Round45 決闘の決着
ディザリア様が放った火の拳に対し、私の拳から放たれた風魔法が正面からぶつかり合う。
威力を調整したとはいえど、互いにぶつかり合って押し合いが繰り広げられている。
あまりにも激しい魔法のぶつかり合いに、観客たちはものすごく盛り上がっている。
そりゃまぁ、まだ13歳になろうかという少女たちの放った拳魔法ですからね。魅せるとしたら、このくらいはやってあげるというものよ。
だけど、忘れてはいけないのは、これが決闘ということ。
特に、私の方は負けるとバッドエンド一直線の可能性があるので、このまま放っておくことはできない。
「もういっちょ!」
私はもう一撃風魔法を放つことにする。
「なんですって!?」
ディザリア様が、驚きの声を上げている。
あら、何をそんなに驚いているのかしらね。
私は特に気にしないで、風魔法にもう一発風魔法を叩きつける。
風魔法が追加された瞬間、炎は一瞬で激しく燃え上がる。どうよ、酸素たっぷりの風は。
激しく燃え上がる炎に、ディザリア様は完全に怯んでしまっている。自分で出した炎に、どうしてそこまで驚くのかしらね。私にはまったく理解ができないわ。
だけど、これこそ絶好の好機。
私はすぐさま動き出す。
私の風魔法を二発当てて激しく燃え上がる炎は、いい目くらましになるというもの。
「いただきましたわよ」
「はっ!」
私はご丁寧に、攻撃の直前に声を出してあげている。
完全に不意を突けているのに、私の余計な行動のおかげで、ディザリア様は私の方へと顔を向ける。
だけど、もう完全に時すでに遅し。
私は、ディザリア様の顔……ではなく、肩と拳に向かってパンチを繰り出している。
うん、やっぱり顔は殴れないわ。
でもね、肩と拳を痛めつけてあげれば、腕は上がらなくなるし、拳は握れなくなる。拳がものをいう世界で、拳を繰り出せないということは、つまりは敗北確定ということなのよ。だからこそ、顔の代わりに私はそこを狙った。
ディザリア様の左右の肩と拳を、私は正確に拳で痛めつける。
「いたぁっ!」
ディザリア様の悲鳴が上がる。
次の瞬間、ディザリア様はファイティングポーズを取れず、両手をだらりと下げてしまった。そう、まるでノーガード戦法のように。
えっ、古いって? ネットを聞きかじっていれば、こんな言葉だってすぐに頭に浮かぶのよ。
だけど、ディザリア様のその状態は、明らかに普通の状態じゃなかったわ。
審判が状態を確認しに向かう。
「腕は上がるかい?」
「うっ、ぐっ……」
審判の確認を受けて、ディザリア様が腕を上げようとする。だけど、苦痛に顔を歪めて、ディザリア様の両腕は上がることはなかった。ちょっと強く殴りすぎたかしらね。
でも、私にケンカを吹っかけてきたんですから、これくらいはダメージを与えてあげても問題ないわよね。
私が複雑な気持ちで立っていると、審判が目を伏せて首を左右に振っている。
「ディザリア嬢は戦闘続行不能と判断し、フィストニーナ嬢の勝利と致します」
私の勝ち名乗りが行われると、会場中から割れんばかりの歓声が巻き起こる。あれっ、私ってば思っていた以上に応援されていたのかしらね。
だけど、いつまでも呆気に取られている場合じゃないわ。ディザリア様の状態を回復させなくては。
「ごめんなさいね。あんまり傷つけたくなかったから、戦えないようにしてしまって」
「い、いいえ……。どのような結果とはいえ、私の負けは負け。潔く認めます」
戦いの後は、結構すっきりした状態だった。あれだけ敵意を向けていたディザリア様は、すっかりおとなしくなっていたのだもの。
だったら、余計のこと、この状態を早く回復させなくちゃ。
「ちょっと失礼しますね。このまましばらく動かなくては、今後の生活に影響がかなり出ますからね」
「ちょっと、何をするつもりなの?」
いやがる素振りを見せるディザリア様の手を、私はそっと両手で包み込む。
「手当て」
私の両手から、白い光があふれ出す。
「これは……」
驚いているディザリア様を気にしないで、私は痛めつけた肩と両手に対して回復魔法をかけていく。
四か所すべてにかけ終わると、私はディザリア様に声をかける。
「どうでしょうか。動かせますか?」
驚いているディザリア様は、しばらくするとゆっくりと腕を動かし始める。
「あっ、痛くない。あなた、回復魔法が使えるのね」
「えっと、まぁ……。一応使えますね」
私がはにかみながら答えると、ディザリア様は完全に言葉を失っていた。
あれっ、これってもしかしてやらかしたってやつでは?
いやいや、この程度の回復魔法くらい、誰だって使えるものじゃないのかしらね。そうだと言ってほしいわ。
ところが、私のかすかな希望は、あっさりと打ち砕かれてしまう。
「これは、回復魔法の使える聖女様でしたか。私ってば、このような方になんて無礼な口を利いたのでしょうか」
ディザリア様が私の前に跪いてしまう。
この光景を見ていた観客たちの間には、なんともいえないどよめきが広まっている。
まずい、これは完全にやらかしたやつだ。
私はどうしたらいいのか分からずに、ディザリア様の前で完全に固まってしまったのだった。




