Round21 ドラゴンの背に乗って
私が話した最初の財宝のありかは、ファブニールの財宝の隠し場所だったらしい。なるほど、それで財宝関連のイベントを進めるとファブニールが登場するのか。私はなんとなくだけど、イベントの流れに納得がいった。
そこで私は、ファブニールに財宝をこの目で見てみたいとおねだりをしてみる。
当然ながら、ファブニールは嫌がっている。自分の財宝の隠し場所を、他人に明かすわけにはいかないからね。当たり前の反応よ。
だけど、自分から冒険をやってみたらどうだと勧めてしまったということもあり、ずいぶんと悩み抜いた結果、ファブニールは私の希望を受け入れていた。やったね。
となれば、あとは両親の説得かしらね。
私はまだ九歳だから、多分絶対許可は下りない。どうやって説得しようかしら。
私が悩んでいると、ここは俺に任せろとばかりにファブニールが笑っている。言い出しっぺだから、何とかしようというわけなのね。
そんなわけで、私はすべてをファブニールに任せることにした。
結果から言うと、意外とあっさり許可は下りた。絶対に無茶をしないということが条件だったけどね。
近場への泊りがけのピクニックという大噓をついてなので、一泊だけという条件が付けられてしまったけれど、とにかく外泊を伴ったお出かけの許可が下りた。
私とファブニールだけということは心配だろうけれど、魔法の先生ならなんとかしてくれるというのが大きかったわね。
私はうきうきとした気分で、冒険に向かう準備を進めた。
準備に三日を要したものの、私はいよいよファブニールの財宝の隠し場所へと向かうことになった。本当ならば、十三歳の時に発生するイベントの一つなんだけど、四年も前倒しできてしまった。
「本当に楽しそうだな」
「当たり前でしょ。ゲームの中では画面にすら表示されなかった財宝を、この目で実際に見ることになるのだからね」
「だから、なんなのだ、そのげぇむとやらは……」
私の話す内容を理解できないらしく、ファブニールはとにかく表情が歪んでいる。
でもねぇ、どういう風な説明をすればいいのか、私にはまったく難しい問題だわ。というわけで、なんか夢で見たということにしておいて、早速出発することになる。
王都から出たという証拠は残しておかなければならないので、私たちは王都の門から外へと出ていく。外へ出てしばらくすると、ファブニールの魔法で気配を消す。
その状態でファブニールはドラゴンの姿に戻り、私はその背中に乗ることになる。
「さぁ、しっかりとつかまっていろ。俺の財宝の隠し場所を他人に教えるなど、これが初めてなのだからな」
私は分かったとばかりに、ファブニールの背中を叩きつつひと言だけ返事をしておいた。
次の瞬間、ファブニールが羽ばたき、あっという間に地面がどんどんと離れていっている。そう、私は空中にいるのだ。
「うわーっ! すっごーっ!」
「あんまりしゃべるなよ。何かあって舌でもかんだら大変だからな」
「了解!」
ファブニールに注意されて、私はぞっとした気持ちになりながら元気よく返事をする。
このやり取りが終わると、ファブニールは一気に前方へと向かって進み始める。
ものすごく速い。
なんていうのかしら。ジャンボジェット機くらいのスピードを、その身で体験している状態かしらね。ものすごく速いし、ものすごく怖い。
周囲の景色がどんどんと変わっていくのがかろうじて見えたくらい。空飛ぶ体験というのは、ただの恐怖でしかなかった。
「さぁ、着いたぞ」
「はらほろひれはれ~……」
「お前は何を言っているんだ」
地上に降りたファブニールが私に声をかけてくるものの、あまりの恐怖で私はすっかり取り乱していた。そりゃ呆れられるというもの。
どうにか我に返った私は、ファブニールの背中から降りる。
それにしてもドラゴンのうろこまみれの背中に乗っていたのに、思ったよりも痛くはなかったわね。
「ここは、ゲーティス辺境伯の砦からかなり離れた山中だ。人もあまり寄り付かない場所なのでな、ここを知っているということは普通じゃ考えられない」
私を背中から降ろして人型になったファブニールは、私に対して現在地を説明している。
確かに、周囲を見回すととてもじゃないけれど人がやってくるような場所には見えない。かなり寒気がする。
「大丈夫だ。俺と一緒にいる限り、お前には危害を加えさせん。とにかく俺から離れるなよ」
「う、うん」
私はファブニールにそんなことを言われて、思わずときめいてしまった。
いやいやいや、私の推しはファラン様よ。ドラゴンになんて惹かれるなんてありないわ。
私は思いっきり首を横に振って、さっき生じた気持ちをすぐさま否定している。
「何をしているんだ。とにかく俺から離れるな」
「わ、分かったわよ」
私はファブニールの服をがっちりとつかんでいる。
財宝の話から訪れることになってしまったファブニールの財宝の隠し場所。まったくもってイレギュラーな展開だけれど、私はとてもわくわくしている。
はたして、ここで私のこの一年間の成果を試すことができるか分からないけれど、私たちは恐ろしい山の中をゆっくりと進んでいくのだった。




