初めての気持ち(アルバート視点)
俺はロイドとフリシティから帰ってきたクリスを連れて聖堂の方へ歩いていた。
ちょうどクリスをいつルシア嬢に紹介しようか考えていたところへ、ルシア嬢がソフィアの元へ訪れたという情報が入り急いで王太子の執務室から飛び出してきた。
クリスは無表情を貫いているが幼馴染でもある彼が明らかに機嫌が悪いのは目に見えて分かっている。
だがそれを言えばお得意の毒吐きが出るのも分かっているので、あえて気づかないふりをしている。ここでクリスに主導権を握られれば、本来達成したかったルシア嬢にクリスを紹介するという責務を達成できない可能性があったからだ。
最近ルシア嬢の色んな一面を見れている。
ソフィアやリリアンヌを助ける友達思いなところや領地のことをしっかり考えていること、実はお忍びで何度も街に出かけていて平民の生活に興味を持っていること。
どの一面もとても好ましく感じられて、いつの間にやらルシア嬢のことを目で追っている自分がいる。
…といっても可愛い後輩、妹分みたいなそんな感じだ。ソフィアやリリアンヌの様な存在が1人増えただけ…そう思っていた。
クリスを紹介した時のルシア嬢の笑顔を見た瞬間、自分の中で時が止まった様な錯覚に陥った。
ルシア嬢から目を離せなくなって、顔に熱が集まった。
一体俺はどうしたんだ…。
その疑問はすぐに解消された。
クリスがじゃがいも栽培についてルシア嬢に色々教えてるところを見た時、自分が勧めたことなのにイライラしている。
実際はそこまでがっつり喋ってないのにいつまで2人で話し込んでるんだ?とイライラしてきた。
さすがに表に出すわけにもいかないので笑顔を貼り付けたままだったけど、おそらく圧のある笑顔だったと自分でも思う。
あぁ…これが嫉妬…か…
そう気づけば自分の気持ちに知るのに時間はかからなかった。
俺はルシア嬢のことが好きなんだ…。
そうと分かれば俺は色々動かなければならない…。
ルシア嬢やルシア嬢の実家のシュレーゼン家の地盤の補強、色んな所への根回し、他の婚約者候補の対応、そして何よりルシア嬢の心を手に入れること…
…覚悟しろよ?ルシア嬢。こうなった俺は君を決して逃がしはしない。
俺はこれから忙しくなりそうだ…そう思いながら笑みを浮かべていた。
ルシア嬢の帰る時間になり、俺は聖堂の入り口までエスコートした。
ルシア嬢は王太子である俺のエスコートの申し出に戸惑い何度も断ろうとしたが、俺が半ば強引にエスコートをしたのだ。
紳士としては褒められた行動ではなかったが、自分の気持ちに気付いた今、少しでもルシア嬢の心に自分を残したくて結構必死だったと思う。
その足で自分の執務室に戻り残っていた王太子の仕事をさばいていた。
書類もある程度片付いたころ、俺は斜め前のデスクで俺がさばいた書類の整理をしていたロイドに声をかけた。
「近々シュレーゼン領に視察に行く。その予定を入れててくれ」
「かしこまりました」
ロイドやクリスは基本俺に対して敬語であるがプライベートな時間の時はたまに敬語が外れるが、仕事の時はきちんと敬語で俺を王太子として対応している。
当たり前だが友人であり側近である彼らはきちんとオンオフ切り替えができ、彼ら自身も仕事のできる優秀な人材だ。
「あと婚約者候補の身辺調査の報告を陛下にする。仕上げは俺がするから簡単な調査報告書をリリアンヌと共に作成してくれ。それに伴って黒い噂のある貴族の調査報告書も頼む」
「かしこまりました」
「それからクリス、フリシティ目線で今後グランバニアやサザンローナとどういった付き合い方を求めているか、感じたことを教えてくれ」
「はい、まずはフリシティの現状についてですが、去年起きた飢饉で今もなお食料不足に悩まされている現状です。まぁだいぶ改善はされましたが…そんなわけでグランバニアとは貿易関係で関係を強固にしたい狙いもあるようです。ただサザンローナとは例の第一王子の一件もある為、グランバニア同様静観の構えのようです」
「なるほど…食糧難がある程度改善されたとはいえまだ不安定な状態なんだろう?そこら辺も踏まえてサザンローナとは貿易を結ぼうとはしてない訳だな?」
「えぇ…そこまでの深刻な事態ではないし自国も万全な状態ではないし…ということで、わざわざ爆弾を抱えた国との接触は今は控えたいという考えが強いようです…。」
「よし、わかった。クリス、後々お前にはあちらで培ってきた知識を頼るとして、今はロイドのフォローにまわってくれ」
「かしこまりました」
2人に一通り指示を出したところでルシア嬢の笑顔を思い出す。
あの笑顔を自分のものにしようと決意を新たに仕事を再開した。




