↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ
第1部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
9/47

理解されないものは、怪物になる

 噂が広がるのは、早かった。


⸻


 次の日には。


⸻


 もう。


⸻


 学院中が知っていた。


⸻


「見た?昨日の」


⸻


「ミナ・アッシュだろ」


⸻


「やばかったって」


⸻


 廊下。


⸻


 食堂。


⸻


 訓練場。


⸻


 全部。


⸻


 どこに行っても。


⸻


 私の話。


⸻


 でも。


⸻


 前とは違う。


⸻


 “無能”じゃない。


⸻


 “危険”。


⸻


 評価が変わった。


⸻


 ただ、それだけ。


⸻


「……」


⸻


 別に。


⸻


 どうでもよかった。


⸻


 席に座る。


⸻


 静か。


⸻


 前みたいに避けられてはいる。


⸻


 でも。


⸻


 空気が違う。


⸻


 今は。


⸻


 恐れている。


⸻


 理解できないものを見る目。


⸻


 それが、一番近い。


⸻


「ミナ」


⸻


 声。


⸻


 教師。


⸻


「放課後、第一訓練室へ来い」


⸻


 短い。


⸻


 拒否権もない言い方。


⸻


「……了解」


⸻


 頷く。


⸻


 周りがざわつく。


⸻


 第一訓練室。


⸻


 学院で一番広い場所。


⸻


 実戦用。


⸻


 つまり。


⸻


 まともな話じゃない。


⸻


 放課後。


⸻


 訓練室の扉を開ける。


⸻


 広い。


⸻


 静か。


⸻


 そして。


⸻


 人がいる。


⸻


 三人。


⸻


 教師じゃない。


⸻


 大人。


⸻


 黒い制服。


⸻


 学院の人間じゃない。


⸻


「……誰」


⸻


 自然に口から出る。


⸻


「中央管理局」


⸻


 一人が答える。


⸻


 女。


⸻


 短い銀髪。


⸻


 目だけが冷たい。


⸻


「危険能力監査部門」


⸻


 長い名前だな。


⸻


 最初の感想が、それだった。


⸻


「ミナ・アッシュ」


⸻


 名前を呼ばれる。


⸻


「君の能力について、確認を行う」


⸻


「拒否したら」


⸻


「拘束対象になる」


⸻


 即答。


⸻


 迷いなし。


⸻


 なるほど。


⸻


 そういう世界か。


⸻


「……別にいいですけど」


⸻


 本当に。


⸻


 別に。


⸻


 困らない。


⸻


 逃げる理由もない。


⸻


「では始める」


⸻


 一人が前に出る。


⸻


 男。


⸻


 背が高い。


⸻


 魔力が、重い。


⸻


 学院の教師より強い。


⸻


 たぶん。


⸻


 かなり。


⸻


「防御は自由。こちらも本気で行う」


⸻


 その瞬間。


⸻


 空気が変わる。


⸻


 重圧。


⸻


 押し潰すみたいな魔力。


⸻


 普通なら。


⸻


 立ってるだけで無理だ。


⸻


 でも。


⸻


 私は思う。


⸻


 “雑”。


⸻


 力が大きいだけ。


⸻


 流れが粗い。


⸻


 隙間だらけ。


⸻


「行くぞ」


⸻


 速い。


⸻


 一瞬で距離を詰める。


⸻


 拳。


⸻


 魔力を纏った打撃。


⸻


 普通なら見えない。


⸻


 でも。


⸻


 見える。


⸻


 遅いから。


⸻


 私は動かない。


⸻


 その場で。


⸻


 ただ。


⸻


 “合わせる”。


⸻


 男の動きに。


⸻


 じゃない。


⸻


 世界そのものを。


⸻


 私に。


⸻


 その瞬間。


⸻


 男の拳が。


⸻


 止まる。


⸻


「——なっ」


⸻


 完全停止。


⸻


 空中で。


⸻


 不自然に。


⸻


 ありえない形で。


⸻


 空気ごと固定されたみたいに。


⸻


 静止する。


⸻


 私は。


⸻


 少し考える。


⸻


 ああ。


⸻


 これ。


⸻


 簡単すぎる。


⸻


「離れろ!」


⸻


 別の監査官が叫ぶ。


⸻


 同時に。


⸻


 魔法陣展開。


⸻


 高速。


⸻


 かなり優秀。


⸻


 でも。


⸻


 遅い。


⸻


 私は視線を向ける。


⸻


 それだけ。


⸻


 魔法陣が崩れる。


⸻


 接続が噛み合わなくなる。


⸻


 順序が乱れる。


⸻


 成立しない。


⸻


「っ……!」


⸻


 監査官の顔色が変わる。


⸻


 理解した顔。


⸻


 “これはまずい”って。


⸻


 その瞬間。


⸻


 少しだけ。


⸻


 懐かしい感覚がした。


⸻


 前まで。


⸻


 私も、同じ顔をしていたから。


⸻


「能力名を確認」


⸻


 銀髪の女が言う。


⸻


 冷静に。


⸻


 でも。


⸻


 声が硬い。


⸻


「……不明」


⸻


 答える。


⸻


 本当に。


⸻


 まだ名前はない。


⸻


「系統は」


⸻


「分からない」


⸻


「発動条件」


⸻


「合わせるだけ」


⸻


 沈黙。


⸻


 その場が止まる。


⸻


 監査官たちの顔が変わる。


⸻


 その言葉の意味を。


⸻


 理解したから。


⸻


「……認識干渉型か」


⸻


 銀髪の女が呟く。


⸻


「いや、違う」


⸻


 別の監査官。


⸻


「空間制御……いや」


⸻


「時間?」


⸻


「違う、同期だ」


⸻


 議論が始まる。


⸻


 でも。


⸻


 誰も断定できない。


⸻


 分類できない。


⸻


 つまり。


⸻


 未知。


⸻


 その瞬間。


⸻


 空気が変わる。


⸻


 明確に。


⸻


 警戒へ。


⸻


 私は、少しだけ理解する。


⸻


 ああ。


⸻


 そうか。


⸻


 この世界。


⸻


 “分からないもの”を。


⸻


 怪物って呼ぶんだ。


⸻


「ミナ・アッシュ」


⸻


 銀髪の女が言う。


⸻


「君は今後、監視対象となる」


⸻


 やっぱり。


⸻


 そうなる。


⸻


「行動制限も入る。許可なく学院外への移動は禁止」


⸻


 淡々と。


⸻


 事務的に。


⸻


 でも。


⸻


 その実態は。


⸻


 ほぼ拘束だった。


⸻


「……別にいいです」


⸻


 答える。


⸻


 本当に。


⸻


 どうでもいい。


⸻


 その時。


⸻


 訓練室の入口が開く。


⸻


 視線が向く。


⸻


 立っていたのは。


⸻


 ユナだった。


⸻


「……ミナ」


⸻


 顔が青い。


⸻


 たぶん。


⸻


 ここに来る途中で。


⸻


 話を聞いた。


⸻


 監視。


⸻


 危険指定。


⸻


 そういう単語を。


⸻


「入るな」


⸻


 監査官が止める。


⸻


 でも。


⸻


 ユナは止まらない。


⸻


 少し震えながら。


⸻


 それでも。


⸻


 こっちへ来る。


⸻


「大丈夫だから」


⸻


 私は言う。


⸻


 自然に。


⸻


 前みたいに。


⸻


 壊さないように。


⸻


 怖がらせないように。


⸻


 でも。


⸻


 ユナは、少しだけ泣きそうな顔で笑った。


⸻


「……それ、全然大丈夫な顔じゃないよ」


⸻


 その一言だけ。


⸻


 なぜか。


⸻


 少しだけ。


⸻


 胸に残った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。