で盛り上がり私がげっそりする頃、お父様が遅れて組合の方へ到着した。
この前応接間でアルバート殿下と話し合われたことの続きを今度は組合の上層部と交えてするらしい。
ちなみに組合のトップは一応父になっていて、こちらの方の仕事も率先してやってはいるのだが領主の仕事はそれだけではない為上層部の何名かにそれぞれ仕事を振って報連相の連携を取っている。
「ルシア嬢、今日は案内役ありがとう。私はこのままシュレーゼン伯爵と組合関係者の者達と話し合いした後そのまま宿に戻ることにするから先に帰ってても大丈夫だ。」
「いえ、お役に立てて何よりです。ではまた。」
そうして私の本日の業務は終了した。
次の日もアルバート殿下と町へ行き、その日はカフェでお茶をしながら寛いでいた。
アルバート殿下に声をかけてもらった時「今日はどこの視察ですか?」と聞いたら「今日はシアとゆっくりしたい」という要望だった。
連日公務で慣れない土地にいるのも確かに疲れるだろうと思い、私がよく行っていたカフェに殿下を連れてきた。
「私のおすすめはチーズケーキですね!」
「くくっシアは食べ物の話になるといきいきしてるよね?」
「…悪かったですね!私は食いしん坊ですよ!」
そう言いながら頬を膨らませれば今度は声をあげて笑うアルバート殿下。
そういえば最初の頃私はアルバート殿下やロイド様に対して結構大きめな猫を被っていたな…とふと思った。
まぁ相手は王族に大貴族…と国のトップにいる人達であるから大きめな猫を被るのも致し方なしなのだが、最近は特にアルバート殿下と話す機会も増えたからか、私も素で話すことが増えたように思う。
「シュレーゼン領では有意義な時間を過ごせて良かったよ」
「それなら良かったです」
「とても良いところだね、シアとも沢山話せて楽しかったし」
「ふふふっ学院でもお話してるじゃないですか?」
「いや、学院でのシアとはまた違った一面を見れて良かったよ?とてもお転婆だったとか…」
「そ、それは…言わない約束で…」
よぼよぼと手で制したら再び声を出して笑うアルバート殿下。
そんな殿下を見て私も笑うのだった。
こうして和やかな雰囲気の中アルバート殿下とのお茶会は終わり、またアルバート殿下のシュレーゼン領の視察も無事に終わった。
今回のアルバート殿下の視察は私にとってもとても実りのあるものだった。ハンバーガーの特許絡みの申請もできたのは大きい。
帰りの馬車の見送りの時アルバート殿下は寂しそうにしていたが、私も王都に戻るし学院で会えるじゃないか!と言った所「…わかってないな…」とぼそっと言った後、馬車から笑顔で手を振りながら少しずつ遠ざかるアルバート殿下を見送った。




