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報告と新たな疑惑

家に帰った私は早速アルバート殿下に謁見を申し込むことにした。

私の行動に驚いたアンは「一体どうされたのですか!?」とタジタジになっていた。


それもそうだろう。

ただの一介の伯爵令嬢がこの国の王太子殿下に謁見を申し込むのだ。

伯爵ではなく伯爵『令嬢』が。しかも婚約者でも婚約者候補でもないただの令嬢だ。

お母様も止めはしなかったがとても驚いているようだった。


しかしこれは急を要することで仕方ない。アンには「事が解決したら教える」とだけ言ってアルバート殿下の返事を待ち、数日後王宮の方へ馬車を走らせた。



お城の兵士に連れられて、王宮の一角にある客間に通された。

部屋の中には既にアルバート殿下やロイド様クリス様がいた。


恐らくクリス様も例の事件を知っているのだろう。


「アルバート殿下、お忙しいところ申し訳ございません」


「いやいい、楽にしてくれ。それにこういう問題じゃなければ素直に君の訪問を喜べたんだけど…」

アルバート殿下は苦笑いをしながら、そして真面目な顔に切り替えて「どうしたんだ?」と聞いてきた。


「これは私のただの勘ではありますが、あの毒…スターアニスではございませんか?」


「…!」

3人は驚きに目を見開いた。

…これは当たりか?


「スターアニスはお香の原料ともなります…が服用すれば嘔吐や下痢、意識障害を引き起こし最悪死に至らしめる毒草でもあります…」


私は一呼吸を置き再び話し始めた。


「お香で有名なのはたしかマーキュリー領でしたよね?スターアニスの栽培もされていたはず…、しかしだからといって今回の事件の犯人をあの信仰深いマーキュリー領関係者と決めつけるのは早計だと思い、殿下のお話を聞こうと思って参りました。そもそも毒がスターアニスであるとこもわかりませんしね」



一つため息をついたアルバート殿下は苦笑いしながら口を開いた。


「…ほんとルシア嬢には適わないね」


アルバート殿下はカップを持ち紅茶で口を潤してから話し始めた。


「ほんとはこれはまだ口外できないことなんだけどね、私の婚約者候補が全員外されたことは知っているだろう?」


「えぇ…ってあの…私が聞けない内容の話なら無理には聞きませんが…」


「いや、いい。こうなった以上君も無関係ではないし、早かれ遅かれ君にも聞いてほしい話だからね」

そう言ったアルバート殿下は固い表情のまま話を続けた。


「王家で婚約者や婚約者候補を決めるといったら幼少の頃からの関係というイメージはあるだろうが私の婚約者候補が選ばれたのはごく最近なんだ。

2年くらい前だったかな?その時に決めたことなんだけど、俺の場合普通の婚約者として選んだわけじゃないんだ」


「え…?」


「その時何やらきな臭い案件があってね、ただその時は漠然としたものだったから手っ取り早くやばそうなやつを近くに置こうということで婚約者候補に指名したんだ」


「えっ…それじゃあ、あの3人は」


「あぁ…どの令嬢もクロの可能性がある家の令嬢ってわけだ」


持ったカップを睨みながらアルバート殿下は更に続けた。

先程までのアルバート殿下はよそ行きの対応だったが腹を割って話そうと決めたからか本来のアルバート殿下の話し方になっていた。


「だが正直誰がクロなのかはっきりと分からなかったが、最近婚約者候補という餌を撒いて色々対応してるうちにようやく尻尾を掴めてな…だから更に餌を撒いた」


「それが婚約者候補を全員外すということですか?」


「あぁ…そうだ、相手は婚約者候補…ゆくゆくは婚約者になり王太子妃になることを望んでいた令嬢とその家族だからな…だがこうも早く行動に出るとは思わなかったが」


クックッと笑うアルバート殿下を見た時あっ…この人は敵に回してはいけないと察した。

この笑みは私に向けられてる訳ではないと分かっていても背筋が凍った。

ロイド様やクリス様も同じことを思ったのだろう。両隣で表情を強張らせたのが分かった。


「あぁ…ごめん、ルシア嬢を怖がらせたいわけじゃないんだ」


そう言って少し焦ったように私の手を握るアルバート殿下。この時私は初めて自分の手が震えていることに気付いた。


「いえ…大丈夫です、続けてください」

内心大丈夫じゃないけどな!!ってツッコミも忘れず続きを促す私。


「3人の候補者で誰が婚約者になるか分からない状況を作らせ泳がせていたが、貴族の中には聖女であるソフィアもその内候補者に名があがるかもしれないと思っている者もそれなりにいた。そこから一気に3人の候補者が外された…そうなれば本命はソフィアだと大体の者は思うだろう?

そこで俺はソフィアを中心に護衛をひっそりと増やして敵をあぶりだそうとした…ソフィアには申し訳ないことをしたと思うが…」



ソフィアを囮にした作戦か…それはあんまりだと表情に出してしまってたのだろう。3人が申し訳なさそうにこちらを見る。


「…でもなるべく危険がないようにしてくださったんですよね?」

「もちろんだ!!君たちに何かあったら俺も耐えられない!!」

そう言って私の手をぎゅっと握る。真剣な目に思わずドキッとしたが、先程からそういえば手を握られたままだったなと思い出した。



「…毒はルシア嬢の言うようにスターアニスだった。毒に気付くだけでなく毒の種類にまで気づかれるとは思ってなかったから正直驚いたが…さすがだな」


私の手を握りながら、先程の冷たい笑いは嘘のように今度はきらきらした笑顔を見せる。おい、手。


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