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フィストニーナ拳闘記~君と殴り合う乙女ゲーム  作者: 未羊


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Round18 魔法の授業

 翌日、私の家に怪しい男がやってきた。いわずもがな、ファブニールである。

 あのドラゴン、王都に表から堂々と入り込んできて、私の魔法の先生になるとか言って我が家に乗り込んできたのだ。

 そして、困ったことにお母様はその口車に乗せられてあっさりと承諾してしまう。お父様もお父様で、私に魔法の才があると聞いて喜んで、身辺調査もなしにお母様に言われるがままに同じように受け入れてしまった。ちょっとぉっ?!

 あっさり私の家に入り込んだファブニールは、私を見て満足そうにほくそ笑んでいた。ああ、ぶん殴ってやりたい。


 私に魔法を教えることが正式に決まると、早速私の部屋で授業を始めることになった。もちろん、サクルたち使用人たちも遠ざけて。


「さて、二人っきりになったな」


 いきなり問題発言からか。うん、殴りたい。

 っと、いけない。すっかり拳の世界に染まりかけているわね。


「追い返していいかしら」


「それは困るな。ようやく興味深いやつを見つけたというのにな」


 私が不機嫌な表情を向けると、ファブニールは笑っている。いけないわね、ものすごくキレそう。


「そんな目で見るな。戦いなら歓迎だが、今の状態でお前が勝つのは不可能だぞ。この間は油断したとはいえ、お前はまだ八歳の小娘なのだからな」


「ぐっ……」


 痛いところをついてくる。

 実際、この間の攻撃はほとんど効いていない。その日の夜に現れたファブニールはピンピンとしていたからね。


「それに、あの時の風魔法はお前の実力じゃない。お前が大事に持っているグリフォンの羽が、お前の想いに呼応して力を貸したのだ。あいつの羽の力が発動すること自体が稀なのでな。風魔法を発動させたことと、思ったより威力があったことで、俺は驚いてあの時は撤退したのだ」


 なるほどねぇ。

 というか、グリフォンの羽にそのような力があるとは驚きだわ。


「とにかく、魔法というものを教えていくからな。学園とやらに通う頃には、お前は最強の令嬢になっているだろう」


「それはどうも。それはそうと、この世界って魔法の年齢制限とかないのかしら」


 ファブニールがかなり気合いを入れているようだけど、最強の令嬢とやらには興味がないので、私はさらりと聞き流しておく。その一方で、気になることがあるのでまずは質問をしてみる。


「年齢制限はない。その気になれば、赤子の時から魔法を使うことは可能だ。ただし、体ができ上がっていない状況で魔法を使いすぎるのはよくないとは言われているな」


「それはどうしてかしら」


「幼い頃は、魔法を扱うための体の状態ができ上がっていないから、魔法を使いきった後の回復がとにかく遅い。ゆえに、体の成長を遅らせるといわれている。いわば栄養失調のような状態に陥るわけだ」


 ファブニールはやたらと詳しく教えてくれる。意外とこういうことに対して知識があるようだ。

 にしても、低身長に貧乳という言葉を聞くと、ちょっと興味がわくわね。とはいえ、愛でるのはいいけれど、自分がそうなるのはちょっと嫌だわね。

 とはいえ、拳がものをいうこの世界において、体格が貧弱なのは致命的といえる。魔法が使えるようになってもほどほどにしておこうと、私はひそかに誓った。

 魔法には属性というものがあるというのは、定番の話。

 ただ、ここでの属性はちょっと特殊な感じだ。

 基本的に属性はよっつ。よく聞く光と闇の属性は存在しない。地水火風の四属性と、その中央に位置する無属性の全部で五つだ。無属性は属性に割り振られないこともあるので、基本はよっつというわけ。

 地の向かい側に火、風の向かい側に水の属性があり、その交点が無属性。隣り合う属性は時計回りの相手に強く、向かい合う属性は影響しあわないという相関図になっている。どういうことかというと、火属性は左隣の風属性に対して強く、右隣の水属性に弱く、向かい側の土属性とは互角ということ。

 こうやって改めて聞いていると、『Grip Fist Graffiti』の属性はかなり特殊だわね。ゲームで遊んでいる間はふーんって感じだったけど。

 ちなみに無属性は、使用者の精神状態を受けて、いい方向にも悪い方向にも作用するという感じなんだとか。そこはゲーム中では語られなかったことね。

 言ってしまえば、いい方に作用すれば光、悪い方向に作用すれば闇ということよ。方向性の違いなので、双方がぶつかれば打ち消し合うらしいわ。

 ファブニールが時折自慢話を織り込んでくるせいで時々イラつくけれど、授業自体はかなりためになる。将来没落しないためにも、こういう特性はしっかり頭に叩き込んでおかないとね。戦いとなると、とっさの判断がそのまま勝敗につながるもの。

 そんなこんなでファブニールによる魔法の授業は、少々気に入らないところはあるけれど、総じては興味を持って取り組むことができた。

 勉強が始まって一週間が経過した日のこと、私はいよいよ魔法を実際に使ってみることになった。

 この世界に転生してから、いよいよ初めての魔法だ。

 食事を終えた私は、わくわくとした気持ちで今日の授業が行われる家の中庭にやってくる。

 さぁ、モブヒロインの魔法の実力はどんなものなのかしらね。

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