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和界転生 ~45歳の俺が17歳で目覚めたら、知ってる平成じゃなかった~  作者: 泥沼之羊 座金


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1002_知らない昨日を知ってる人.log

2009年4月13日(月) 朝


久里川町は、田舎だ。


東京にいた時は、金沢の隣、と説明していた。


ベッドタウンとして隣接しているし何も間違っていない。


久里川駅から金沢駅へは電車で20分、車で30分弱。


国道沿いに田んぼとパチンコ屋、回転寿司とよくあるチェーン店が並んでいる。


町の住宅の間にも田んぼがあり、すぐそこに山があり、山の中にも斜面にも家がある。


ちょっと行くと大きな潟があって、釣りもできる。なんなら金沢よりその先の海の方が近い。


山も海もある。都会人には魅力があるかもしれない。


ただ、住んでる人は「なんもない」という、そんな町だ。


2037年の俺は、東京で働いたあと久里川へ戻っていた。


便利さだけなら東京の方が上だ。


でも、一度離れて戻ると、この「なんもない」は別に悪口でもないんだと思った。


東京よりはずっと静かで神経が疲れない。


今朝はお袋に学校の少し手前まで送ってもらった。高専は久里川駅から歩いて15分はかかる。実家からなら30分。普段は自転車で通っていた。


久しぶりに聞くエンジン音。俺にはもう音のしない車が当たり前になっていた。東京から戻って車を買った頃はガソリンの値段も気にしていたが、それもすっかり気にしないようになっていた。


だから、ガソリンスタンドの前を通った時に値段の安さにちょっと遅れて気づいた。


「やっす……」


「何が?」


「いや、なんでもない」


助手席から見るお袋の運転。ウインカーを出すタイミングもうちょっと早くしたらいいのに。それも、久しぶりに思った。少し早めにブレーキへ足を置く癖も懐かしい。


覚えている。


2037年の日常では、もう意識しなくなっていた音や動きが、朝からいちいち懐かしい。


「しんどくなったら保健室いきなや。電話してくれたら迎え来るから」


「分かった」


「ほんとかいね?」


「分かったって」


「今朝から変やよ」


「それも分かってる」


お袋は納得していない。またハヘモードだ。


当然だ。


でも45歳の記憶があるなんて言えない。そんなことでお袋の頭がオーバーヒートされたら困る。


車を降りる。お袋がちゃんと車の流れに戻るのを見て、俺は歩き出した。


学校へ向かう人の流れの向こうに、山が見えた。名前も知らない。そもそも名前があるかも考えたことのない山だが、よく知ってる懐かしい山。


山の形だって意識したこともなかったが、こうしてみると山の輪郭をはっきり記憶しているのに気づく。


少し安心する。


「山はちゃんと知ってる山だな」


歩道脇の看板を見るまでは。


〈変生獣に注意〉


黄色い看板には熊のシルエットに角が生えている。


朝覚えた言葉。


へんじょう。変生。


「またかよ」


意味はまだ分からない。熊に角が生えるのか、そういうイメージイラストなのかも分からない。


「安心させる気ないな」


思わず言う。


「何が?」


後ろからブレーキ音。ちゃんと整備してるのか疑いたくなる音だ。


ハンドルにも錆が目立つ自転車に跨った男子が、俺の横で足をついた。


背が高い。シャツの裾が片側だけ出ている。


向こうは完全に俺を知っていて話しかけた顔をしている。


こっちは顔だけでは分からなかった。


でも、人をくったような笑い方で引っ掛かる。


「……辰馬?」


「いや、他に誰がいるんだよ」


稲田辰馬。


中学の教室。


泥のついた靴。


壊れたラジコン。


2人で先生に謝りに行ったこと。


記憶が遅れてつながる。


「久しぶり」


「昨日、会ってるだろ。てか、ほぼ毎日。てか、ずっと同じクラスだから……」


「そうだった」


長くなりそうなので遮った。


昨日。


俺にとっては2037年。


響に、明日は一緒に曲を聴こうと送った夜。


こいつにとっては、2009年の昨日。


「平野、今までで一番の寝不足っぽいな。自転車も忘れてきたか?」


「今日は送ってもらった」


辰馬が自転車を降りて横を歩き始める。


先に行ってもいいのに、これがいつもの俺たちの通学風景なんだろう。


「今日、おにぎり持ってきたか?」


「弁当? 持ってきたけど、おにぎりじゃないぞ」


「バカ、ロボットの方だよ」


「おむすびのことかよ。おにぎりじゃないぞ」


「また細かいな、お前は。いっつも牛乳飲んでんのに」


「カルシウムはイライラに関係ないぞ」


俺の作ったものを知っている。そして遠慮のいらない会話。


少し嬉しい。


同時に怖い。


「昨日、坂でひっくり返って動かなくなったじゃん。おむすびころころ事件。一晩で直せたか?」


「なんだそののどかな事件名。おむすびのことはまだ確認中」


嘘ではない。


世界全部が確認中だ。


「じゃ、今日の放課後、げんけんで確認だな」


「げんけんって」


言いかけたところで、前から誰かに声をかけられた。


「おはよう」


高専の制服を着た女子が手を振っている。髪が長くて、ゆるく波打っている。落ち着いた佇まいだが、柔らかい笑顔に年甲斐もなくドキッとさせられる。年甲斐は、どっちなのかよく分からないが。


高専の制服は男子はよくあるブレザーだが、女子の制服は県内でも人気が高いセーラーブレザーという変わったデザインで、ネクタイに関しては男女ともに割と自由。


男子はネクタイを結ぶやつもいれば、辰馬のようにシャツのボタンを開けていても怒られたりしない。


その少女は、えんじ色のタイをリボン風に結んでいる。そういう、可愛いを大事にしてる子。


氷見日向。


名前は、顔より少し遅れて出てきた。


神社の石段。


小学校の帰り道。


夏祭り。


風が吹くと長い髪が顔へかかって、いつも同じ手で払っていた。


今も同じだった。


「日向」


「何?」


笑顔。


「いや」


「おはようは?」


ちょっとムスッとする。


「おはよう」


一瞬笑顔に戻った顔が、すこし陰り、俺の顔を覗き込む。


「顔色悪くない?」


「ちょっと寝不足」


「いっつもじゃん。昨日はおむすびのせい?」


また昨日。


「たぶん」


「なにそれ。自分のことでしょ」


呆れながら、並んで歩道を歩き、歩幅は合わせてくれる。後ろに辰馬が自転車を押してついてくる。


3人で学校に向かうのが当たり前のように。


昔からこうだったか。


小学校の記憶と、目の前の17歳がうまく重ならない。


「日向も今日、歩きか」


「昨日、部活終わるの遅かったでしょ。だから、お父さんが車で迎えに来て自転車置いて帰った。帰りは自転車」


3人で自転車に乗って通う姿は、俺の記憶にない。


「今日はちゃんと十和も来るって。朝、メール来てた。朝5時」


「十和?」


日向がスマホを俺に向ける。古い、俺にとっては古いiPhone。iPhone、いくつだったっけ。


「柳瀬な。昨日、家の手伝いで部活来られんかっただろ」


名字にも顔がつかない。俺たちは一緒の部活なのか。


俺はロボット研究部だったと思うが、山でおむすびを歩かせるような部活じゃなかったはずだ。女子もいなかった。


「トワっち、夜まで家の手伝いしてたのに、月曜の朝5時から家で朝練してんのかよ」


辰馬が言う。朝練って家でするものだったか?


「それ、本人の前で言ったらまた怒られるよ」


「平野も言ってたじゃん」


「俺が?」


「怒られてたし」


「俺も怒られるのかよ」


日向が笑った。


「コウ、今朝からずっと変」


コウ。


その呼び方は覚えている。


響が小さい頃は「お父さん」。今は「父さん」。


美良は「恒一」。会った時からすぐに下の名前で呼ばれたっけ。


仕事では苗字。それか役職。


この年齢で呼ばれていた名前を、耳が忘れていた。日向の名前もパッと出てこなかったのに。


辰馬が胸を張る。


「トワっち、ひなっち、そして俺がイナヅマ」


「何の紹介だよ。そんでお前だけ何が起きた」


「稲田のイナと、辰馬のヅマ」


「タツマだろ」


「濁らせた」


「勝手に濁らすな」


日向がまた吹き出す。


「それ前も同じこと言ってたよ」


「俺が?」


「うん。ほんとに今日はだいぶ寝ぼけてるね」


俺も少し遅れて笑った。この世界の俺は全くの別人でもないらしい。


そして、頭の中で2人を置き直す。


辰馬。


日向。


この2009年の朝、一緒に通学する3人。


今はそれでいい。


「じゃ、俺自転車置いてくるから」


辰馬が自転車に乗って駐輪場の方へ走って行った。


久里川高専の校舎は、記憶にあるのと変わってない。なのに記憶よりなんだか低く見える。


中学を出てから5年間、工学を学ぶ学校。俺は元の世界でも普通科高校じゃなくこっちを選んだ。電子工学を勉強して、それが仕事になればいいと思った。


しかも家から近い上に、高専なら退屈な座学ばっかりより手を動かして勉強できるのが俺には合ってると思ったから。


「懐かしの我が学舎か」


日向には聞こえないように呟く。


正門を越えると駐輪場からがちゃがちゃと自転車をスタンドに乗せる音がやかましい。


玄関の下駄箱の特有の匂い。バタバタとすのこが鳴っている。


掲示板に貼られた藁半紙の匂いに剥がれかかったお知らせ。


そこまでは懐かしさを楽しめた。


〈怪異避難訓練〉


「出たよ」


これは知らない。というか、そもそも怪異って何だ。


朝から周りは誰も説明なしで使っている。


妖怪でも魔物でもお化けでもない。


なんとでも受け取れる微妙な名称にだんだん文句を言いたくなってくる。


「学校って、怪異の避難訓練もするんだな」


「火事は先週やったからな」


いつの間にか追いついてきた辰馬が背後から言った。


「火事は普通の火事?」


「配線燃えたら普通に火事だろ」


「……そうだな」


妙に安心した。


怪異がいるからって、全部が怪異になるわけじゃない。


掲示板には目立つ注意書きも貼ってある。


〈変生熊出没。山側通学路の使用を避けること〉


朝のニュースは学校の近くのことだったのか。


「ヘンセイ熊、まだ出るんかな」


「へんじょう」


日向が直す。


「通じるじゃん」


「朝のニュースと読み方違うと思ったら、お前のせいか」


知らない単語を、覚える前から崩さないでほしい。


俺は元々どこの教室だったのかも覚えてなかったし、この世界ならなおさら教室が分からない。


それを悟られないようさりげなく2人に歩調を合わせて階段を登る。


教室へ入ると窓側の男子がノートを上げた。


「はよっす、平野。これ、返す」


表紙に俺の名前が書いてある。


こいつの名前はすぐに思い出せた。同じクラスでいつも一緒に昼飯を食べてた。


「助かる、杉浦」


「ん? 貸してもらったの俺だけど」


「そうだな。なんでお礼言わされてんだよ」


杉浦が笑う。


「今日、駄目な日?」


「今日の平野は朝からポンコツ」


辰馬が横から補足する。


「じゃあ今日小テストあったら名前だけちゃんと確認しろよ。先週頼んだ代筆、俺のまで平野恒一って書いてて、消したあと残ってたからな」


「それは俺が悪いな」


先週の俺だけど。


「珍しいな。やけに素直に認めたじゃん。」


笑うと少し目が細くなる。記憶が掘り返されて鮮明になる。これは、俺も知ってる顔だ。


「微積の課題やってきたけど写す? お前、昨日メールでやばいって言ってたじゃん」


「昨日?」


「自分でメール送ってきて忘れるのは、もっとやばいな」


「やばいな。写すから貸して」


昨日の俺がやったかどうかも分からない。そもそもそのまま担いできたカバンの中にあるかも怪しいが。


そういえば時間割も確認してない。教科書はだいたい学校に置きっぱなしだった気はするが。


「デビサバ進んだ?」


「たぶんやってない」


「なんのたぶんだよ、それ」


ゲームなのは分かる。杉浦はゲーマー仲間だったから。でも、課題はともかくおむすびを放置してゲームしてたかは本当に分からない。


「じゃ、先に微積片付けて」


「順番、逆にしない?」


言ってから、昔のゲームの話がまともにできるか怪しいことに気づいた。


幸いとでもいうべきか、杉浦は俺にノートを渡して追い払うように手を振った。


俺の知らない昨日には、こいつもいた。


それだけ覚えておく。


で、俺の席はどこだ。


日向の後ろ、辰馬の前の席。2人が座って、不思議な顔で俺を見てくれたおかげで、俺の席は分かった。


席について、机の中に微積のノートを見つけた。


「やる気完全にないな、昨日のおれ」


杉浦のノートを開く。意外にきれいな文字。そして、俺は微積が嫌いだったのを思い出した。


課題をなんとか写し終えたら、これなら授業を乗り越えられるんじゃないかと少し自信が持てた。


だが、28年のブランクは甘くない。


1限の途中、担任が俺の机の横で止まった。


40前後の男で、普段から声を荒げるタイプではない。


「平野。保健室、行ってこい」


俺は授業のノートの取り方を完全に忘れていた。


手が動いてないのに気づかれ、真っ白なノートに全然違う場所を開いてある教科書もバレた。


日向の付き添いを断り、保健室までは案内図を見てなんとかたどり着いた。


養護教諭に熱を測られ、簡単な質問をされる。


いわゆる保健の先生は、女性のイメージが強いが、この学校でも御多分に洩れず30代後半の女性で、俺の記憶とも変わってない。


「頭打ってない?」


「たぶん」


「たぶん?」


「いや、打ってないです」


「気分は? 悪い?」


「少し?」


「昨日はどうだった?」


先生にとっては、普通の問診。でも俺は、その質問には詰まる。


俺の昨日は28年後の別の昨日だ。


「寝不足です」


嘘ではない。でも先生は納得していない。


棚から見覚えのない小型の測定器を一度手に取ったが、俺の顔を見て元へ戻した。


「そこまでではなさそうね」


何を測る機械だったのかは、聞けなかった。


だが、お袋には連絡をするという。


すぐに迎えに来るという話にはならなかった。


無理をしない。


記憶の混乱が続くなら受診する。


そういう話で収めてくれた。


大人が大人として動いてくれる。


ありがたい。


俺が45歳のつもりでも、この身体は17歳。


学校では生徒で、お袋にとっては勉強してる息子。そこは変わらない。


昼休み。ようやく休めると思うと深い息が漏れる。


ぐったりしてる俺の横から辰馬が机を寄せてくる。杉浦も。日向は女子のグループで集まっている。


「卵焼き」


「卵焼きだな。それくらい分かるぞ」


「1個」


「断る」


言い終わる前に取られた。


「交渉してたんじゃないのか」


「予告したんだよ」


「犯行じゃないか」


杉浦が横で笑う。


こっちの騒ぎを見てた日向も笑っている。


俺も笑った。普通の、学生の昼休みだ。


そのあと、胸の奥が落ちる。


美良は、よく卵焼きを焼いてくれた。卵料理は飲食店を経営する彼女の専門分野だった。


今日は、美良が作った朝食を食べて、買い物に行って、学校から帰ってきた響と話す日だった。


〈明日、時間ある?〉


俺が昨日送ったメッセージは、ちゃんと既読がついていた。


明日。


その明日がない。


箸が止まる。


辰馬が自分の唐揚げを俺の弁当に入れた。


「ほい物物交換成立」


「……最初から言えよ」


「受け取ったからには、犯行にはならない」


「交渉がないだろ、どっちも」


「不言実行」


「言い方の妙ってやつだな」


杉浦が言う。


「褒められた?」


「どこを聞いた。格言に謝れ」


杉浦と辰馬が笑う。


俺も少し笑った。


ここは、明日じゃないかもしれない。だからって、明日に行けないと決まったわけじゃない。


少なくとも今は、唐揚げはうまい。


今は、それで十分だった。


午後。


折り畳み携帯を何度も見る。閉じて、また開く。


圏外ではない。


お袋からの小言っぽいメールも来た。


つまり電話が壊れているわけじゃない。


両親と杉浦と辰馬、日向の電話番号も入ってるし、通話記録も普通に残ってる。


それでも美良と響の番号は、ここにはない。


当たり前だ。東京に行く前に変えた携帯なんだぞ。


分かっている。それでも確認する。


メッセージアプリはなくても、メールなら届くんじゃないか。


「何見とるん」


俺の重苦しい頭の中に、呑気な声が入ってくる。


日向が前の席から振り返っていた。


「時間」


「3分前にも見てたよ」


「前の席なのによく見てるな」


「コウが変だから」


また言われた。まあ、変だろうけど。


「そんな変?」


「昨日までのコウと違う」


日向は笑っていない。響と変わらない年の女の子に見透かされるのは、ちょっと情けなくなる。


「変って悪い方?」


「分かんない」


真正面から俺を見据えて、少し考えたような間が開く。


「静か」


「俺、いつもそんなうるさかったっけ?」


「うるさいだろ、いつも」


後ろから辰馬。


「お前に聞いてない。そもそも、お前がそれ言うな」


日向が笑う。


「でも、ツッコミは同じだね」


「そこ?」


「そこ大事」


何が大事なのかは分からない。


でも、日向は少し安心したように見えた。


放課後。


お袋が迎えに来るまで、げんけんへ寄ることになった。


教室を出る辰馬と日向の後ろを歩きながら、携帯のメモを開く。


〈今日わかった人〉


・辰馬=昔からの友達。自称イナヅマ


・日向=幼馴染。俺をコウと呼ぶ


・杉浦直人=ゲーム仲間。あんまり変わらない


少し考えて、別の見出しを足す。


〈今日わかった世界〉


・怪異は普通に存在するらしい


・変生という言葉がある


・学校には怪異避難訓練がある


・げんけんは俺が所属しているらしい


書いていると、後ろから声。


「平野」


杉浦が教室から顔だけ出している。


「今日、部活?」


「たぶん」


「たぶんで部活行くやつ初めて見た」


「俺も」


杉浦が肩をすくめる。


「じゃあ、情報のノート明日返すから」


「今日返してもらったのとは別?」


「別」


「……何冊借りてるんだよ」


「頼むと平野が貸してくれるからな」


「俺が悪いみたいに言うな」


「貸したの平野だろ。責任持てよ」


「お前の責任どこ行った」


また笑う。


杉浦は教室を出て反対側に歩いて行った。


途中で振り返って手を上げる。


「また明日な」


また明日な。


その言葉が胸に引っ掛かった。杉浦たちにとって今日は普通に来た明日。


そして、今日からまた普通に明日が来る。


俺は黙って手を振った。


俺も昨日、そう思っていた。


明日は普通に来ると。


携帯のメモへ1行足す。


〈杉浦。放課後。「また明日な」と言った〉


なんでこんなことまで書こうと思ったのか。自分でも大げさだと思う。


でも今は、覚えたことと体験したことも外へ出して残しておきたかった。

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