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灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ


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自分で壊した方が、楽だった

 呼び出しは、簡単だった。



 名前を呼ばれて。



 行くだけ。



 それだけ。



 重くもない。



 軽くもない。



 ただの流れ。



 教師の部屋。



 入る。



「座れ」



 言われる。



 座る。



 向かい合う。



 距離は、近い。



 でも。



 遠い。



「結論から言う」



 教師が言う。



 いつも通りの声で。



 何も変わらない声で。



「お前は当面、実技から外す」



 予想通り。



 驚きはない。



「理由は分かるな」



「はい」



 短く答える。



 説明する必要もない。



 分かりきっている。



「制御不能の能力。再発の可能性が高い」



 淡々と。



 事実だけ。



「以上だ」



 終わり。



 短い。



 あっさり。



 それでいい。



 それくらいでいい。



「……一つ、聞いていいですか」



 口が動く。



 考える前に。



「なんだ」



「もし、私がいなくなったら」



 少しだけ間が空く。



 でも。



 言い切る。



「困りますか」



 沈黙。



 一瞬だけ。



 本当に一瞬だけ。



 教師の目が止まる。



 それから。



「……困らない」



 答え。



 迷いなし。



 正確で。



 正直で。



 必要十分な答え。



「そうですか」



 頷く。



 それでいい。



 それで。



 全部、終わった気がした。



 部屋を出る。



 廊下。



 人がいる。



 でも。



 関係ない。



 誰とも。



 関係ない。



 視線はある。



 でも、意味はない。



 もう。



 何も。



 刺さらない。



 部屋に戻る。



 一人。



 静か。



 座る。



 何もせずに。



 時間が過ぎる。



 何もしない時間。



 それが。



 一番、楽だった。



 考えなくていいから。



 関わらなくていいから。



 壊さなくていいから。



 手を見る。



 この手。



 これが全部。



 原因。



 理由。



 結果。



「……いらない」



 呟く。



 小さく。



 でも。



 はっきりと。



 この力が。



 このズレが。



 この存在が。



 全部。



 いらない。



 なら。



 消せばいい。



 簡単な話だ。



 使わなければいい。



 考えなければいい。



 動かなければいい。



 関わらなければいい。



 それで。



 全部、終わる。



 そう思った。



 思ってしまった。



 だから。



 私は。



 試す。



 自分で。



 意図的に。



 あの感覚を。



 呼び出す。



 ズレ。



 時間の歪み。



 順番の崩壊。



 それを。



 自分に向ける。



「……っ」



 来る。



 確実に。



 今までより、強く。



 深く。



 逃げない。



 止めない。



 むしろ。



 引き込む。



 全部。



 自分の中に。



 ねじ込む。



 痛み。



 遅れて。



 同時に。



 何重にも。



 体が、ついてこない。



 思考が、分裂する。



 でも。



 やめない。



 やめたら。



 また同じだから。



 また壊すから。



 なら。



 ここで壊れる方がいい。



 自分だけで。



 終わるなら。



 それが一番いい。



「……は、はは」



 笑う。



 少しだけ。



 壊れた音で。



 ようやく分かる。



 これが。



 一番、楽だ。



 誰も巻き込まない。



 誰も壊さない。



 自分だけ。



 壊れるだけ。



 それでいい。



 それがいい。



 その時。



 ふと。



 思う。



「……なんで」



 言葉が漏れる。



 自然に。



「なんで、合わせてるんだ」



 誰に。



 何に。



 分からない。



 でも。



 はっきりと。



 違和感がある。



 今までの全部に。



 ズレてるのは。



 力じゃない。



 世界でもない。



 私が。



 “世界に合わせようとしているから”ズレる。



 なら。



 逆なら。



 どうなる。



 合わせるのを。



 やめたら。



 その瞬間。



 感覚が、変わる。



 ズレが。



 止まる。



 いや。



 違う。



 “揃う”。



 初めて。



 噛み合う。



 自分と。



 何かが。



「……あ」



 息が止まる。



 でも。



 まだ。



 そこで止める。



 完全には、踏み込まない。



 まだ。



 その資格がない気がした。



 まだ。



 折れきっていない気がした。



 だから。



 私は。



 もう一度。



 自分を壊す方を選ぶ。



 楽だから。



 そっちの方が。

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