Round27 ルートを固められそう
私はグリフィス殿下、ソニア様、それとファブニールとともに、それぞれの従者を伴いながらお城の庭で話をすることになった。
どうしてこうなったのかまったく分からない。
一国の王子と公爵令嬢がいる中で、私みたいな男爵令嬢が挟まっているのは、実に状況としてよろしくないのは間違いないと思うよね。だけど、王妃様からのお言葉ということもあり、私はこの状況から逃げられなかった。
しかしだ。このメンツで私は一体何を話せばいいというのよ。
「フィストニーナ様」
ソニア様が話し掛けてくる。
「な、なんでございますでしょうか、ソニア様」
私はとてもぎこちなく返事をしている。
「先日、バトリシア様とお話する機会がありましたの。実に興味深いお話を聞くことができましたわ」
「へ、へぇ……。どのようなお話でしょうか」
嫌な予感がして、私は微妙に目を合わせないようにしてソニア様に返事をしている。
バトリシア様というのは、バトリシア・ゲーティス辺境伯令嬢で間違いがない。そう、去年にお母様たちと一緒に鍛練に出向いた場所のご令嬢よ。
そのバトリシア様からのお話となれば、ひとつしかない。しかも、ソニア様がわざわざ私に直接言ってくるのだから、それ以上の疑いようはなかった。
「バトリシア嬢といいましたら、辺境伯家のご令嬢ですね。僕も興味があります、ぜひともお聞かせ願えませんか」
ああ、グリフィス殿下がものすごく食いついてるぅっ!
何とかして話をそらさないと……。
なんか変な声が聞こえてくると思ってチラ見をすると、ファブニールが笑っている。こいつってば、自分が私に殴られてあえなく撤退した情けないことのはずなのに、ものすごく楽しそうにしてるわ。まあ、なんて図太い神経の持ち主なのかしらね。
結局、私がドラゴンを殴って退却させたという話は語られてしまった。
やめてよ、この年齢でドラゴンを撃退した女なんて称号、つけられたくもないんだけどぉっ?!
しかし、バトリシア様からの伝聞とはいえ、辺境伯令嬢という肩書の信用はかなり高い。結果として、ソニア様は事実としてグリフィス殿下に語り、殿下はものの見事に信じてしまい、目をキラキラとさせながら私に顔を向けてきた。
やっば、これは絶対『おもしれ―女』って思われたわ。
はぁ……、辺境伯令嬢と公爵令嬢の肩書、強すぎる。
「なるほど……。となると、母上が仰られていたことは事実なのですね。これは素晴らしいですね」
「ええ、このような腕っぷしの強いお方、わたくしとしても、フィストニーナ様を未来の王妃に推したいくらいですわ」
ちょっと、何を言ってくれているのよ。
ドラゴンを殴って撤退させ、盾を構えた兵士をぶっ飛ばした。それは事実だけどどちらもたった一回だけしかしていない。たまたまかもしれないし、そう簡単に信じちゃうわけ?
発言した人物の立場がそりゃあれだけど、こんなの納得いかないわよ。
こうなったら、どうにかこうにか私の評価を揺るがしてやる。
というわけで、私はファブニールへと視線を向ける。
「おほほほほ……。この魔法使いのファブニールの教えが素晴らしいので、私のような弱い令嬢でも強い一撃を放てるようになりましたの。お二人もファブニールに習えば、きっと素晴らしい魔法の才を発揮できると思いますわよ」
私の才能なんてのは大したことがなくて、すべてはファブニールの功績だということを強調するように話す。
ところが、これでファブニールが慌てるような様子はなく、うんうんと私の隣で頷いている。
「ですが、魔法の家庭教師がつくよりも前だと伺っておりますよ。ドラゴンを殴って撃退させたことは」
ギクリ。
時系列を把握済みかぁ!
ろくに交流もしなかったのに、そういう情報はしっかりとつかんでいるのね。怖いわ、貴族社会。
私が答えに窮していると、ファブニールが動く。
「発言を失礼致します」
「どうぞ」
ファブニールは発言の許可を殿下に求める。それはすぐに了承される。
「私が聞いていることですと、フィストニーナ様はグルフォンの羽をお持ちだということです。当時も持ち歩いていたということですので、辺境伯家を守ろうとした思いに、グリフォンの羽が反応したのではないかと推測されます」
「ほう、それはそれで興味深いですね」
ファブニールが私に対するフォローを入れたようだけど、なんか別な方向で感心されてない?
なーんか嫌な予感がする。
「これは、僕も負けていられませんね。ぜひとも釣り合いが取れるように、一生懸命魔法を学んでみせます」
「分かりました。このファブニール、殿下のご期待に副えるよう、しっかりと指導させていただきますとも」
なんだか妙な雰囲気になってきたわね。
ソニア様はずっとにこにこと私たちの様子を見ていらっしゃるし、これってどういう状況になったのかしら。まったくわけがわからないわ。
ただ、はっきりと分かったことは、間違いなく、私の魔法の先生が王家に取られてしまったことくらいかしらね。これからは独学で魔法を鍛えるしかないのか。
「何を落ち込んでいるのだ。これからは三人で、俺の下で魔法を教わるのだぞ?」
「え?」
ファブニールがとんでもないことを言い放ってくれた。
なんてことだろうか。どうやら私は、これからはわざわざ城に出向いて魔法を学ぶことになったらしい。
やめて、これ以上、外堀を埋めないで……。
私はその場で放心をしてしまうのだった。




