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灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ


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7/10

ズレていたのは、世界の方だ

 静かだった。



 音が、ない。



 正確には。



 “合っていない”。



 全部が。



 少しずつ。



 噛み合っていない。



 それが。



 普通だった。



 今までは。



「……やめるか」



 呟く。



 もう一度、自分を壊すのを。



 やめる。



 理由は、ない。



 ただ。



 さっきの感覚が、残っている。



 あの一瞬。



 “揃った”感覚。



 あれが。



 離れない。



 手を見る。



 震えは、止まっている。



 代わりに。



 違う感覚がある。



 静かで。



 深い。



 底の見えないもの。



「……合わせない」



 言う。



 小さく。



 でも。



 はっきりと。



 今までと逆。



 世界に合わせない。



 自分を。



 曲げない。



 その瞬間。



 何かが、切り替わる。



 音が。



 戻る。



 いや。



 初めて、合う。



 足音。



 風。



 遠くの声。



 全部が。



 遅れない。



 先走らない。



 ただ。



 正しい位置にある。



「……は」



 笑う。



 少しだけ。



 自然に。



 初めて。



 力を使う。



 意識して。



 でも。



 無理にじゃない。



 ただ。



 “そうするだけ”。



 指を、軽く動かす。



 それだけで。



 空間が、揃う。



 歪みが。



 消える。



 いや。



 “従う”。



 私に。



「なるほど」



 理解する。



 一瞬で。



 今までの全部が、繋がる。



 ズレていたのは。



 失敗じゃない。



 暴走でもない。



 ただ。



 基準が違っただけ。



 世界と。



 私の。



 だから。



 合わせれば壊れる。



 当然だ。



 合ってないんだから。



 でも。



 合わせないなら。



 話は別だ。



「……簡単じゃん」



 呟く。



 乾いた声で。



 今までの苦労が。



 少しだけ、馬鹿みたいに思える。



 外に出る。



 廊下。



 人がいる。



 変わらない景色。



 でも。



 違って見える。



 全部。



 “遅い”。



 いや。



 違う。



 “揃っている”。



 私に。



 誰かとぶつかりそうになる。



 反射的に。



 動く。



 軽く。



 それだけで。



 完全に避ける。



 無駄がない。



 迷いもない。



 最短。



 最適。



「……え?」



 相手が驚く。



 当然だ。



 でも。



 どうでもいい。



 関係ない。



 訓練場。



 人がいる。



 戦っている。



 魔法が飛ぶ。



 ぶつかる。



 音が鳴る。



 全部。



 見える。



 正確に。



 ズレなく。



「……なるほど」



 もう一度、言う。



 今度は。



 少しだけ納得して。



 足を踏み出す。



 一歩。



 それだけで。



 空気が変わる。



 近くにいた数人が、振り向く。



 理由は分からないはずだ。



 でも。



 分かる。



 “何かがおかしい”って。



 その中に。



 ユナがいる。



 目が合う。



 一瞬だけ。



 時間が止まる。



 いや。



 “揃う”。



「……ミナ?」



 名前を呼ばれる。



 久しぶりに。



 その声で。



 少しだけ。



 懐かしいと思う。



 でも。



 それだけだ。



「……」



 答えない。



 必要がないから。



 近づく。



 ゆっくり。



 逃げ場を与えない距離で。



 でも。



 圧はかけない。



 ただ。



 そこにいるだけ。



「……大丈夫なの?」



 ユナが聞く。



 前と同じ言葉。



 でも。



 意味は違う。



 今は。



 少しだけ。



 怖がっている。



 その違いが、分かる。



「大丈夫」



 答える。



 短く。



 でも。



 今度は、本当だ。



 嘘じゃない。



 そのまま。



 横を通り過ぎる。



 触れない。



 何も起きない。



 壊れない。



 当然だ。



 もう。



 ズレてないから。



 後ろで。



 小さく息を呑む音がする。



 気にしない。



 振り返らない。



 もう。



 必要ないから。



 私は。



 理解した。



 やっと。



 全部。



 繋がった。



 だから。



 もう。



 折れない。



 その代わり。



 もう。



 戻らない。

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