触れなければよかった
昼。
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訓練場の外れ。
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人の少ない場所。
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最初から、そこにいた。
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混ざれないから。
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混ざらない方がいいから。
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それが正しいと、分かっているから。
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でも。
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「ミナー!」
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呼ばれる。
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振り返る前に分かる。
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ユナ。
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あの声。
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あの軽さ。
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あの、変わらない感じ。
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「何してんの、こんなとこで」
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近づいてくる。
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ためらいなく。
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距離を詰めてくる。
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「……見てるだけ」
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「そんなんつまんなくない?」
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即答だった。
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迷いもなく。
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「関わるなって言われてるだろ」
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「言われてるねー」
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「じゃあ来るなよ」
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「でも来た」
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笑う。
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何も考えてないみたいに。
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でも。
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少しだけ。
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強引に明るくしてる感じがあった。
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「……エリス、大丈夫なの」
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聞く。
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避けてた話。
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避けられなかった話。
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ユナの表情が、ほんの一瞬だけ止まる。
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「……うん、生きてるよ」
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軽く言う。
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軽く。
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でも。
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その“軽さ”が、重かった。
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「しばらくは動けないって」
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続ける。
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視線を逸らしたまま。
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それ以上は言わない。
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言えない。
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その沈黙が、全部だった。
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「……そっか」
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それしか言えない。
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それ以上は、言えない。
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「ねえミナ」
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ユナが言う。
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少しだけ、声を落として。
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「ちょっとだけでいいからさ」
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間。
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「試してみない?」
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「……は?」
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意味が分からない。
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「その力」
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指をさす。
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私の手。
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「ちゃんと向き合った方がいいって」
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真面目な顔。
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珍しく。
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軽くない。
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「制御できたらさ、絶対強いよ」
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言い切る。
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迷いなく。
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「……無理だろ」
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「無理かどうかはやってから決めよ?」
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近い。
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距離が。
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物理的に。
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あと一歩で触れる距離。
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ダメだ。
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それは。
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分かってる。
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触れたら。
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また。
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壊す。
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分かってるのに。
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「……少しだけ」
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口が、勝手に動いた。
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止められなかった。
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関わりたかった。
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ほんの少しだけ。
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まだ。
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大丈夫かもしれないって。
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思ってしまった。
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それが。
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間違いだった。
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「じゃあ来るよー」
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ユナが、軽く構える。
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攻撃じゃない。
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ただの水の流れ。
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弱い。
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明らかに。
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試すためだけの動き。
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それを見て。
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私は。
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集中する。
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初めて。
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ちゃんと。
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逃げじゃなくて。
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“使うために”。
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ズレを、意識する。
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来る。
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タイミングを読む。
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遅らせる。
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順番を、ずらす。
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できる。
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いける。
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そう思った瞬間。
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崩れた。
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全部。
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感覚が、裏返る。
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遅らせたはずのものが、先に来る。
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自分の動きが、後から来る。
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時間が、噛み合わない。
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「ミナ——」
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ユナの声。
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その位置が、ズレる。
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近い。
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遠い。
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分からない。
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そして。
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手が触れる。
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ほんの一瞬。
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ユナの腕に。
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その瞬間。
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全部が引きずられる。
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時間も。
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位置も。
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順番も。
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無理やり。
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ねじ曲げられる。
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「——っ!!」
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音が、二重になる。
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遅れて。
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先に。
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同時に。
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ユナの体が、弾かれる。
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本来ありえない角度で。
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本来ありえない速さで。
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地面に叩きつけられる。
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「……え」
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理解が追いつかない。
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でも。
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分かる。
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やった。
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私が。
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また。
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「ミナ……」
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声。
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かすれている。
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でも。
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生きてる。
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動いてる。
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よかった。
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そう思った瞬間。
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次の言葉が来る。
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「……ごめん」
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ユナが言う。
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私に向かって。
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「ちょっとだけ……今は……怖い」
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その一言で。
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全部、終わった。
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責めてない。
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怒ってない。
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でも。
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拒絶してる。
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はっきりと。
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優しく。
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確実に。
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距離を置いている。
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「……あ」
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声が出る。
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でも。
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何も続かない。
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何も言えない。
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だって。
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正しいから。
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全部。
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正しい。
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私が悪い。
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私が壊した。
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私が触れた。
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だから。
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当然だ。
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「……もう」
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口が動く。
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勝手に。
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でも。
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止めない。
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止められない。
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これが。
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一番、正しいから。
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「……もう、関わらないで」
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言った。
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自分から。
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はっきりと。
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切るために。
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壊さないために。
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もう。
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これ以上。
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誰も。
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巻き込まないために。
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ユナが、何か言おうとする。
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でも。
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言わない。
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言えない。
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そのまま。
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視線を逸らす。
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それで。
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終わりだった。
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夜。
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一人。
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完全に。
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一人。
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もう誰も来ない。
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来させない。
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手を見る。
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震えが止まらない。
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でも。
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もう分かっている。
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これは。
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力じゃない。
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呪いだ。
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関われば壊す。
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触れれば終わる。
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そんなもの。
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いらない。
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いない方がいい。
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だから。
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私は。
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ここで。
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完全に折れた。
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戻らない形で。




