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パン屋でのプレゼン

「そのパンは売れるという保証はあるのですか?」

奥さんは商売人の顔付きになって私に聞いてきた。


「えぇ、確実に売れると思います。その理由は私がここで喋るよりも実際作って実物を見てもらった方が分かると思います。」

私もその辺にいるごく普通の町娘としてでなく、一貴族の令嬢として、そして経営者の様な顔付きで話し出した。


「ただ先程も言ったようにそのパンの権利はこちらが持ちたいと考えているので、色んな手続きが済んでから実物を見せたいと考えています」


権利を主張する前に商品を公にするのは避けたかった。この夫婦は大丈夫であろうが先に権利を主張されたりしたらとても厄介なことになるからだ。


それに親しい仲であるからこそ後々このビジネスで揉めて亀裂が入ったなんて後味の悪いことにならないように約束事を決め明文化しておくのが大事なのだ。


「その権利というのは具体的に何が発生するのですか?使用料の様にお金を払わないといけないならば、うちにはそんなお金…」


「いえ、お金はいりません。ただこの店でもしそのパンを売っていただくなら、あくまで『シュレーゼン領名産のこのパンをこの店でも売り出しました』というスタイルで売って頂きたいのです。もちろんシュレーゼン領名産のパンを『この店の職人である旦那さんが』作ったというスタイルで。

そうすればシュレーゼン領の名産の知名度も上がりますし、美味しいパンを作って提供した旦那さんの知名度も上がって、より売り上げに貢献できるのではないか…と考えております。」


なんだか前前世でいう『プレゼン』をしているような気がしてきた。

そういえば前前世で内容は違えど何度もプレゼンをしたことがあったなぁと懐かしい気持ちになった。

私のプレゼンしてる姿をアルとアンは目を見開いて凝視している。


「そうですか…分かりました、一旦主人と相談してみます」

「よろしくお願いします」



私は用が済んだことに満足して買ったパンを持って店を後にした。

その後をアルとアンが慌てて追いかけてくる。


「シア!一体どういうことだよ!」

「ふふふ、私が前から温めていた案がついに実現されるかもしれないわ!アン!確かお母様今週末領地に帰るわよね?私達も今週末領地に帰るわよ!」

「えええ!?」


アンはいきなりのことに慌てていた。

アンには急な話で申し訳ないけれどやることができたのだ。でもここではできない。どうしても領地に帰る必要がある。


「領地に帰るから休みの申請しなきゃね…頼めるかしら?」

「しょ…承知いたしました」

「そんなわけでアル!次に会うのは早くても再来週以降ね!んじゃまた!」


アンを捕まえながら足早に馬車の方へ歩いて行った。呆然とするアルを1人残して。

「一体何なんだよ…」

アルが私達を呆然と見つめたままそう呟いていたことに私は気づくこともなかった。





「シア?アンに聞いたわよ?お母様と一緒に領地に帰るの?」

家に着いて少ししてからお母様は私の部屋にやってきた。

「学院で何か嫌なことでもあった?」

どうやらお母様は私が学院で嫌なことがあったから領地に戻りたいと勘違いしているようだ。


「いえ、学院はとても楽しいです。私はそれよりやらねばならないことがありまして…それは領地でないとできないんです」

そう言いながらざっくりと今後の計画をお母様に話した。



「まぁ…シアがまさかうちの領地の名産を考えるだけでなく、それを売り込もうとしていたなんて…あんなにお転婆だった子がこんなに立派になったのね…!」

お母様は口元に扇子を当てながら泣きそうな顔を半分隠していた。


「お母様も応援するわね?お父様には早めにお母様の方から手紙を出しておくわ」

「ありがとう!お母様!」

お母様にも応援してもらってることで俄然やる気がみなぎってきた。






「え?ルシア嬢領地に帰るの?」

図書館で調べ物をしている時アルバート殿下が聞き返した。

私が再び図書館で熱心に調べ物をしていた時に偶然図書館に来ていたアルバート殿下が私の座ってた席の方に寄ってきた。

今度は何を調べ物してんだって聞かれたから名産物の開発について調べていること、名産物の開発の為に領地に帰ることを話した。


「えぇ…!ちょっとやってみたいことがありまして」

「そうなんだ?んじゃちょうどよかった。そろそろシュレーゼン領へ視察に行こうと思ってたんだ。」


え…このタイミングで…

私は満面の笑みでそう告げたアルバート殿下を呆然と見ていた。

いや待てよ、私の開発したパンの権利やら名産品の宣伝やらできる良い機会なのでは…?そう思い直した私は「お待ちしてますね!!!」と満面の笑みで返した。


「……こりゃまだ前途多難だな…」

「……ん?」

何やらぼそっと殿下が呟いたような気がするけどきちんと聞き取ることが出来なかった。


「何でもない」と苦笑いした殿下もキラキラとイケメンオーラが眩しかった。


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