世界が恐れるもの
目が開く。
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それだけだった。
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たったそれだけ。
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なのに。
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世界が震えた。
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学院の空気が凍る。
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空が悲鳴を上げる。
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巨大な扉が軋む。
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白い世界そのものが揺れていた。
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『停止』
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観測者たちが叫ぶ。
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『停止』
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『停止』
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『停止』
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初めてだった。
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あの無機質な存在たちが。
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恐怖している。
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本気で。
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怯えている。
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「……何だ」
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私が呟く。
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誰も答えない。
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いや。
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答えられない。
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そんな顔だった。
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エイルですら。
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黒髪の存在ですら。
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顔色を変えている。
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そして。
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巨大な扉の奥。
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白い光の中心。
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何かが立ち上がった。
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人の形。
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でも。
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人じゃない。
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老人にも見える。
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子供にも見える。
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男にも。
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女にも。
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見える。
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見るたびに姿が変わる。
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存在そのものが曖昧だった。
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『観測不能』
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白い少女が震える。
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『認識不能』
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『記録不能』
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その存在が。
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ゆっくりこちらを見る。
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瞬間。
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学院全員の脳裏に。
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同じ感覚が走った。
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懐かしい。
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知らないのに。
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懐かしい。
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初めて見るのに。
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ずっと前から知っていた気がする。
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『……また』
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声が響く。
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静かな声。
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優しい声。
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そして。
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どうしようもなく疲れた声。
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『争っているのか』
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静寂。
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観測者たちが動けなくなる。
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巨大な扉ですら。
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沈黙する。
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その存在は。
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小さくため息をついた。
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『何度繰り返す』
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誰に向けた言葉なのか。
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分からない。
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でも。
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観測者たちは震えていた。
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『始まりも』
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『終わりも』
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『お前たちは忘れたのか』
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白い世界が揺れる。
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エイルが唇を噛む。
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苦しそうに。
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悲しそうに。
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その時。
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その存在の視線が。
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私で止まった。
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長い沈黙。
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そして。
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少しだけ笑った。
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『大きくなったな』
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「……え?」
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理解できない。
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だって。
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初対面だ。
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なのに。
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その声を聞いた瞬間。
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涙が出そうになった。
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『ずっと』
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静かな声。
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『頑張ったな』
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心臓が跳ねる。
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何だ。
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この感覚。
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その時。
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頭の奥。
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封じられていた最後の記憶が。
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ゆっくり開く。
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白い部屋。
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処分室。
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泣いているエイル。
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消される直前の私。
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そして。
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もう一人。
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そこにいた。
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誰よりも古い存在。
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優しく笑う存在。
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『この子は失敗作じゃない』
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その声。
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今。
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目の前にいる存在と同じ。
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『まだ可能性だ』
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観測者たちが反論する。
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『危険です』
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『世界を壊します』
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『定着しません』
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でも。
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その存在は笑った。
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『ならば見届けよう』
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『それが世界だ』
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記憶が終わる。
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私は息を呑む。
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そして。
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理解する。
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目の前の存在は。
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観測者ではない。
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管理者でもない。
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もっと前。
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もっと古い。
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世界が生まれる前からいた何か。
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その存在が。
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ゆっくり観測者たちを見る。
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『答えを聞こう』
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静かな声。
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『この子は間違いだったか』
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誰も答えない。
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観測者たちは沈黙する。
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エイルも。
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黒髪の存在も。
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私も。
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みんな黙っている。
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すると。
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ユナが前へ出た。
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「いや」
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全員が振り向く。
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ユナは少し考えて。
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そして言った。
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「結構面倒だけど」
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おい。
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「いると楽しい」
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学院が静まる。
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ルナが吹き出した。
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「それでいいの?」
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「いいだろ」
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ノアも小さく頷く。
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「私もそう思う」
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監査官は頭を抱えた。
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「評価基準が軽すぎる……」
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でも。
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その存在は。
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楽しそうに笑った。
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本当に。
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嬉しそうに。
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『そうか』
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そして。
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観測者たちへ振り返る。
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笑顔のまま。
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『聞こえただろう』
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その瞬間。
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白い世界全体が沈黙した。
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何かが。
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大きく変わろうとしていた。




