Round47 辺境伯令嬢からの誘い
決闘騒ぎからというもの、私の周りは少し賑やかになった。
やはり、決闘で見せつけた技術というものが、相当高度なものだったからだ。女子学生からだけならいいのだけれど、男子学生たちからも声をかけられる様は、はっきりいって気分がよろしくない。
それというのも、私の推しはゲーティス辺境伯家のファラン様なんだからね。男子学生たちからもちやほやされるのはいい気分といえばいい気分だけど、その分女子学生からのひんしゅくを買ってしまう。
はぁ、なんとも人付き合いというのは難しいものね。
それと、ちょっとした変化といえば変化なんだけど、ソニア様がすこーし距離を取っている。仲良しだと思っていだんだけれど、この状況は少しばかり予想外だったな。どういうことなんだろうと思うのよね。
そこで、もう一人仲のいいネイリア様に聞いてみることにする。
「それは、グリフィス王太子殿下のことでしょうね」
ネイリア様からの答えはこうだった。
どうやら、あの高等技術と治癒魔法に魅せられてしまった模様。
私は男爵家ではあるものの、その点でソニア様を上回ってしまった。それで、少しばかり、ソニア様の不況を買ってしまったようなのよ。
簡単な話、嫉妬というわけね。
ソニア様もやはり女性だものね。これはしょうがないことだわ。
でも、私は王妃には興味はないからね。
だけど、こうなると私がソニア様に口で言っただけでは解決できないでしょうね。それこそ、なんらかの形で見せてあげないといけない。ああ、実に面倒くさい。
解決のためには、グリフィス殿下の方もどうにかしないといけないものね。
そんなわけで、根本的な解決は後回しになりそうだわ。
その一方で、良いこともある。
いつぞや情けない姿を見せたせいで、そこまで交流のなかったバトリシア様との本格的な交流が始められたのよ。
バトリシア様は私の推しであるファラン様の妹。つまり、ファラン様と繋がりを作る大チャンスというわけね。
ファラン様と結ばれるには、ゲーム上だとバトリシア様はただの障害なんだけど、現実ならば逆に利用してやるに限る。
そんなわけで仲良くなれるのは好都合なのよ。
前にも一回言ったと思うけれど、辺境伯令嬢のお名前は『バ』トリシアであって『パ』トリシアではないからね。間違えたら鉄拳制裁よ。
「フィストニーナ様、ちょっとよろしいでしょうか」
「はい、なんでしょうか、バトリシア様」
お声をかけられたので、私はドキドキしながら反応をする。推しとの交流が始められるかどうかの分かれ目だからね。
「ディザリア様との決闘を見ていまして、私、とても感動致しましたの。そこで、一度お茶会がてら、拳を交えてみませんでしょうか」
ん?
どうしてその二つが組み合わさるのかしら。
やっぱりこの世界は何かがおかしいと思う。
お茶会と殴り合いは相容れないでしょうに。どうしてそんな組み合わせになるのかしら。
さすがは拳と魔法の世界。一筋縄じゃいかないわ。
転生に気がついてから早八年。本当にりかいふのうなところがちょこちょこあるわ。
とはいえ、この誘いを断る理由はない。
私は次のお休みでよければと返事をしておいた。
そんなわけで、学園の休業日である無節を迎える。
私はサクルと一緒に、ゲーティス邸を訪れる。
よく思えば、王都にある辺境伯邸は初めて訪れた気がする。辺境伯領は一度訪れてはいるけれどね。
記憶が怪しいので、私はサクルに確認をする。やっぱりその通りだった。
それと、さすがに何も持たずにというわけにはいかないので、ゲーム中でのバトリシア様の好物を手土産として持参している。こっちでも気に入ってくれるといいんだけどなぁ。なんで知っているのかを問い詰められたら、多分私は答えられないと思う。
「ようこそおいで下さいました、フィストニーナ様」
「こちらこそ、お招きにあずかりましてありがたく思います。こちら、折角ですので、プレゼントをお持ちしました」
「まぁ、何でしょうかね」
プレゼントと聞いて、バトリシア様の表情が、わかりやすいくらいに明るくなっている。
やはり、女性にプレゼントは鉄則ね。
ちなみにお渡ししたのは、花のブローチ。ドレスに付けてよし、髪飾りにしてもよしという代物よ。ちなみにファブニールに教えてもらった魔法もかけてある。守護のゲーティス辺境伯家に相応しい魔法をね。
まっ、その効果は教えないでおいて。いざという時のサプライズに取っておきましょう。
こうして、バトリシア様とのお茶会が始まる。
最初のうちは他のご令嬢の主催するお茶会と何ら変わりはない。お茶とお菓子を目の前にして、あれこれおしゃべりするだけの一般的なものよ。
本当にお話ばかりで時間が過ぎていくのだけど、ただじゃ終わらないのが、私がヒロインたる所以。
「バトリシア」
「お兄様、どうなさったのですか?」
そう、バトリシア様のお兄様であるファラン様がやってきた。これが今日の目的といっても過言じゃない。
「バトリシアが友人を誘っていると聞いてね、驚いてやってきてしまったんだ」
バトリシア様、普通の交流がございませんものね。それが辺境伯家のさだめというかなんというか。ちょっと可哀想な話なのよね。
それで、ファラン様は確認だけして立ち去ると思ったんだけど、なんてことだろうか、ファラン様は私たちのお茶会に乱入してきたのだった。




