Round26 なぜかお城に呼ばれて
私が謁見の間で兵士を吹き飛ばしてから一週間が経った。
悲しいことに、ファブニールは私の魔法の先生から、グリフィス殿下の魔法の先生へとジョブチェンジをすることになった。なんでこうなるのよ。
でもまぁ、王子である以上はある程度きちんと能力を扱えなきゃいけないから、しょうがないかなと思う。
今日はお城へと向かうファブニールを見送ることになった。
ところが、私がファブニールを見送ろうとしていると、両親が私がじっと見つめてくる。一体どういうことなのよ。
「ええと……。お父様、お母様、その目は、どういうことでしょうか……」
あまりにも凝視をしてくるので、私はおそるおそる両親に声をかけてみる。
そうしたら、両親はお互いの顔を見ると、私にもう一度視線を向けてくる。
「ニーナや、お前も一緒に城に行くんだよ」
「そうですよ、ニーナ」
「え?!」
私は状況がのみ込めないでいた。どういうことなのか、説明してほしいんだけど。
ところがどっこい、両親に説明をしてもらえないまま、私はサクルの手によって一緒に馬車に乗せられてしまう。そのままドナドナとなり、私は城へと向かうことになってしまった。
ちょっと待ってよ、どういうことなの。誰か、誰か説明して!
私は心の中で叫んでいる。
馬車に乗っている間、サクルもファブニールもまったく言葉を発しない。おかげで、私は不安な気持ちのままお城に連れていかれることになってしまった。
しかし、私の疑問はお城で解決することになる。
「よく来たな、フィストニーナ・バイタラルよ」
「お久しぶりでございます、フィストニーナ様」
城へとやってきた私は、王妃様とソニア様に迎えられる。
なんで二人に出迎えられたのか、私にはよく分からない。ファブニールの方へと顔を向けるも、ファブニールは私のことをスルーしてくる。
結局、私がどういう状況下のみ込めないまま、王妃様に連れられて私たちは城の中を歩いている。
そうしてやってきたのは、グリフィス殿下のお部屋だった。
「グリフィス殿下、お久しぶりでございます。ソニア・バトリョーシカでございます」
「フィストニーナ・バイタラルでございます」
ソニア様の挨拶に続いて、私もグリフィス殿下に挨拶をする。
「やあ、久しぶりですね、ソニア嬢、フィストニーナ嬢。母上、わざわざお二人を迎えに行って下さり、ありがとうございます」
「よい、気にするな、グリフィス。将来の嫁候補の二人だ。母親としてこのくらいは当然というものぞ」
いや、はっきりと嫁候補といってくれたわね、王妃様。
正直言うと、私はグリフィス殿下にはほとんど興味はない。なんでかっていったら、私がそもそも王妃という器に合っているとは思えないもの。
あと、私は男爵令嬢である以上、身分的な問題でいろいろと大変だと思うのよね。そりゃ、拳がすべてを決める世界だとしてもさ。
私がソニア様の隣に立ちながらそんなことを思っていると、グリフィス殿下の視線が、私の隣にいるファブニールへと向いている。
「母上、その方が私の新しい魔法の家庭教師ですか?」
「うむ、その通りだ。バイタラル男爵と夫人から推薦をもらってな。なんでも、魔法の教えを乞うたフィストニーナは、魔法の力を用いて、盾を持った屈強な兵士を大きく吹き飛ばしてしまったというのだからな」
「それは……すごいですね。私と同じ九歳ですよね? そのようなことが可能なのですか?」
王妃様の説明を聞いたグリフィス殿下は、私の方を興味津々に見つめている。いや、そんなに見ないでほしいわね。
それに王妃様。なんでファブニールの紹介をするはずが、私の話になったのですかね。いや、教え子の実力を示せば、師匠の紹介になるのはそうなんですけど、それはそれでおかしいと思うわ。
私は思わず、王妃様に対して非難の目を向けてしまう。
私の視線に気が付いた王妃様は、なんでかにこりと笑っていた。そうじゃないってば!
「なるほど、それならば私が魔法を学ぶにはちょうどよいでしょうね。実証があるのであるならば、とても期待できます」
またずいぶんと難しい言葉を知っているわね、実証だなんて。これが王族の教養かしら。
それはそれとして、なぜソニア様までいらっしゃるのかしら。嫁候補とか言っていたから、そのことも関係があるのかしらね。
「今日は天気が良い。顔合わせも兼ねて、魔法の先生となるファブニールとともに、お前たちは庭で話をしてくるがよい」
なるほど、そういうことかぁっ!
私たちの中を進展させようと、王妃様ってば企んでいたのね。
しかし、気が付いたからとはいってもすでにお城の中にいるのでは後の祭りでしかない。
そうなれば、私はグリフィス殿下からの心証を悪くするくらいしか、王妃になる道から遠ざかる方法はない。
とはいえ、お城の中でそんな粗相をするような真似なんかできるわけがない。
いろいろと私は思案を巡らせる。
それぞれに仕える使用人を伴いながら、私たちはお城の中庭へとやって来る。
今日は魔法の先生であるファブニールとの顔合わせとあって、このままお茶会をするらしい。
はてさて、私はどうやってこの状況を乗り切るべきなのかしらね。私は一人、ものすごく緊張をするのだった。




