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フィストニーナ拳闘記~君と殴り合う乙女ゲーム  作者: 未羊


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31/55

Round31 ケモケモ、ゲットだわ

 ファブニールの秘宝の隠し場所に近付いてくる、なんとも命知らずな男たち。

 ただ、私はその二人の男たちに連れられている獣人がとにかく気になっている。

 全身をよく見てみると、汚れてしまっているせいでその毛色がよく分からない。金色であるならば、エル・ドゥラードであることは間違いない。


「ファブニール」


「なんだ、フィストニーナ」


「あの男たちはどうでもいいんだけど、あの連れられている獣人だけは助けてあげて。彼をここで死なせるわけにはいかないの」


 私がファブニールにお願いすると、ファブニールはなぜか考え込んでしまった。そんなに悩むことなのかな。

 しばらく間のあったファブニールは、私にようやく答えを返してくる。


「俺の体格上、難しいだろうが、まあやってみよう」


 なるほど、でかすぎるから全部巻き添えにしかねないってことか。

 いけないわね。私ってば人間の尺度で考え過ぎだったわ。

 それにしても、私もずいぶんと恐ろしいことを言ったものだわね。それだけ、あのエルに対する扱いに腹を立てているというわけよ。

 だって、ケモよ、ケモ。

 隠し攻略対象だからか、あんまり知名度はないんだけど、いわゆるケモナーって言われる人たちからはすこぶる人気があるのよ、エルって。

 耳としっぽだけでもケモっぽいのに、書き込みを見るとマズルがどうだの、ふさふさとした体毛がどうだの、それはもう興奮した書き込みが絶えなかった。

 もったいないといえば、ほとんどのプレイヤーが投げ出す私の育成の最後の方から出てくること。ゲーム内で見ることがないから、その知名度の低さが本当にもったいない。

 まっ、動画投稿サイトを見たりすればプレイ動画が結構出てくるし、イラスト投稿サイトにしてもそれなりに投稿数は見るわ。さすがケモというべき現象ね。

 おっと、話がそれまくってしまったわね。

 私たちの目の前には、一歩ずつ怪しい連中が近付いてきている。


「ファブニール、そろそろ動いてビビらせてやりなさいよ」


「うむ、確かにそうだな」


 かなり近付いてきたので、私はファブニールに動くように声をかけている。

 そろそろ動くかとしたファブニールだったが、男たちの様子を見て思いとどまったようだ。


「あれっ? 行き止まりだな」


「おいっ、ここじゃねえのかよ!」


 ファブニールの体が洞窟の入口をふさいでいるので、当然ながら洞窟の入口を発見できるわけがない。なので、男たちは訝しんで立ち止まった。

 かと思ったら、鎖でつないでいるエルに対して殴りそうな勢いでつかみかかっている。

 それを見てしまった私は、気が付いたら動いていた。


「やめなさい!」


 声を出して飛び出してしまう。


「おん?」


「ぐへへっ、こいつはいい感じのお嬢ちゃんじゃないか。どうしてこんなところにいるんだい?」


 きっも!

 私の姿を見た瞬間に、エルへの攻撃をやめたのはいいものの、その気持ち悪い視線が私に向けられる。見るからにいやらしい目で、私は全身に鳥肌を立ててしまう。


「いやーっ!!」


 あまりにも気持ち悪くて耐え切れなくなった私は、思いっきり拳を振ってしまう。


「どわぁっ?!」


「なんて風圧だ! この嬢ちゃん、ただものじゃねえ」


 私はどうやら風魔法を使ってしまったらしい。だけど、男たちはその攻撃に耐えていた。


「俺たちはいろいろとついているな。お宝に加えて、こんな金になりそうな女に出会えるなんてよ」


「そうですね、アニキ。なら、もうこいつは用済みですかね」


「ああ、そうだな」


 男たちがそう話した瞬間、私はぶちんとキレた。


「ファブニール!」


「よしきた!」


 頭に血がのぼった私は、ファブニールを呼ぶ。待ってましたと言わんばかりに、ファブニールは立ち上がる。

 岩だと思っていた漆黒の体が起き上がると、男たちは目を見開いて、口をあんぐりと開け、マヌケな表情をその場にさらしていた。


「ど、ど、ドラゴン?!」


「くそっ、命あっての物種だ。おい、奴隷。そいつを引きつけておけ!」


 さすがの男たちも、ファブニールを相手には敵わないと見たみたいね。エルをおとりに逃げようとしているみたい。

 だけど、そうは問屋が卸しますかっていうものよ。

 今度はさっきみたいに耐えられるかしらね。私は拳に風魔法を集める。


「フィストニーナ・トルネード!」


 私は拳を思いっきり突き出し、風魔法を放つ。逃げる男たちを追いかけた風は、男たちの背中に命中する。


「ぐはっ!」


 風魔法を食らった男たちは、思った以上に吹き飛んでいっている。うわぁ、拳から放つ魔法ってこんなに強力なんだ。

 吹っ飛ばすつもりでいたけれど、さすがに想像していなかった吹き飛び方で私は驚いてしまう。


「おい、お前ら」


 私が吹き飛ばしてしまったせいで、出番の無くなったファブニールは、男たちに顔をずいっと近付けている。


「は、はい。なんでしょうか……」


「ここに二度と立ち入るな。命が惜しければ、今日のことはすべて忘れろ、いいなっ!」


「は、はいぃっ!」


 ファブニールが脅せば、男たちは勢いよく走り去っていった。エルのことを置き去りにして。


 こうして、私は隠し攻略対象のエルの救出を成功させてしまった。これも、本来ならば三年後のことよ。

 とりあえず私はエルを保護し、ファブニールの背に乗って家へと引き揚げていったのだった。

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