八百屋での一騒動
怒鳴り声のした方へ目を向ければ建ち並ぶ店の中でも比較的大きなお店だった。
「…あそこは外国のお野菜も扱う八百屋さんじゃなかったかしら」
私の問いに小さく頷くアル。
ロイド様と遭遇してからは空気を読んでか大人しくしていてくれた。
店の方へ近づいてみれば、客の1人であろう女性が店員に詰め寄っていた。
「なんで売れないものを商品棚においてるのよ!?」
「す、すいません、自分ここに入ってまだ間もないので勉強不足で…ちょっとわからないです…」
どうやら店員は新人さんの様でお客さんの対応が難航しているようだ。
「どうかなさいましたか?」
思わず私が女性のお客さんの方へ尋ねた。
「ここの商品棚に陳列されてあったお野菜をお売りできないって言われたんです。」
女性は陳列棚の一角に指をさした。
「ですがこの店員の方は何故か答えられなくて…私は…お恥ずかしながらあまり裕福ではない為、この様な出で立ちですから…その商品を買うに値しないと言われてるのかと思い…」
女性は話していくうちに恥ずかしそうに小声になってしまっていた。
女性の恰好を見ると質素なワンピースにボロボロのエプロンをつけ、お世辞にも裕福そうな家の婦人には見えなかった。
「いえいえ!そんなことはありません!!ここは庶民の方に開かれた市場をモットーにしておりますから!」
店員の人は慌てて否定して「ちょっと責任者呼んで参りますので、少々お待ちください!」と言いながらどこかへ行ってしまった。
しかし…何故ここの陳列棚の商品は何故売れないものなのだろう。
何気なくそこを覗けば…なるほど…これは売れない…売ってはいけない…
「どうやらお客さんの立場うんぬんじゃなく、ここの商品に問題があったようです」
女の人にそう言えば、女の人だけでなくアルもロイド様も首を傾げた。
棚に陳列されていたのはじゃがいもだった。…だが並べられてるじゃがいもはどれもうっすらと緑色になっていて芽が出ていた。
これは確かに売り物として扱ってはいけないものだ。
この国ではじゃがいもは最近輸入されたもので認知度としてはまだまだ低かったから先ほどの店員さんは知らなかったのだろう。
「そうだったのですね…」
それを説明すれば女の人は納得してくれたようだった。
「えぇ…おそらくこれは店側で破棄しようといたのでしょう。…ただこの食材は色々用途があるので、もしまた見かけたらぜひ購入することをおすすめします!」
「まぁ!そうなんですね!」
「おぉ…お客様でじゃがいもの知識をお持ちの方がいらっしゃったようですね」
新人店員に連れられてベテランの店員の様な人が出てきた。
じゃがいもは用途も多いから今後も輸入が増えていけば良いなぁ…てか適応した環境を国内で見つけられれば国内で栽培もできそうよね、そうすれば輸入に拘らなくても良くなるねー…うちの領地ではできないだろうか?一応うちの領地は色んな農産物の産地として有名だし。
そんなことを1人でブツブツ言ってたらアルもロイド様も目を見開いて私を凝視していた。
そういえばお店に種芋は売っていないんだろうか?八百屋さんだし取り扱ってそうよね?でもこの世界では一応国外から輸入してることになってるんだから種芋まではないかなー?思って先ほどのベテラン店員さんに聞いてみると取り扱ってるとのこと。
「…アン、この種芋をシュレーゼン家で買えるように手配しておいて」
「かしこまりました」
アンに頼んでこちらの種芋は確保した。
後は栽培方法か…これはもしかしたら栽培方法が載ってる本があると思うから、そっちの方はなんとかなるか…。
1人で自己完結しているとロイド様が「領地のことをちゃんと考えてるんだな?」と意外そうにびっくりしていた。
「そうですね…私は領地も領民も好きですから」
にっこり笑えばロイド様もアルも目を見開いていた。…さっきから色々びっくりしすぎじゃない?
アンは誇らしげにしていて思わずふふっと笑ってしまった。
「…ではこの辺で」
失礼しますとお辞儀をすれば、ロイド様は一瞬呆けていた。
「あ、あぁ…そ、そうか」
何故かは知らないがまさか私がここで別れの挨拶をすると思わなかったのか、え?みたいなリアクション取られたんだけど、そもそも一緒に街に来ていたわけじゃないからね!
いつもの公園でアルとも別れ、帰りの馬車に乗り込んだ。




