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フィストニーナ拳闘記~君と殴り合う乙女ゲーム  作者: 未羊


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Round29 突然のお別れ宣言

 グリフィス王子ルートへのフラグが完全に立ってしまってから、もう三年が過ぎた。

 私は12歳となり、来年には王国の学園に通うことになる。

 私の交友関係は、最初のお茶会の主催者であるソニア・バトリョーシカ様とそのお茶会でグリフォンに襲われかけたネイリア・フィンガルス様、それとドラゴンを退治したことで私のことを気にしているバトリシア・ゲーティス様の三人とはとても良好な状態が続いている。

 生活自体はそんなに問題が起きていないんだけど、やっぱり王子ルートに入っている弊害は起きている。

 なにせ私は男爵家だ。お茶会誘われては、周囲のご令嬢たちからは鋭い視線を向けられている。男爵家のご令嬢ごときが、殿下と仲良くするなと言いたげなんだろうと思う。

 でも、実際のところは私としては遠慮したいのに、向こうから迫ってくるような感じだ。まったく、勘弁してほしいものだわ。

 同時に真逆の評価も起きている。私とグリフィス殿下はお似合いだなんて声も聞こえるようになってきており、はっきり言って憂鬱になっている。ちなみにこれは男性たちの方からの多く聞こえてくる。どこをどう取ればそういう評価になるのかしらね。

 グリフィス殿下のメインの婚約者はソニア様で、私はあくまでも候補の一人にすぎない。何をそんなに期待するのかしらね。


 そんな中、学園への入学があと半年と迫った時、城で魔法の授業を受けていた私たちに対して、ファブニールがとんでもないことを言い出した。


「殿下、ご令嬢方。大変申し訳ございませんが、今日をもちまして私の授業は終わりにさせていただきます」


 そう、唐突な授業の打ち切りだった。

 はっきり言って寝耳に水のため、私たちは大いに驚かされた。だけど、この時のファブニールは、自分の都合としか言わなかった。

 グリフィス殿下は残念そうにしていたものの、そういうのならばということでやむなく受け入れていた。


 その日の夜、家でくつろいでいた私のところに、ファブニールがこっそりと姿を見せる。唐突に現れるものだから、私は思わず声を出しそうになってしまった。


「静かにしろ。大騒ぎになったらどうするんだ」


 ファブニールは私の口をがっつりとふさいでくる。おかげでちょっと息苦しくなったんだけど。殺す気なの?

 私が脛を思いっきり蹴飛ばしてやると、ファブニールは痛がって手を放してくれた。はぁ、息ができる。


「悪いが、俺は秘宝の隠し場所に一度戻らなくてはいけなくなったんだ」


 脛を擦りながら、ファブニールは私に家庭教師を辞める理由を話してくれた。

 それによれば、どうやらあの山の中の秘宝に問題が起きたらしい。

 実質四年間、ずっと王都で暮らしていたというのに、ここにきて何かしら執着する理由ができたようだ。


「どうもな、怪しい連中が俺の宝の周りをうろついているようなのだ。見つからないように隠遁魔法はかけているのだが、それを突破できる奴がいたようなのだよ」


 なるほど、自分のお宝を奪われそうになっているから、心配になったというわけか。ファブニールらしい理由だと思うわ。

 でも、なんだか気になるわね。ファブニールの魔法って結構すごいものだから、それを突破できるって相手もものすごい魔法の使い手なのかしら。


「お前、なんでそんなに目を輝かせているのだ」


 ファブニールがジト目を向けてくる。

 あれっ、私ってばそんなに目を輝かせていたかしらね。これはいけなかったわね。

 でも、私たちに魔法を教えてくれたファブニールのピンチと聞いて、放っておけるわけがないじゃないの。


「ダメだ。お前を連れていく気にはならんぞ」


「いくら断わっても無駄。私は絶対についていくわ。私に興味を持たせたことを後悔しなさい」


 私はファブニールについていく気満々である。

 どうにかしてファブニールは私を置いていこうとするも、私のしつこさに結局折れてしまい、私を連れていってくれることになった。


「はぁ、俺のお宝の危機だというのに、なんで子守りなどせねばならん……」


「まぁまぁ、私はファブニールの生徒よ? ヒロイン補正があるだろうし、きっと役に立つから」


「わけのわからんことを言うな」


 にこにこと笑う私に対して、ファブニールはまともなツッコミを入れていた。

 そんなわけで私は、ファブニールと一緒にゲーティス辺境伯のところに遊びに行くとメモを残して、家をこっそりと出発することにした。


「本当に、どうなっても知らんから」


「大丈夫よ。私だってただの無茶をするだけの小娘じゃないわ。きっと役に立つからさ」


「期待はしないが、その言葉、後悔するなよ?」


「もーまんたーい」


 ファブニールには何を言っているんだという顔をされながら、私は一緒にファブニールの秘宝の隠し場所へと向かうことになった。

 隠遁魔法を使った状態でドラゴンの姿になったファブニール。その背中に乗って私は一路、ゲーティス辺境伯領の山の中へと向かっていく。

 私はファブニールの秘宝よりも、隠遁魔法を突破できる人間の方に興味がある。どんな人物か確認してみたいのよ。

 わくわくしている私を背中に乗せながら、ファブニールは目的地へと向けて一直線に空を飛んでいく。

 三年ぶりとなるお宝訪問。はたして、どんな出会いが待っているのかしらね。

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