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フィストニーナ拳闘記~君と殴り合う乙女ゲーム  作者: 未羊


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Round7 フィンガルス男爵家を訪れて

 公爵家から無事に戻れた翌日、私はネイリア様の自宅を訪れていた。

 無節でない時にお茶会というのはまずありえないはずなんだけど、今回は特別といったところかな。

 両親も私にお友だちができたと、泣きながらに送り出してくれたわ。なんか、絵面がものすごいことになってたけどね。

 というわけで、侍女のサクルとともに、お茶会にやってきた。


「ようこそおいで下さいました。急な決定でしたので、準備あまりで来ておりませんが、私、嬉しいです」


 わざわざ門まで迎えに来てくれていた。

 それにしても、昨日の格好と比べると、ずいぶんとドレスが軽装な気がするわね。袖はよく見ると袖じゃなくてアームカバーというかグローブだし、スカートもボーンやパニエのない広がりのないミドル丈。なんか、私の前世の世界のドレスを見ている気分。

 というか、この世界にニーハイ丈の靴下なんてあるんだ。そういえば、見たことがあるようなないような……。まあ、いっか。

 だって、あのゲームには着せ替え要素もあったもんなぁ。季節衣装といって、中世から近世にかけてのドレスに飽きた絵師たちが、現代の衣装に身を包んだ令嬢を描いてたっけかなぁ。もちろん、ネイリア様単独の衣装デザインはなかったけれど。

 そうやって実装された衣装ガチャで出てきた服装は、数キャラで着回しが可能だったから、他のご令嬢のデザインで出た衣装のいくつかは、私はネイリア様でも着せることができたからね。


 どうでもいいことを思い出していると、ネイリア様に顔を覗き込まれてしまったので、気を取り直してフィンガルス男爵邸に足を踏み入れる。

 私のところよりも庭が広い。天気もいいけれど、ネイリア様は部屋に案内していた。ご令嬢自らというのも珍しいわね。

 その部屋に向かう途中、建物に入ってからネイリア様が私に話しかけてくる。


「あの……」


「なんでしょうか、ネイリア様」


 なんとも弱々しい声で話し掛けてくる。一体どうしたのかしらね。


「昨日は、本当に助けて下さって、ありがとうございました」


「どういたしまして」


 ネイリア様にお礼を言われて、私は笑顔で言葉を返しておく。

 だけど、どこかネイリア様の様子がおかしい。一体どうしたのかしらね。

 そのネイリア様の態度だけど、部屋に着くと意外な形でその理由が判明した。


「キュー」


 部屋の中に、何かがいた。


「ネイリア様、この子ってまさか……」


「はい、グリフォンの子どもです。先日、屋敷で迷子になっているのを見つけて保護したのですが、この通り懐かれてしまいました」


 グリフォンはネイリア様に近付いてきて、頭を擦りつけている。

 ということは、昨日のグリフォンはまさか……。


「ネイリア様、もしかして」


「おそらく、昨日のグリフォンはこの子の親だと思います。においをたどってきて、私に気が付いたのだと思います」


 なんてこった。

 というか、なんでグリフォンの子どもが屋敷の中でうろついていたのよ。そこからしてわけが分からないわ。

 そもそも、魔物というのは一番近くに住んでいるのでさえ、王都のはずれにある森まで行かないといけない。

 グリフォンなんてそこよりも遠い場所に生息していると聞いているから、意図的に誰かが王都まで連れてきたってことよね。それが、何かの手違いでネイリア様の手元にやってきたってわけかしら。

 どういうことなのだろうかと、私は必死に前世の乙女ゲームのシナリオを思い出す。メモは家に置いてきてしまっているから、目を通せないので仕方がない。


「フィストニーナ様?」


 ネイリア様に顔を覗き込まれてしまう。

 いけない、そうだったわね。今日はお茶会だわ。お話を聞くことを優先して、シナリオのことは後で思い出すことにしましょう。

 そんなわけで、グリフォンの子どもを拾った状況を確認させてもらう。

 それによれば、屋敷の敷地の奥の方で拾ったとのこと。

 位置とすれば、隣の屋敷との境目付近なんだとか。王都の路地を必死に思い出すとネイリア様の屋敷の裏手は路地になっていたわね。

 ははーん、放り込む屋敷を間違えたってわけか。

 で、フィンガルス男爵邸の隣の屋敷は誰のところだっけ。


「ネイリア様、見つけた位置に近いお屋敷は、どちら様のお屋敷だったかしら」


 私の屋敷からネイリア様のお屋敷はちょっと遠いから、お隣が誰か分からないのよね。こっちに来て三年間、ほとんどお屋敷の中だったからなぁ。


「えっと……、スイケーネ・バッカス侯爵令嬢様のお屋敷です」


 ネイリア様のお話を聞いた私は、動きが止まった。

 うん、この名前は憶えがある。

 なるほど、このグリフォンの一件は、そういう風につながるのかぁ。


「フィストニーナ様、どうなされたのですか?」


「あ、いえ。なんでもありません。それよりも、グリフォンの子どもをよく見せていただけませんかしら」


「あっ、はい。もちろんですよ」


 私はごまかしながら、ネイリア様とお話をしている。

 でも、私は思い出してしまった以上、このグリフォンをどうするのか悩んでしまった。

 スイケーネ・バッカス侯爵令嬢は、幼い頃にグリフォンに襲われて大ケガを負ったご令嬢。眼帯をつけた影のあるご令嬢ということで、一部からはかなり人気があった。

 本来ならば、スイケーネ様がグリフォンに襲われるところだったのだけど、手違いでネイリア様が襲われたってことかぁ。

 はてさて、どうしたものだろうかしら。

 私はネイリア様と一緒にグリフォンの子どもと戯れながら、いろいろと考えてしまうのだった。

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