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フィストニーナ拳闘記~君と殴り合う乙女ゲーム  作者: 未羊


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45/55

Round45 決闘の決着

 ディザリア様が放った火の拳に対し、私の拳から放たれた風魔法が正面からぶつかり合う。

 威力を調整したとはいえど、互いにぶつかり合って押し合いが繰り広げられている。

 あまりにも激しい魔法のぶつかり合いに、観客たちはものすごく盛り上がっている。

 そりゃまぁ、まだ13歳になろうかという少女たちの放った拳魔法ですからね。魅せるとしたら、このくらいはやってあげるというものよ。

 だけど、忘れてはいけないのは、これが決闘ということ。

 特に、私の方は負けるとバッドエンド一直線の可能性があるので、このまま放っておくことはできない。


「もういっちょ!」


 私はもう一撃風魔法を放つことにする。


「なんですって!?」


 ディザリア様が、驚きの声を上げている。

 あら、何をそんなに驚いているのかしらね。

 私は特に気にしないで、風魔法にもう一発風魔法を叩きつける。

 風魔法が追加された瞬間、炎は一瞬で激しく燃え上がる。どうよ、酸素たっぷりの風は。

 激しく燃え上がる炎に、ディザリア様は完全に怯んでしまっている。自分で出した炎に、どうしてそこまで驚くのかしらね。私にはまったく理解ができないわ。

 だけど、これこそ絶好の好機。

 私はすぐさま動き出す。

 私の風魔法を二発当てて激しく燃え上がる炎は、いい目くらましになるというもの。


「いただきましたわよ」


「はっ!」


 私はご丁寧に、攻撃の直前に声を出してあげている。

 完全に不意を突けているのに、私の余計な行動のおかげで、ディザリア様は私の方へと顔を向ける。

 だけど、もう完全に時すでに遅し。

 私は、ディザリア様の顔……ではなく、肩と拳に向かってパンチを繰り出している。

 うん、やっぱり顔は殴れないわ。

 でもね、肩と拳を痛めつけてあげれば、腕は上がらなくなるし、拳は握れなくなる。拳がものをいう世界で、拳を繰り出せないということは、つまりは敗北確定ということなのよ。だからこそ、顔の代わりに私はそこを狙った。

 ディザリア様の左右の肩と拳を、私は正確に拳で痛めつける。


「いたぁっ!」


 ディザリア様の悲鳴が上がる。

 次の瞬間、ディザリア様はファイティングポーズを取れず、両手をだらりと下げてしまった。そう、まるでノーガード戦法のように。

 えっ、古いって? ネットを聞きかじっていれば、こんな言葉だってすぐに頭に浮かぶのよ。

 だけど、ディザリア様のその状態は、明らかに普通の状態じゃなかったわ。

 審判が状態を確認しに向かう。


「腕は上がるかい?」


「うっ、ぐっ……」


 審判の確認を受けて、ディザリア様が腕を上げようとする。だけど、苦痛に顔を歪めて、ディザリア様の両腕は上がることはなかった。ちょっと強く殴りすぎたかしらね。

 でも、私にケンカを吹っかけてきたんですから、これくらいはダメージを与えてあげても問題ないわよね。

 私が複雑な気持ちで立っていると、審判が目を伏せて首を左右に振っている。


「ディザリア嬢は戦闘続行不能と判断し、フィストニーナ嬢の勝利と致します」


 私の勝ち名乗りが行われると、会場中から割れんばかりの歓声が巻き起こる。あれっ、私ってば思っていた以上に応援されていたのかしらね。

 だけど、いつまでも呆気に取られている場合じゃないわ。ディザリア様の状態を回復させなくては。


「ごめんなさいね。あんまり傷つけたくなかったから、戦えないようにしてしまって」


「い、いいえ……。どのような結果とはいえ、私の負けは負け。潔く認めます」


 戦いの後は、結構すっきりした状態だった。あれだけ敵意を向けていたディザリア様は、すっかりおとなしくなっていたのだもの。

 だったら、余計のこと、この状態を早く回復させなくちゃ。


「ちょっと失礼しますね。このまましばらく動かなくては、今後の生活に影響がかなり出ますからね」


「ちょっと、何をするつもりなの?」


 いやがる素振りを見せるディザリア様の手を、私はそっと両手で包み込む。


手当て(ファーストエイド)


 私の両手から、白い光があふれ出す。


「これは……」


 驚いているディザリア様を気にしないで、私は痛めつけた肩と両手に対して回復魔法をかけていく。

 四か所すべてにかけ終わると、私はディザリア様に声をかける。


「どうでしょうか。動かせますか?」


 驚いているディザリア様は、しばらくするとゆっくりと腕を動かし始める。


「あっ、痛くない。あなた、回復魔法が使えるのね」


「えっと、まぁ……。一応使えますね」


 私がはにかみながら答えると、ディザリア様は完全に言葉を失っていた。

 あれっ、これってもしかしてやらかしたってやつでは?

 いやいや、この程度の回復魔法くらい、誰だって使えるものじゃないのかしらね。そうだと言ってほしいわ。

 ところが、私のかすかな希望は、あっさりと打ち砕かれてしまう。


「これは、回復魔法の使える聖女様でしたか。私ってば、このような方になんて無礼な口を利いたのでしょうか」


 ディザリア様が私の前に跪いてしまう。

 この光景を見ていた観客たちの間には、なんともいえないどよめきが広まっている。

 まずい、これは完全にやらかしたやつだ。

 私はどうしたらいいのか分からずに、ディザリア様の前で完全に固まってしまったのだった。

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