Round20 お宝求めて実戦を
それからというもの、一年間が経過した。
私は九歳となり、少し成長を遂げた。
私は相変わらずファブニールに魔法を見てもらっており、今日もあれこれ鍛練に打ち込んでいる。
はてさて、ファブニールに見てもらった私の魔法の腕前は果たしてどうなったのやら。
「ふんっ!」
私は拳を握りしめ、勢いよく前へと突き出している。そこからは、風をまとった拳が飛び出していき、ファブニールが設置した的に勢いよく当たっていた。
「なんだこのそよ風は。この俺が教えて一年経つというのに、まだこんなそよ風しか放てないのか」
思いっきり文句を言われたわよ。
悪いわね。これが今の私の限界なのよ。
ああ、このモブヒロインは、いくらなんでも貧弱すぎでしょうに……。
私は私自身がとにかく嫌になっていた。
筋トレや走り込みにより効果は確かに出てきているんだけど、やることなすことは、どうにか器用貧乏といった感じか思うほどの成果が発生しない。
ゲームにおけるフィストニーナも、他のキャラ同様に行う育成では、とにかくステの伸びが悪い。体感、平均的に五パーセントくらい低い感じだわ。
でも、フィストニーナの真骨頂は、イベントをクリアした時の報酬にあった。ヒロインならではのイベントがたくさんあって、それをクリアすると一気にステータスが上昇するという感じだった。
ただ、イベントに構いすぎると育成はおろそかになるし、攻略対象によっては好感度が上がらない。なんとも酷い選択を迫られるということは育成モードに比べてかなり多かった。
私はそのフィストニーナの育成もなんとか全部やり切った。隠し攻略対象だって、全部引きずり出したわよ。私が転生するまでに登場していたキャラクターは全部ね。
もっとも、一部は攻略サイトを利用させてもらったけど。条件が鬼畜な攻略対象もいたから、全部自力はさすがに無理すぎた。
「何をじっと見つめている」
「いや、別に」
ファブニールに反応されて、私はふいっと顔を背けている。ちょっと顔を見過ぎてしまったかしらね。
隠し攻略対象であるファブニールのイベントは、さすがに唐突過ぎたわね。本編中の財宝イベントを中心としてこなすと、唐突に我が家にやって来て戦いを挑んでくる。それが出会い。
勝てば追い返すことはできるけれど、負けると没落エンドが待っている。我が家の金銀財宝が全部奪われて没落と表示されて、テキストによるモノローグバッドエンドだったわね。手抜きが過ぎる。だけど、立ち絵はあったな。
「財宝かぁ……」
私はゲーム中のイベントを思い出して、ぽつりと呟いてしまう。
「ほう、財宝とな。興味深いな」
そしたら、ファブニールが反応してしまった。
そういえば、ファブニールがファフニールと同一であるのなら、宝物を集める習性があるのよね。
むむむ……、これはしまったというべきなのかしら。
「そうだな。こんなところでぬくぬくとしてやっていても、お前の魔法の才能はたかが知れた状態で終わってしまいかねない」
あっ、なんかスイッチが入ったな、このドラゴン。
「いやいやいや、何も私は冒険がしたいわけじゃないわよ。まだ守ってもらわないといけない九歳の子どもよ?」
私はなんとか思いとどまらせようとするも、このドラゴンは完全にやる気満々でいるようだった。
「うむ、ここまで学んできたことを確認するために、どこか冒険に向かうことにしよう。なに、俺はドラゴンだ。お前をこっそり連れ出すことも可能だからな。さぁ、早速準備を始めようじゃないか」
ダメだ、これは止まらないやつだ。
こっそり連れ出すとかマジで何をするつもりなのよ。第一、その財宝の話とかまだしていないでしょうが。
まったく、こいつときたらぁ……。財宝と聞いた瞬間に目の色を変えすぎでしょうに。
結局、私はファブニールを止めることができず、引きずられるようにして自分の部屋へと連れ戻されてしまった。
ああもう、もうどうにでもなれ。
もう私は諦めた。
部屋に戻ると、私はファブニールからとにかく詰め寄られる。
財宝とはどういうものか、どこにあるのか、どの程度あるのか。それはまあ、根掘り葉掘りとこれでもかというくらいに尋問されたわよ。
ドラゴンが本気を出せば、本当に怖いというもの。回収するために躍起になっているファブニールの目は、とにかく血走っていて怖かった。
というか、本当に私たちだけでやるつもりなのかしらね。
いろいろと思うところはあるのだけど、私には今のファブニールを止めるだけの自信はどこにもない、微塵もない。
仕方ないので、私は一つ目の、最も早い時期に起きる財宝イベントについて話をすることにした。
ところがどっこい。それを聞いたファブニールは驚愕の表情を浮かべている。一体どうしたというのかしら。
「なぜおまえは、俺の秘蔵の隠し場所を知っているのだ」
「へ?」
私がゲーム本編中に最も早く遭遇する財宝関連のイベントについて話すと、ファブニールから質問をされてしまう。
どうやらそのイベントで訪れる場所は、ファブニールの宝の隠し場所だったらしい。
なんてこったい。




