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フィストニーナ拳闘記~君と殴り合う乙女ゲーム  作者: 未羊


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20/55

Round20 お宝求めて実戦を

 それからというもの、一年間が経過した。

 私は九歳となり、少し成長を遂げた。

 私は相変わらずファブニールに魔法を見てもらっており、今日もあれこれ鍛練に打ち込んでいる。

 はてさて、ファブニールに見てもらった私の魔法の腕前は果たしてどうなったのやら。


「ふんっ!」


 私は拳を握りしめ、勢いよく前へと突き出している。そこからは、風をまとった拳が飛び出していき、ファブニールが設置した的に勢いよく当たっていた。


「なんだこのそよ風は。この俺が教えて一年経つというのに、まだこんなそよ風しか放てないのか」


 思いっきり文句を言われたわよ。

 悪いわね。これが今の私の限界なのよ。

 ああ、このモブヒロインは、いくらなんでも貧弱すぎでしょうに……。

 私は私自身がとにかく嫌になっていた。

 筋トレや走り込みにより効果は確かに出てきているんだけど、やることなすことは、どうにか器用貧乏といった感じか思うほどの成果が発生しない。


 ゲームにおけるフィストニーナも、他のキャラ同様に行う育成では、とにかくステの伸びが悪い。体感、平均的に五パーセントくらい低い感じだわ。

 でも、フィストニーナの真骨頂は、イベントをクリアした時の報酬にあった。ヒロインならではのイベントがたくさんあって、それをクリアすると一気にステータスが上昇するという感じだった。

 ただ、イベントに構いすぎると育成はおろそかになるし、攻略対象によっては好感度が上がらない。なんとも酷い選択を迫られるということは育成モードに比べてかなり多かった。

 私はそのフィストニーナの育成もなんとか全部やり切った。隠し攻略対象だって、全部引きずり出したわよ。私が転生するまでに登場していたキャラクターは全部ね。

 もっとも、一部は攻略サイトを利用させてもらったけど。条件が鬼畜な攻略対象もいたから、全部自力はさすがに無理すぎた。


「何をじっと見つめている」


「いや、別に」


 ファブニールに反応されて、私はふいっと顔を背けている。ちょっと顔を見過ぎてしまったかしらね。

 隠し攻略対象であるファブニールのイベントは、さすがに唐突過ぎたわね。本編中の財宝イベントを中心としてこなすと、唐突に我が家にやって来て戦いを挑んでくる。それが出会い。

 勝てば追い返すことはできるけれど、負けると没落エンドが待っている。我が家の金銀財宝が全部奪われて没落と表示されて、テキストによるモノローグバッドエンドだったわね。手抜きが過ぎる。だけど、立ち絵はあったな。


「財宝かぁ……」


 私はゲーム中のイベントを思い出して、ぽつりと呟いてしまう。


「ほう、財宝とな。興味深いな」


 そしたら、ファブニールが反応してしまった。

 そういえば、ファブニールがファフニールと同一であるのなら、宝物を集める習性があるのよね。

 むむむ……、これはしまったというべきなのかしら。


「そうだな。こんなところでぬくぬくとしてやっていても、お前の魔法の才能はたかが知れた状態で終わってしまいかねない」


 あっ、なんかスイッチが入ったな、このドラゴン。


「いやいやいや、何も私は冒険がしたいわけじゃないわよ。まだ守ってもらわないといけない九歳の子どもよ?」


 私はなんとか思いとどまらせようとするも、このドラゴンは完全にやる気満々でいるようだった。


「うむ、ここまで学んできたことを確認するために、どこか冒険に向かうことにしよう。なに、俺はドラゴンだ。お前をこっそり連れ出すことも可能だからな。さぁ、早速準備を始めようじゃないか」


 ダメだ、これは止まらないやつだ。

 こっそり連れ出すとかマジで何をするつもりなのよ。第一、その財宝の話とかまだしていないでしょうが。

 まったく、こいつときたらぁ……。財宝と聞いた瞬間に目の色を変えすぎでしょうに。

 結局、私はファブニールを止めることができず、引きずられるようにして自分の部屋へと連れ戻されてしまった。

 ああもう、もうどうにでもなれ。

 もう私は諦めた。


 部屋に戻ると、私はファブニールからとにかく詰め寄られる。

 財宝とはどういうものか、どこにあるのか、どの程度あるのか。それはまあ、根掘り葉掘りとこれでもかというくらいに尋問されたわよ。

 ドラゴンが本気を出せば、本当に怖いというもの。回収するために躍起になっているファブニールの目は、とにかく血走っていて怖かった。

 というか、本当に私たちだけでやるつもりなのかしらね。

 いろいろと思うところはあるのだけど、私には今のファブニールを止めるだけの自信はどこにもない、微塵もない。

 仕方ないので、私は一つ目の、最も早い時期に起きる財宝イベントについて話をすることにした。

 ところがどっこい。それを聞いたファブニールは驚愕の表情を浮かべている。一体どうしたというのかしら。


「なぜおまえは、俺の秘蔵の隠し場所を知っているのだ」


「へ?」


 私がゲーム本編中に最も早く遭遇する財宝関連のイベントについて話すと、ファブニールから質問をされてしまう。

 どうやらそのイベントで訪れる場所は、ファブニールの宝の隠し場所だったらしい。

 なんてこったい。

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