理解されないものは、怪物になる
噂が広がるのは、早かった。
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次の日には。
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もう。
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学院中が知っていた。
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「見た?昨日の」
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「ミナ・アッシュだろ」
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「やばかったって」
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廊下。
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食堂。
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訓練場。
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全部。
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どこに行っても。
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私の話。
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でも。
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前とは違う。
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“無能”じゃない。
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“危険”。
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評価が変わった。
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ただ、それだけ。
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「……」
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別に。
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どうでもよかった。
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席に座る。
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静か。
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前みたいに避けられてはいる。
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でも。
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空気が違う。
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今は。
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恐れている。
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理解できないものを見る目。
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それが、一番近い。
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「ミナ」
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声。
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教師。
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「放課後、第一訓練室へ来い」
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短い。
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拒否権もない言い方。
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「……了解」
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頷く。
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周りがざわつく。
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第一訓練室。
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学院で一番広い場所。
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実戦用。
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つまり。
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まともな話じゃない。
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放課後。
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訓練室の扉を開ける。
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広い。
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静か。
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そして。
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人がいる。
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三人。
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教師じゃない。
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大人。
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黒い制服。
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学院の人間じゃない。
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「……誰」
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自然に口から出る。
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「中央管理局」
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一人が答える。
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女。
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短い銀髪。
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目だけが冷たい。
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「危険能力監査部門」
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長い名前だな。
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最初の感想が、それだった。
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「ミナ・アッシュ」
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名前を呼ばれる。
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「君の能力について、確認を行う」
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「拒否したら」
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「拘束対象になる」
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即答。
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迷いなし。
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なるほど。
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そういう世界か。
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「……別にいいですけど」
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本当に。
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別に。
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困らない。
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逃げる理由もない。
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「では始める」
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一人が前に出る。
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男。
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背が高い。
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魔力が、重い。
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学院の教師より強い。
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たぶん。
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かなり。
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「防御は自由。こちらも本気で行う」
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その瞬間。
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空気が変わる。
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重圧。
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押し潰すみたいな魔力。
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普通なら。
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立ってるだけで無理だ。
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でも。
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私は思う。
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“雑”。
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力が大きいだけ。
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流れが粗い。
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隙間だらけ。
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「行くぞ」
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速い。
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一瞬で距離を詰める。
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拳。
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魔力を纏った打撃。
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普通なら見えない。
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でも。
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見える。
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遅いから。
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私は動かない。
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その場で。
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ただ。
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“合わせる”。
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男の動きに。
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じゃない。
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世界そのものを。
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私に。
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その瞬間。
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男の拳が。
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止まる。
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「——なっ」
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完全停止。
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空中で。
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不自然に。
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ありえない形で。
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空気ごと固定されたみたいに。
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静止する。
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私は。
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少し考える。
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ああ。
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これ。
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簡単すぎる。
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「離れろ!」
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別の監査官が叫ぶ。
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同時に。
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魔法陣展開。
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高速。
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かなり優秀。
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でも。
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遅い。
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私は視線を向ける。
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それだけ。
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魔法陣が崩れる。
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接続が噛み合わなくなる。
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順序が乱れる。
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成立しない。
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「っ……!」
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監査官の顔色が変わる。
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理解した顔。
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“これはまずい”って。
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その瞬間。
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少しだけ。
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懐かしい感覚がした。
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前まで。
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私も、同じ顔をしていたから。
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「能力名を確認」
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銀髪の女が言う。
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冷静に。
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でも。
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声が硬い。
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「……不明」
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答える。
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本当に。
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まだ名前はない。
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「系統は」
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「分からない」
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「発動条件」
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「合わせるだけ」
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沈黙。
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その場が止まる。
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監査官たちの顔が変わる。
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その言葉の意味を。
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理解したから。
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「……認識干渉型か」
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銀髪の女が呟く。
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「いや、違う」
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別の監査官。
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「空間制御……いや」
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「時間?」
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「違う、同期だ」
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議論が始まる。
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でも。
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誰も断定できない。
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分類できない。
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つまり。
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未知。
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その瞬間。
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空気が変わる。
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明確に。
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警戒へ。
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私は、少しだけ理解する。
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ああ。
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そうか。
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この世界。
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“分からないもの”を。
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怪物って呼ぶんだ。
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「ミナ・アッシュ」
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銀髪の女が言う。
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「君は今後、監視対象となる」
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やっぱり。
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そうなる。
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「行動制限も入る。許可なく学院外への移動は禁止」
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淡々と。
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事務的に。
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でも。
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その実態は。
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ほぼ拘束だった。
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「……別にいいです」
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答える。
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本当に。
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どうでもいい。
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その時。
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訓練室の入口が開く。
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視線が向く。
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立っていたのは。
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ユナだった。
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「……ミナ」
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顔が青い。
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たぶん。
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ここに来る途中で。
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話を聞いた。
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監視。
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危険指定。
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そういう単語を。
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「入るな」
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監査官が止める。
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でも。
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ユナは止まらない。
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少し震えながら。
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それでも。
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こっちへ来る。
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「大丈夫だから」
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私は言う。
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自然に。
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前みたいに。
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壊さないように。
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怖がらせないように。
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でも。
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ユナは、少しだけ泣きそうな顔で笑った。
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「……それ、全然大丈夫な顔じゃないよ」
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その一言だけ。
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なぜか。
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少しだけ。
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胸に残った。




