不吉の予感1
王宮の聖堂でクリス様から色々じゃがいもについて教えてもらった私は家に着くなりさっそくノートにメモを取っていた。
忘れない内にメモを取っておこうとすぐに机に向かっていると「お嬢様、お着替えの方を…」とアンが慌てているが聞こえないフリ。ごめん、アン。
あらかた殴り書きのようにメモを取り終えた私はアンに言われた通り着替えさせてもらい、再び机に向かって先ほどの殴り書きのメモの清書に取り掛かった。
清書してる時にふと聖堂を出てくる時のアルバート殿下の様子を思い出した。
というのも今までも可愛がってもらってはいた自覚はある。…が先ほどのアルバート殿下はいつものアルバート殿下とは違ってた様に感じた。
どこが違うって聞かれるとどう答えていいか分からなかったけど、クリス様を紹介してもらった時にぼーっとしてたアルバート殿下を見て、どうしたのか?と内心首を傾げていたが、その後はいつもの殿下だったと思う。
私やクリス様がじゃがいもについて色々と話してる時は熱心に耳を傾けてくれていたし、なんならアルバート殿下も話に交ざって色々意見交換したりしたから、その辺りも特段おかしいと感じられなかった。
問題はその後だ。
私がそろそろお暇しようとした時、アルバート殿下が直々に聖堂の入り口までエスコートしてくれようとしていた。
それにはさすがの私も焦った。
前も言ったように今までもソフィアに会いに聖堂に行ったとき回数自体とても少ないけれどアルバート殿下にお会いしたことはあった。お会いしたというより見かけたという方が正しいか。それは帰りがけの時も。
その時は「ルシア嬢は今帰りか?気を付けてな」じゃっと手をあげて通り過ぎるだけだった。
私もそれは普通のことで当たり前のことだと思っていたしそもそも私は王太子殿下にエスコートしてもらえる身分ではないとわきまえていたから、その時は何も思わなかった。
それが何故エスコートを申し出てくれているのか。
いえいえ、私は元々ソフィアとお茶をしていただけですし、とそれとなくエスコートの申し出を断っても笑顔の圧が加わるだけだった。
最早はい、か、イエス、かしか受け付けない…そんな圧があった。
「また会おう」
きらきらとした笑顔に見送られた時は、あれ?私ソフィアに会いに行ったのよね?なんで王太子殿下に見送られてるの?いやソフィアも見送りに来てたけど圧倒的に王太子殿下が見送りのど真ん中にいたよね?と不敬にもそう思ってた。
考えても分からないことは仕方ないので再び机にあるノートの方に目をやる。
その時ドアをノックする音が聞こえた。
「お嬢様、奥様が領地からいらっしゃいました」
「お母様が!?わかりました、お出迎えしましょう」
メイドの後について行った。
「シア!!久しぶりね!元気にしてた?」
「はい!お母様もお元気ですか?」
母の嬉しそうな顔にこちらまで嬉しくなった。
「しばらくこちらにいるから沢山お話しましょう?」
「奥様…ではこちらへ」
お母様は着替えの為一旦部屋に向かおうとした、その時振り返って
「後で一緒にお茶しましょ?」
お母様のお誘いに私は笑顔で頷いた。
しばらくしてお母様とのお茶会の準備が整ったとアンに先導されて中庭に向かった。
「今日はとても天気が良くて気持ちがいいからこちらに準備するように頼んだの」
お母様は既に席に着いていて私の顔を見るなりにこにこと話しかけた。
「お母様、お待たせしました。失礼します。」
私はお母様の向かいに着席しお茶会がスタートした。
「ふふっシアは学院生活はとても楽しんでるわね?」
「えぇ、お友達もでき先輩も良くしてくれる方がいらっしゃるのでとても楽しく学院生活を送れています。」
お母様には何度か手紙を送っていてどんな学院生活を送っているか、友人はできたとかその辺も知っている。そんなわけでソフィアやセーラ、リリアンヌのことも知っている。
「今度お家でお茶会でも開いてお友達を呼ぶといいわ」
「はい、お母様」
「あ、そうそう…そういえばお父様の伝言もあったのだわ。次の長期休みの時、王太子殿下が我が領を視察に来られるらしいから帰ってきなさいって」
「え」
ほんとに視察に来るのか王太子殿下。
「…なんでも王太子殿下直々にシアに案内してほしいとのことでお父様の命令ではなくて王太子殿下の命令だから必ず帰ってくるのよ?」
「か、かしこまりました」
そしてなにやら強制イベントが発生している。
ひとまずお母様の提案通りお茶会という名の女子会を開いてみようかな…と考えた。
そういえば私主催でお茶会を開いたことなかったもんね、お茶会の主催者として対応することも貴族として必要なスキルだったりする。
まぁそれもあるだろうけど、お母様は魔力無しの私にちゃんと友達がいるということを確認して安心したいんだろうなと思った。




