謎の美少女の正体2
「なるほど…そんなベルベット家の遠縁のフロー家の養女になられたのですね。…あれ?でも養女になったその一番の理由がよく分からないのですけど…今の話の流れから王家の右腕としてのベルベット家というのが絡んでくるのは分かったけど…」
リリアンヌさんが「まさかここまでの方だったとは…」と驚きで目を見開いてたのを腕を組んで考えに没頭していた私の耳には入ってこなかった。
「私ももちろん王家の右腕としての役割がありましてその為に養女になったという理由です。
私は王太子殿下の婚約者候補の方に気付かれず観察し、王太子妃としての適性があるかどうかを見極めたりどの様な立ち振る舞いをしたか兄を通して王太子殿下に報告する役割がありました。
しかしベルベット家の娘のままだと婚約者候補達の本音や本性を見抜くことはとても難しく、王家に近いベルベット家が王家に観察し内通していると気づかれる可能性は高いので、敢えて階級の低い貴族の養女になる必要があったのです。」
…なるほど、ここでようやく一番の理由が分かった。
彼女がマーズ嬢の取り巻きのように振舞ったり、他の婚約者候補達に接触を計ったのはこの為だったのか…例えそれがマーズ嬢の逆鱗に触れることになっても。
「なるほど…確かにあのマーズ嬢の振る舞いだとリリアンヌさん…様がベルベット家のご令嬢ということもまさか婚約者として相応しいか見られているということも分かってないわね。」
「そうですね…まぁ私のことは知られても困るのでそれに越したことはないのですが…」
「でもそれ、私に言って良かったの?内密にしてた案件じゃないの?」
今普通に話を聞いてた限り未来の王太子妃を決める重要な案件よね?ただの田舎貴族の令嬢が聞いて良いものではない様な気がするけど…
「えぇ…婚約者候補の皆さんの報告はあらかた終わりましたから問題ありません。それに王太子殿下や兄は貴女には絶大な信頼を寄せてるようですし問題ないと判断させていただきました。
あっそれと私のことは先ほどの様にさん付けで呼んでください」
え…絶大な信頼って…どこでそんなの勝ち取った?
よく分からない話の内容になっているけどもその前に…
「いやいやいや!!公爵家のご令嬢の方にさん付けは厳しいですね!!」
「今は子爵家の娘ですわ、そんな私を丁重に扱えばかえって不審がられます。それに…」
「それに?」
「私は学院を卒業したら王太子妃殿下の侍女になりますの。その為の修行もしておりますし…ですから私のことは公爵家の人間として扱わないでくださいませ?」
有無を言わさない笑顔で「わかったわ…」と言わざるを得なかった。
「そういえばリリアンヌさんは今まで学院ではそういったお仕事の関係上だけで対人関係を築いてたの?」
「そうですね、授業以外は婚約者候補の方々の観察に明け暮れておりましたから、他の方との交流は中々持てませんでした」
「そうなのね…あのリリアンヌさん、もしよろしければ私と普通のお友達になりません?」
「えっ…」
リリアンヌさんはポカンとしてる。
「お仕事も一段落終えたのでしょう?それにせっかくの学院生活ですもの、ただお仕事だけで学院生活を終えられるなんて勿体ないと思いまして…学生の本分は勉学と友人との交流ですわ!良く学び良く遊び良く食べる!それは学院生のうちでしかできませんからね!」
最後の1つはちょっと違うと思うが、我ながら的を得た様な気がする…と思いうんうんと頷いてる。
せっかくの学院生活で仕事しかしてませんでした…なんて悲しすぎる。思い出も作らないと!
「思い出は時に社会に出てから大きな力になります!ましてやリリアンヌさんは将来王太子妃殿下の侍女となる方…とても大変なお仕事だと思います。なので思いきり学院生活を楽しむべきだと思います!」
両手でガッツポーズを作ればしばらくポカンとしてたリリアンヌさんは笑い出した。
「ふふふあははは…シュレーゼン様は聡明なだけでなく面白い方ですね、噂通りの方です。
寧ろ私からよろしくお願いします」
にっこりとカーテシーをしたリリアンヌさん。
その所作一つもとても美しいものだった。…てか私に関して一体どんな噂が流れているのか知るのがとても怖いのだけど…。
その時後ろから男の人の笑い声が聞こえてきた。
びっくりして振り返るとアルバート殿下とロイド様だった。
2人とも滅茶苦茶笑ってる。え…いつからいたの?
「ほぼ最初からかな?」
私の表情を読み取ってか、アルバート殿下が答えてくれた。
「最初リリアンヌからマーズ嬢に呼び出されたと報告を受けて後を追ってたんだ。そして雲行きがあやしくなってきたと思ったらルシア嬢が草むらから飛び出してきてね」
本当に最初の方から見てるうううう
私何も粗相なことしてないよね…?と改めて思い返してる時、すっと目の前にロイド様が出てきた。
「…リリアンヌのことを…妹のことをよろしく頼む…ルシア嬢」
そう言って手を差し出してきた。ロイド様はロイド様で妹のリリアンヌさんのことが心配だったのだろう。ちゃんとした友人ができたことにホッとした保護者の様な顔になっている。
「はい!」
私は満面の笑みでロイド様に応え握手した。
「……それにしても良く学び良く遊び良く食べる…か…ふふふっ」
アルバート殿下は先ほどの私の言葉を思い出し笑いを浮かべていた。
「わ、忘れてください…」
恥ずかしくなって小さく呟けばロイド様とリリアンヌさんは笑い、アルバート殿下は笑いながら私の頭を撫でてきた。




