表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/11

怪物に名前をつける

 監視対象。



 その言葉は。



 思ったより、重かった。



 翌日には。



 もう全部変わっていた。



 教室の入口。



 黒い制服の監査官が立っている。



 移動にも同行。



 訓練も監視。



 食事ですら。



 一人。



 完全に隔離されているわけじゃない。



 でも。



 “いつでも隔離できる”。



 そんな距離感。



「……はは」



 少しだけ笑う。



 滑稽だった。



 少し前まで。



 誰にも期待されてなかったのに。



 今は。



 怖がられている。



 極端すぎる。



 でも。



 人間なんてそんなものかもしれない。



「ミナ」



 声。



 ユナ。



 教室の後ろ。



 周りを気にしながら。



 でも。



 ちゃんとこっちを見ている。



「その……大丈夫?」



 また同じ言葉。



 でも。



 今度は少し違う。



 怖がっている。



 それでも来ている。



 前より、ちゃんと。



「大丈夫」



 答える。



 短く。



「……嘘」



 即答だった。



 一瞬。



 言葉が止まる。



 ユナは近づいてくる。



 監査官が動く。



「接触は——」



「少しくらいいいでしょ」



 ユナが遮る。



 珍しく強い声。



 監査官が黙る。



 そのまま。



 ユナが私の前に立つ。



 少しだけ震えてる。



 でも。



 逃げない。



「ミナさ」



 小さく息を吸う。



「最近、全然笑わない」



 その言葉で。



 少しだけ。



 頭が止まる。



「……前からこんな感じだろ」



「違う」



 即答。



「前はもっと、ちゃんと傷ついてた」



 意味が分からなかった。



 傷つく?



 今も傷ついてる。



 たぶん。



 でも。



 ユナは首を振る。



「今のミナってさ」



 少し迷って。



 それでも言う。



「なんか、“諦めた後”みたい」



 その瞬間。



 少しだけ。



 胸がざわつく。



 嫌な感じ。



 見透かされたみたいで。



「……別に」



 視線を逸らす。



 でも。



 ユナは逸らさない。



「怖いんだよ」



 小さく言う。



「最近のミナ」



 正直だった。



 だから。



 刺さる。



「でも」



 続ける。



「それ以上に、消えそうで怖い」



 静かだった。



 教室も。



 周りも。



 全部。



 音が遠い。



 その時。



 監査官が前に出る。



「接触時間終了だ」



 事務的な声。



 冷たい。



 ユナが舌打ちする。



 珍しい。



「……行くね」



 最後に。



 少しだけ笑う。



 無理やりみたいな笑顔。



「また来るから」



 そう言って。



 離れていく。



 私は。



 何も返せなかった。



 夜。



 一人。



 寮の部屋。



 静か。



 最近はもう。



 静かなのが普通になっていた。



 机に紙が置かれている。



 監査報告書。



 勝手に置かれたもの。



 開く。



 文字が並んでいる。



『危険度:測定不能』



『能力分類:未定義』



『精神状態:自己希薄化傾向あり』



『総合判断』



 少しだけ間が空いて。



 最後の一文。



『対象は極めて危険』



「……」



 少しだけ考える。



 危険。



 怪物。



 監視対象。



 色んな名前がついた。



 でも。



 どれも、違う気がした。



 私は。



 そんな大層なものじゃない。



 ただ。



 少し。



 世界と合ってないだけ。



 それだけだ。



 その時。



 視界の端。



 報告書の下。



 小さくメモがあった。



 たぶん。



 誰かが個人的に書いたもの。



『——怪物には見えなかった』



 一瞬。



 呼吸が止まる。



 誰が書いたのかは分からない。



 でも。



 その一文だけ。



 なぜか。



 ずっと頭に残った。



 怪物。



 そうかもしれない。



 でも。



 もし違うなら。



 私は。



 なんなんだ。



 初めて。



 少しだけ。



 分からなくなった。



 自分のことが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ