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三つ巴の戦い

明くる日、学院の廊下をソフィアとセーラと歩いていたら前方で人だかりができているのが見えた。


「……なんだろう?」

訝し気にセーラを真ん中に人だかりの方へ行くと2人の女子生徒が対峙していた。

1人が腰に手を当ててふんぞり返っている様な姿でもう1人は廊下に座り込んでいた。

その立ってる方の女子生徒に見覚えがあった。


「…イザベラ様…」

ソフィアが不安げな声をあげる。


真っ赤な髪を後ろに靡かせて怒りの形相で座り込んでいる女子生徒を睨みつけていた。

座り込んでいる女子生徒はミルクティーブラウンの髪の毛を巻いた可愛らしい女子生徒で紫色の目にはうっすら涙を浮かべている。


この状況なら誰がこの女子生徒を泣かせたのか明らかで、その本人に嫌な思いをさせられたソフィアもその事を思い出したからか怯えた表情で2人を交互に見ていた。


「アイリーン様!?あなたのせいで私にまでとばっちり食らったじゃない!!!どうしてくれんのよ!!!」

イザベラが顔を真っ赤にして怒鳴っている。

…ということはこの座り込んでいる令嬢がマーキュリー様か。


「そんな…!!ひどいですわ!私はただ皆さんが困ってらっしゃったところ声をかけたところを殿下に誤解をされてるだけですわ…!婚約者候補解消は貴女にも落ち度はあるのではなくて!?」


「なんですって!?貴女の方が遥かに問題行動なさってるじゃない!何が困ってる皆さんよ!貴女が手を差し伸べるのは殿方だけじゃない!!そんな貴女のどこが問題ないっていうのよ!!!」


マーキュリー様の言葉がイザベラの逆鱗に触れ更に激昂する。

周りは「やはりあの婚約者候補全員白紙は本当だったのか…」とひそひそと話している。


ソフィアは怯えた表情を浮かべセーラは顔を引きつらせている。

このカオスな状況を放っておいて教室に戻ろうとした時


「この騒ぎはなんですか?」


凛とした声で辺りは一気に静かになった。



濃いめの長い金色の髪を緩く巻いた美女が威風堂々と現れた。

ルビーの様な赤い目はぱっちりとしていてまつ毛も長く鼻筋はすっとしていて赤い口紅がとても似合っていて口元にあるほくろは色っぽさもある。

それでも全体的に洗練された印象があるのは彼女の生まれ持った気品からなんだろうか。


「ロゼリア・ジュピター嬢…」

誰かが小さく呟いた。



「これは…イザベラ様にアイリーン様ではございませんか?淑女として大声で怒鳴り合う等いかがなものかと思いますが?」

凛としたロゼリア様が扇子を口元に当てて2人を睨んでいた。


一瞬ロゼリア様の登場に怯んでいたイザベラとアイリーンだったが先に我に返ったイザベラが

「あら、ロゼリア様ではありませんか?ロゼリア様は婚約者候補が白紙になられてからはお変わりありませんこと?」

と嫌味を言うことも忘れず声のトーンを戻しロゼリア様を睨み返した。


「ふふっ…わたくしは領地経営の一端を任されているので、貴女のように他者をいびったりアイリーン様のように殿方に媚びを売ったりする暇はないのですよ?」

ロゼリア様が最初にイザベラの方に目をやってそれからアイリーン様の方へ視線を動かした。


イザベラもアイリーン様も顔を真っ赤にしてロゼリア様を睨みつける。


「ですが貴女方も腐っても元婚約者候補として名があがった者…そんな貴女方が公衆の面前で恥を晒してるのを見て同じ婚約者候補として名があがったわたくしとしてはとても恥ずかしいですわ?あまりみっともない姿を晒すのはやめて頂戴?」



これにはイザベラもアイリーン様も撤収せざるを得ない。



「お見事ね…」

ロゼリアの後姿を見ながらセーラが呟いた。

「でも彼女も何かしらあるから婚約者候補から外されたのよね…?」





「ちょっと待って!!!」

「きゃっ!!?ルシア様!?」

帰りの昇降口で靴を履き替えようとした時、ある違和感を覚えた私はソフィアの靴を奪い取った。


ソフィアが履き替えようとした靴の中に一瞬何かが見えた私は靴の中を覗き込む。


「…何かが入ってる」

「え」

ソフィアが驚きで目を見開いた。


「…ソフィア、今日は私の内履きで良ければそれで帰るといいわ。ちょうど内履き新しい靴買ったばかりだからそれをあげるわ」

「セーラ様!そんな新しい内履きを頂くなんて…」

「大丈夫よ、この位…あっそうだ、それならお礼としてルーク様にお勉強教えるの手伝ってよ」

そういえばセーラはルーク様にあれからちょいちょい勉強を教えているようだ。



「その靴は私が預かろう」


背後から声をかけられ振り向けばアルバート殿下とロイド様が立っていた。


「アルバート殿下…」

「えっ!?えっ!?」

当のソフィアは絶賛混乱中だった。それもそうだろう、自分の靴を何故か知らないが自国の王子様が預かると言い出したのだから。


「…セーラ、ちょっとソフィアを連れて先に行ってて」

「…分かった」

ソフィアをセーラに任せ、その場を離れさせた。

ソフィアからその場にはなれてもらいたかったことを瞬時に理解した辺り流石セーラと心の中で称賛した私はソフィア達がいないことを確認するとアルバート殿下にお願いした。


「できる限りで良いので、問題が解決したら私にも教えてくださいね?あと私にできることがあれば協力しますので」


「ルシア嬢は…何が起きたか分かったのか?」


「えぇ…おそらくソフィアの靴の中に入ってるソレって…





毒ですよね?」


私が靴を見つめながら言えば2人は驚いたように目を見開いた。


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