Round22 お宝を目にして
ファブニールに連れられて山中を進んでいくと、私たちの目の前には洞窟が姿を見せた。
山中に降り立ってからというもの、周囲からは凄まじい視線を向けてくる気配がうようよと感じられていた。だけど、ファブニールが言うように、私に対して危害が及ぶことはなかった。
「ここが俺の財宝の隠し場所だ。どうしてお前がここを知っているのは気になるが、興味があるのなら、特別に見せてやっても構わない」
ファブニールはまるでツンデレのような言い方をしている。いや、男のツンデレは要らないんだけど。
本当にこういう自信家っていうのは、普段はツンツンしているものの、どこか理解を示すと途端にでれる。いくらなんでもちょろゴン過ぎないかしらね。
とはいえ、どんな財宝があるのか気になるので、あんまり機嫌を損ねないようにするため、私はいろいろといいたい気持ちを抑え込んで口をつぐんでおいた。
洞窟の中へと入っていくと、奥の方からなんだかまばゆいばかりの気配を感じる。お宝っていうのは、こんなに距離があっても感じ取れるものなのね。
なんともいえない気配を感じ取っている私は、不思議と足が止まりかけてしまう。強すぎる憧れが、その足を重くしてしまうらしい。
「何をしている。さっさとついてこい」
「え、ええ」
足が止まりかけている私に対して、ファブニールが声をかけてくる。威圧感のある声のおかげで、私のすくみあがる足が元気を取り戻す。ファブニールの後ろについて、一歩を踏み出し続ける。
やがて、一番奥が近くなると、ますますキラキラとした気配が近付いてきた。
「さぁ、これが、俺がこれまでに集めてきた財宝の数々だ。よくと見るがよい」
「うわぁ……」
目の前には、イベントに置いてみたことのあるような光景が広がっている。
まるで金銀パールプレゼントといわんばかりのまばゆいまでの財宝の山である。
この財宝が隠されている洞窟自体はとても暗いというのに、この一番奥の空間は、集められた財宝が光を放っていて、とにかく目が開けられそうにない。
「くうぅ……。これが財宝に目がくらむという現象なのね」
「まったく、面白い反応をしてくれるな。俺が生まれてから1000年以上の時間をかけて集めたものだからな。そりゃまばゆくもなるというものだ」
私の反応が気に入っているのか、ファブニールはとても満足そうだった。
しかし、そんな感動の光景も、長くは見させてもらえなかった。
ファブニールはすぐさま、私を連れて外へと向かっていく。一体何をするつもりなのか、私は強く警戒をしている。
「そもそもは力量を試すための外出なのだ。やはり、ここは何かと戦ってもらわないとな」
ああ、そうでしたっ!
まったく、しっかりと覚えていたのね、このドラゴン。
財宝のある洞窟から外へと出てきた私たちは、再び周辺を歩き始める。
さすがはファブニールが財宝を隠している場所とあってか、周囲の魔物の気配はなんだか強そうな印象を受ける。
しかし、私はそこまでびびっているわけではなかった。だって、ここは育成が不十分な一年生の段階でやって来る場所なんだもの。しかもタイミングは、メインストーリーのネイリア様との戦いよりも後のこと。あの鬼のステータスのネイリア様を越えた後のイベントゆえに、なんともぬるいイベントだったような覚えがある。
となれば、その時のネイリア様を越えられるだけ鍛えられていると思っている私にとって、実に恐るるに足らずという状況なのよね。
「さぁて、どの魔物にしようかな」
ファブニールはずいぶんと迷っているようだ。
なんだか決めかねているようなので、私は適当に視界に入った魔物を選択することにした。
「それじゃ、あれと戦いたいと思います」
私が指差したのは、よりにもよって立派な角を携えたビッグディアーだった。
当然ながら、ファブニールは難色を示してくる。
「本当にいいのか? あの角、結構痛いぞ?」
そう、頭の上にある大きな角が理由だ。
ゲーム内では戦うことはなかったけれど、グラフィックとしてはしっかりと描かれたビッグディアー。だからこそ、私は一度戦ってみたかった。
「しょうがないな。もしもの時は俺が割って入るが構わないな?」
ファブニールが確認をしてくるので、私はこくりと頷いた。
うまく倒すことができれば、立派なお肉にありつけるし、あの角は結構な値段で売れそうだもの。メリットしかない。
あー、なんだかわくわくしてきたわ。
普段の筋トレの成果と、ファブニールに教えてもらった魔法というものを、見せつけてやろうじゃないのよ。
私はビッグディアーをしっかりと見据えながら、両手の拳をがっちりと突き合わせている。
この戦いは、今後のシナリオを生き抜いていく上での指標になるわ。なんとしても、ぶっ倒してあげようじゃないのよ。私はますます気合いを入れていく。
やる気十分の私を見て、ファブニールは好きにしろといった表情を見せている。
私がとんでもない殺気を放ちながら視線を向けているので、さすがにビッグディアーもこちらに気が付いたようだ。頭を下げて、前足はまるでかき込むような動きを見せている。これははっきりと、私のことを敵と認識した動きだと思われる。
さあ、腕試しを始めようじゃないの。
私は拳を構えて、半身の状態でビッグディアーと向かい合った。




