引き抜き 6
今日は休みなので午前中に投稿出来ました。
「何から話せば良いのかしらね」
南条会長はそう口火を切る。
「私の要望はもう話したのよね。白川雪、あなたは生徒会役員書記が相応しいわ」
すでに見せてしまった手札をストレートに伝える。
こういう時に勿体振っても滑稽なだけで相手から舐められてしまうからな。
さて、白川先輩は南条会長の投げたボールをどう返すのか。
僕は済ました表情の白川先輩を見やる。
「頷くとお思いですか?」
「頷かせるわ」
南条会長はニコニコと笑いながらそう言い切る。
「白川雪は風紀委員を抜け、生徒会書記となる。これは決定事項よ」
「随分な自信ですね」
「そうするだけの根拠があるからね」
こういう時の南条会長のハッタリは唸らざるを得ない。
僕は直感的に南条会長の手札がブタと知ったいるが、何も知らない白川先輩からすれば大きな役を抱えていると錯覚してしまうだろう。
「まさか風紀委員の何かを掴んだのですか?」
案の定、白川先輩自身からボロを出してしまった。
「フフフ、どうかしらね」
南条会長は肯定も頷きもせず、曖昧に微笑むだけで終わらせた。
「……」
僕としては口を挟もうかと迷ったけど、南条会長の視線を受けて了解とばかりに頷く。
これは一種のテクニックなので黙認するべきだろう。
「……南条さんが掴んでいる情報の真偽はともかく」
自らの不利を悟ったのか白川先輩はそう咳払いする。
「だからと言って私が生徒会に入る動機にはなりませんよね?」
まあ、その通りだよな。
それは組織の問題であって白川先輩個人の問題じゃないな。
「あら、風紀委員がどうなっても良いのかしら?」
「ご自由に。むしろ膿を出す良い機会です」
南条会長はこれ以上かのネタで揺さぶれないと踏んだのだろう。
目を閉じて諦めたように一息を吐いた。
「それじゃあ圭一君の名義で公表しておくわね」
もちろん捨て台詞を吐くことも忘れない。
「白川先輩、南条会長は何も握っていないから安心してほしい」
さすがにそれは気に障ったので、表情を引き攣らせている白川先輩を安心させるように呟く。
「……油断も隙も無いですね」
全く以ってその通りだな。
南条会長は絶対に傍へ置きたく無い類の人間だ。
「御神楽さん、ありがとうございます」
突然白川先輩が頭を下げたので、何のことだか分からずに片眉を上げたのだけど、次の言葉で氷解する。
「もう少しで南条さんに呑まれてしまうところでした」
「いや、気にしなくて良い」
あれを黙っていると僕は南条会長に味方をしたこととなり、フェアで無かったので口を挟んだまで。
お礼を言われる筋合いなどまるで無かった。
僕としてはこれで終わりだと思っていたけど、白川先輩はまだ言いたいことがあるようだ。
さらに言葉を重ねて。
「御神楽さんってお茶の才能の他に直感力も高いのですね」
南条会長を蚊帳の外に置いて話を進める白川先輩。
その不自然な褒め様子から僕はピンとくる。
おそらく南条会長と話したくないので、ターゲットを僕に絞ったのだろう。
まあ、白川先輩からすれば僕を風紀委員に戻せればそれで良いので、別に南条会長を打ち負かす必要がない。
場数を踏んできた南条会長を相手に口論を挑むのは不利と判断したのは褒めるべきところだけど。
「白川雪〜? 浮気はよくないわね」
南条会長の言葉通り、今は南条会長と白川先輩との話し合いであり、今の僕は部外者。
なので僕は南条会長の方へ向くようジェスチャーを送った。
「さて、次はどう口説こうかしら?」
そう南条会長は唇を舐めるのだけど、それが獲物を前にした蛇だと錯覚してしまったのは気のせいでは無いだろう。
次話を投稿時にサブタイトルを変更します。




