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フィストニーナ拳闘記~君と殴り合う乙女ゲーム  作者: 未羊


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Round3 体力は基本

 私がフィストニーナとして転生してからというもの、ひと月が経過している。

 さすがは乙女ゲームの世界とあってか、暦や時間というものが存在していて、一年は四つの季節とそれらをさらに三分割した十二の月がある。

 曜日も四属性と光と闇、それとすべてがなくなる無と属性が割り当てられている。曜日って言い方はしないんだけど、順番にこういう風になっている。地節、火節、水節、風節、光節、闇節、無節で一週間。無節というのはいわゆる日曜日で、この日はすべてがお休みになる。

 で、ひと月が経ったこの日、私は両親に呼び出された。

 話は何か。

 それは、あの日以来行っていない、特訓を再開させるかということだった。


「お話とは何でしょうか、お父様、お母様」


 サクルに連れられて、私は両親の元にやってきた。


「ああ、ニーナ。今日は呼び出して悪いね。遊びたい盛りだろうがね」


 お父様、その言い方は既に結論ありきという風に聞こえますよ。

 ちなみに、ニーナというのは私の愛称だ。本名はフィストニーナだけど、親しい間柄だけで呼び合う時はニーナという呼び方になるのよ。これは、乙女ゲームのセリフの中にもあった。


「あんなことがあったからには、無理はさせたくないと思うようになってね。そこで、ニーナはどうしたいのか、それを聞きたいの」


 お母様まで……。

 フィストニーナのままなら、ここで特訓をしたくないと言い出すんでしょうね。まあ、私も言うんだけど。

 でもね、私には別の考えがあるの。なので、それを述べさせてもらうことにする。


「はい、私は特訓はしたくはございません」


 私はまずはこの結論を最初に言う。当然ながら、両親は予想通りの反応でため息と同時に安堵したような表情を見せる。

 だけど、両親のその表情は、すぐに歪むことになる。


「特訓はしませんけれど、トレーニングはしたいと思います。体の基礎ができていない状態で特訓をしてケガをしたのですから、まずは基礎作りからしたいと思います!」


 はい、両親は黙り込みました。

 予想はしていたけれど、サクルと同じような感じかしらね。


「そ、そう……。必要なものがあるのなら、いつでも言ってちょうだいね」


「はい、必要な時にはそうさせていただきます。では、失礼致します」


 母親の引きつった表情が印象的だったけれど、私は早速有言実行に移るために、部屋を出ていった。


 部屋でドレスからパンツスタイルに着替えて、いざトレーニング開始よ。

 部屋の外に出れるようになったのだから、私はまずは屋敷の走り込みから始める。

 何をするにしても、やはり基本は体力。屋敷の周りを走って回る。中はさすがに使用人たちがいるし、周回できないから走らないわよ。

 けれど、さすがは五歳児の体力。屋敷の周りを一周する頃にはもうへとへとだった。


(あ、あかん……。子どもの体力、なめてた……。ここまでフィストニーナの体力がないなんて)


 目が回りそうだったので、私はサクルに抱えられて部屋に戻ることになってしまった。


「お嬢様、お飲み物を持って参りますね」


「お、お願いね……」


 部屋に戻った私は、椅子に座りながら完全に息が上がっていた。

 そういえば、前世もそんなに体力のある方じゃなかったもんなぁ。急激に運動をしようとするんじゃなかったわ。

 足がつらなかっただけでもまあいいところかな。

 部屋でやっていた腕立て伏せや腹筋だって、10回できたらいい方だったもの。本当に予想以上にフィストニーナは貧弱だった。乙女ゲームで与えられた数値が貧弱なのも納得がいく。


(でも、メインストーリーのイベントやサイドストーリーなどをこなしていくと、フィストニーナのステータスは大幅強化されるし、スキルだってそろってくる。私が頑張らないわけにはいかないのよ)


 将来的に確保されているヒロイン補正というもの。それを確実に手にするには、そこまでに能力の底上げを行っておく必要がある。まったく、本当に面倒なヒロインだわ。

 とりあえず、他家との交流が本格化する八歳までには、力こぶくらいは作れるくらいに鍛えておきたいかな。さすがに腹筋を割るのは無理だろうけど。


「ふわぁ~、生き返るぅ」


 サクルが持ってきた飲み物をのんだ私は、思わずそんなことをつぶやいてしまう。


「お嬢様、そういうことはいうものではありませんよ」


「えへへへ……」


 サクルにツッコミを入れられて、私はコップを持った状態でにへらと笑っている。

 可愛く笑う私を、サクルはなんとも冷めたような目で見つめている。なによう。


 とにかく私は、最悪の結末を跳ね返し、家族ともども幸せになる未来をつかむための努力を続けないといけない。そのためには、侍女に冷めた表情をされようとも、体を鍛えなければならないのよ。

 今日はこれでおしまいだけれど、今日よりも明日、明日よりもあさって、少しずつできるようになっていけばいい。ゲーム本編までは時期的に見て七年ちょいあるんだもの。時間は十分ある。

 私はゲームのフィストニーナじゃないもの。強制力だろうとなんだろうと、全部拳でぶっ壊してやるわ。

 決意を新たに、今日の私はゆっくりと休むことにしたのだった。

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