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謎の美少女の正体1

ある晴れた昼下がり。

私はこの時間ちょくちょく中庭に来ていたりする。


何もせずボーっと過ごせるこの時間が好きだったりする。

爽やかな風が私の茶色い髪の毛を靡き、ほど良い木漏れ日がついうとうとと眠気に誘う。


一言で言えば平和だ。



そんな平和な空気を一瞬でぶち壊す女の怒鳴り声が辺りに響いた。


…ここって一応貴族を中心に通ってる学院よね?さすがの私もとても品のある行動とは思えないそれに眉をひそめた。



「…あなたは私に賛同してくれる令嬢だと思っていたけどどういうことかしら?」

声のした方におもむろに向かえば、見たことある令嬢がふんぞり返ってた。


…イザベラ・マーズ…


イザベラは両脇に令嬢を従えて正面よりやや下に睨みをきかせていた。


彼女の視線の先にはいつだったかマーズ嬢を隣に従えてた銀髪のツインテールの少女が地面に座っていた。

彼女は頬に手を当て…おそらく頬を叩かれたのであろう…それでも無表情でマーズ嬢を見つめていた。



「あなた子爵家の令嬢のくせに生意気ね?リリアンヌ・フロー」


銀髪のツインテールの美少女…リリアンヌ・フローは無言無表情でマーズ嬢を見つめいている。そのある意味堂々とした姿は決して恐怖のあまり無言になっているわけではないということが分かる。


「私が王太子殿下の婚約者候補って知ってるでしょ?なのに何故あなたは他の婚約者候補の令嬢と共に行動してたのか聞きたいのだけど?」

マーズ嬢が吊り上がった目を更に吊り上がらせてリリアンヌさんに詰問している。


「……」

しかし質問に答える気がないのか、彼女は何も言わずただ黙ってマーズ嬢を見つめていた。



私は1つため息をつくと木陰から姿を現した。


「……またあなたなの?」

マーズ嬢は今度はこちらを睨みながら吐き捨てるように言った。

「それはこちらのセリフですよ」

「無礼ね、ほんと腹立たしいわあなた達…あなたの顔を見て興が覚めたわ、行くわよ」

マーズ嬢は私に背を向けて他の令嬢を連れて歩き出した。



「大丈夫?」

私は屈んで銀髪の美少女リリアンヌ・フローさんの様子を窺った。

リリアンヌさんの白い頬が先ほどぶたれたことで赤みを帯びている。


「ちょっと待ってて」

確かこの辺りに中庭の花の水やり用に蛇口が設置されていた。

そこでハンカチを濡らしリリアンヌさんに渡すことにした。


「…ありがとうございます」

ハンカチを頬に当てながら伏目がちにお礼を言った。声も可愛かった。

ソフィアも華憐な美少女だがリリアンヌさんもまた違った可愛らしさがある。

クールビューティーならぬクールキュートだ。


「あの…私のこと何も聞かないんですね」

「へ?聞いたら教えてくれるの?」

マーズ嬢の激昂した問いに何も答えなかった彼女だから私が何か聞いても無言を貫くんだろうなぁと思い敢えて何も聞かなかった。


そんな私の様子を見てふふっと笑みを浮かべるリリアンヌさん。あ、笑顔初めて見た。可愛い。


「…今あった出来事を話す前に私のことを教えねばなりませんね。私はリリアンヌ・フロー。フロー子爵家の養女でございます」


…養女だったのか。いや、貴族社会ではそこまで珍しくないけども、出会って数分で彼女の深い部分を聞いてしまって良いのだろうか?という戸惑いもあった。


「…まぁ私がフロー家の養女というのは一部を除いてほとんど知られてないことですが…私はとある家の生まれだったのですが遠縁のフロー家に子宝が恵まれず…ということで引き取られたのが理由の1つです」


「…理由の1つということは他にも理由があったのね」


「さすがシュレーゼン様…噂に違わぬ聡明さですね。はい、もう1つ理由があり、むしろある程度成長した私にとってはそちらが一番の理由になりました。」

一呼吸置いて彼女は更に口を開いた。

次の一言で私は衝撃を受けることになる。


「私の本来の生家はベルベット家でございます。恐らくシュレーゼン様もご存じのロイド・ベルベットは私の兄にあたります。」


えええええ!?そうだったの!?これはびっくりだ!!

あっでも初めてリリアンヌさんに会った時既視感あったのよね、ロイド様の妹さんだったからか。


「ベルベット家は古くから王家を支える立場にありました。昔はベルベット家から宰相を輩出したことがあるくらいで…。お兄様…ロイド様も将来側近として王太子殿下に尽くす予定です」


「そう言われるとベルベット家は本当に色んな著名人を輩出してますよね、宰相の役職に就いた方や騎士団長として知将と名を馳せた方もいらっしゃいますよね?」


「本当にシュレーゼン様は素晴らしいですね、その通りです、よくご存じですね」

私の貴族の歴史の知識にリリアンヌさんは満面の笑みを浮かべた。


今言ったようにベルベット家は文武両道で王家の右腕として色々と名を馳せている名門だ。

今は宰相職には別の公爵家が就くことが多くなったが、昔はベルベット家も宰相職で腕を振るっていた。



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