↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フィストニーナ拳闘記~君と殴り合う乙女ゲーム  作者: 未羊


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/57

Round12 天国から地獄

 歓迎の晩さん会。私はファラン様とバトリシア様の二人と向かい合うようにして座っている。

 辺境伯家と男爵家ではあるものの、思ったよりは位置関係が近い。


「ファラン・ゲーティスです」


「バトリシア・ゲーティスです」


 晩さん会を始めるにあたって、ようやくお二人から自己紹介をしてもらえた。うん、ゲーム本編の時間と比べても五年も若いとはいえ、子どもなのにものすごく淡々としていて、いろいろとイメージが違いすぎる。


 バトリシア様は本編においても結構熱い方。髪の長さは今は長いし、たれ目なのね。本編中はショートヘアでつり目だから、もう別人レベルだわ。

 ファラン様の攻略ルートでは、最後の壁として立ちはだかる。お兄様を狙うのなら、私を倒してからにしなさいという展開ね。

 二人とも防御に秀でた方で、初手で自身に防御バフの魔法を使うのが特徴。被ダメ半減はかなり大きい。

 ボクシス王国において防衛の要といわれるゲーティス辺境伯家らしい能力だと思う。攻撃力はあんまり高くないけれど、そういうことから長期戦化しやすかったために、かなり記憶に残っている。

 私は劇中の言動からも、このファラン様を推しとしていた。キャラが実装されるたびに必ず最初に攻略したくらいだもの。当然だけど、バトリシア様のシナリオだと特殊な扱いになったわね。兄妹だから。


 さて、晩さん会に話を戻しましょう。

 最初の間は、普通に食事をしながらいろいろと語らいをしていた。

 だけど、最後の方で話がなんだかおかしな雰囲気を帯びだした。


「バイタラル男爵夫人、本当にご参加なされるのですか?」


「はい、これはフィストニーナが自ら望んだこと。私には止める権限はありません」


 うん、何の話だろう。てか、私が望んだって何のこと?

 話が見えてこない。


「分かりました」


 ゲーティス辺境伯様が私の方へと顔を向けてくる。

 私はぴたりと動きを止めて、小さく頭を下げる。


「フィストニーナ男爵令嬢よ。此度はよく来てくれたね。うちのバトリシアは、我が家の環境のせいで同世代との付き合いがなくてね。ちょっと無愛想かもしれないけれど、一緒に遊んでやって欲しい」


「は、はい。もちろんでございます」


 辺境伯様の言葉に、私はすかさず反応している。


「それと、フィストニーナ嬢は強くなりたいということらしいね」


「えっ?」


 続けての発言に、私はちょっと固まってしまう。いや、強くなりたいとは言ってないんだけどなぁ。将来のために対人の戦闘経験を持っておいた方がいいと思っただけなんだけど。

 まあ、発言を遮るわけにはいかないので、あんまり騒がないようにしましょう。

 というわけで、私は黙っておく。


「いやはや、我が家との合同訓練に参加してくれるとは、バイタラル男爵家は安泰かもしれませんな」


「はい、まったくうちの娘の向上心には感動いたします」


 あー、そういうことかぁ。

 いや、この流れは見学じゃなくて、訓練に混ざる流れっぽいんだけど?

 私はおそるおそるお母様の方へと視線を向ける。お母様は優しい笑顔を浮かべて、小さく首を縦に振っている。

 その瞬間に私は確信した。バイタラル男爵家がゲーティス辺境伯家に赴いて受ける訓練に、私も参加するんだということを。

 嫌な予感しかしないけれど、拳と魔法の世界ならば避けて通る方が難しいわよね。

 しばらく私はあちこちに視線を泳がせた後、結論を出した。


「そ、そうですね。後学のためにぜひとも参加させていただきたく存じます」


「うむ、いい心意気だ。我が家のものではないし、まだ子どもなので少し加減はさせてもらうが、いいかね」


「は、はい。お心遣い、感謝致します」


 とりあえず、当たり障りのないあたりで返事をしておく。

 いくらなんでも、よその家の子どもにそこまでのことはしないだろうという、ちょっとした甘い考えがあったのは事実。

 でもね、この時の返事を私は後悔することになるのよ。

 この時に、バトリシア様が顔を明るくしたこともあってか、余計に勘違いしたのは間違いない。

 私は晩さん会のおいしい食事を、それは嬉しそうな顔を浮かべながら堪能していた。


 そして、迎えた翌日。

 まだ辺りは真っ暗だ。


 ドンドンドンッ!


 部屋の扉がものすごい勢いで叩かれている。

 こんな大きな音を立てられては、私だって起きないわけにはいかない。寝ぼけた状態のまま体を起こす。


「はーい……」


 眠い顔を擦りながら、私は部屋の扉へと歩いていく。

 扉を開けると、そこにはこんな朝から鎧に身を包んだ女性が立っていた。


「おはようございます。これより訓練を開始いたしますので、すぐさまお着替えになって下さい」


「……え?」


「お聞こえになりませんでしたでしょうか。訓練を始めます」


 聞き間違いじゃなかった。どうやらまだ暗いうちから訓練を始めるらしい。

 戸惑う私の前に、お母様が姿を見せる。


「ニーナ、何をしているのですか。早く支度をしなさい」


「……分かりました。すぐに準備をします」


 お母様にも強く言われたので、私は仕方なく服を着替えることにする。さすがに寝間着で外には出られない。

 こうして、到着翌日から、超早起きという辺境伯家の洗礼を受けることになった私。

 一体、どうなってしまうというのかしらね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。