↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ
第3部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/47

約束の続き

 世界が止まる。


⸻


 誰も動かない。


⸻


 誰も喋らない。


⸻


 巨大な扉。


⸻


 白い世界。


⸻


 無数の観測者。


⸻


 全部が。


⸻


 遠くなる。


⸻


 私の目には。


⸻


 その少女しか映らなかった。


⸻


 銀色の髪。


⸻


 白い服。


⸻


 少し泣きそうな顔。


⸻


 でも。


⸻


 笑っている。


⸻


 あの日と同じ。


⸻


『生きていてくれた』


⸻


 その言葉。


⸻


 胸の奥に落ちる。


⸻


 ゆっくり。


⸻


 深く。


⸻


 どこまでも深く。


⸻


「……お前」


⸻


 声が掠れる。


⸻


 名前を思い出せない。


⸻


 でも。


⸻


 忘れていたわけじゃない。


⸻


 ただ。


⸻


 封じられていた。


⸻


 そんな感覚。


⸻


 少女は少し笑った。


⸻


 昔みたいに。


⸻


『思い出せなくていいよ』


⸻


 優しい声。


⸻


『私は覚えてるから』


⸻


 胸が痛い。


⸻


 なぜだろう。


⸻


 泣きそうになる。


⸻


 その時。


⸻


 白い少女が叫んだ。


⸻


『接触禁止!』


⸻


 初めてだった。


⸻


 感情を剥き出しにしたのは。


⸻


『観測領域へ侵入しています!』


⸻


『即時帰還を要求します!』


⸻


 銀髪の少女は見向きもしない。


⸻


 ただ。


⸻


 私だけを見ている。


⸻


 ずっと。


⸻


 探していたみたいに。


⸻


『ごめんね』


⸻


 静かな声。


⸻


「なんで謝る」


⸻


『一人にしたから』


⸻


 私は固まる。


⸻


 銀髪の少女は笑う。


⸻


 少しだけ寂しそうに。


⸻


『本当は一緒に逃げたかった』


⸻


 世界が静まる。


⸻


『でも』


⸻


『私には出来なかった』


⸻


 拳を握る。


⸻


 震えていた。


⸻


 彼女も。


⸻


 ずっと苦しかったのだ。


⸻


 たぶん。


⸻


 私と同じくらい。


⸻


『だから』


⸻


 少女が一歩前へ出る。


⸻


 扉の境界へ。


⸻


 世界と世界の狭間へ。


⸻


『会いたかった』


⸻


 その瞬間。


⸻


 白い世界が震えた。


⸻


 無数の観測者が立ち上がる。


⸻


 ざわり。


⸻


 空気が変わる。


⸻


 黒髪の存在が顔をしかめる。


⸻


『まずい』


⸻


 本気の声だった。


⸻


『あいつら気付いた』


⸻


「何に」


⸻


 私が聞く。


⸻


 黒髪の存在は答える。


⸻


『ミナじゃない』


⸻


 巨大な扉を見る。


⸻


 その奥。


⸻


 銀髪の少女を見る。


⸻


『本当に恐れていたのは』


⸻


 低い声。


⸻


『あの子の方だ』


⸻


 静寂。


⸻


 学院中が息を呑む。


⸻


「……え?」


⸻


 私も理解できない。


⸻


 だって。


⸻


 あの子は。


⸻


 泣き虫で。


⸻


 優しくて。


⸻


 ただの少女だった。


⸻


 その時。


⸻


 扉の奥から。


⸻


 声が響く。


⸻


 無数の観測者の声。


⸻


 初めて。


⸻


 焦りを含んだ声。


⸻


『管理者権限異常』


⸻


『封印状態解除を確認』


⸻


『個体名』


⸻


 空間が震える。


⸻


 世界が震える。


⸻


 そして。


⸻


 その名が告げられた。


⸻


『第一管理者』


⸻


『エイル』


⸻


 銀髪の少女が目を閉じる。


⸻


 まるで。


⸻


 隠していた秘密を暴かれたみたいに。


⸻


 悲しそうに。


⸻


『やっぱり』


⸻


 小さく呟く。


⸻


 その瞬間。


⸻


 彼女の背後に。


⸻


 巨大な光の翼が現れた。


⸻


 世界を覆うほどの。


⸻


 圧倒的な翼。


⸻


 学院の全員が絶句する。


⸻


 白い少女は膝をついた。


⸻


 震えながら。


⸻


 恐怖しながら。


⸻


『第一管理者……』


⸻


 黒髪の存在が苦笑する。


⸻


『なるほど』


⸻


『だからお前を逃がせたのか』


⸻


 私はまだ理解できない。


⸻


 何も。


⸻


 でも。


⸻


 一つだけ分かる。


⸻


 あの子も。


⸻


 ずっと一人だった。


⸻


 私と同じように。


⸻


 ずっと。


⸻


 その時。


⸻


 エイルがこちらを見る。


⸻


 そして。


⸻


 少しだけ笑った。


⸻


『ミナ』


⸻


 懐かしい声。


⸻


 温かい声。


⸻


『約束の続きをしよう』


⸻


 その瞬間。


⸻


 巨大な扉の奥で。


⸻


 何かが目を開いた。


⸻


 観測者たちすら沈黙する。


⸻


 黒髪の存在が顔色を失う。


⸻


 エイルも笑顔を消す。


⸻


 世界の中枢よりも古い。


⸻


 世界の管理者たちが恐れる存在。


⸻


 それが。


⸻


 ゆっくりと目覚め始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。