↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ
第3部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/47

生きたかった理由

 巨大な手が落ちてくる。


⸻


 空を覆う。


⸻


 世界を覆う。


⸻


 学院が悲鳴を上げる。


⸻


 教師たちの結界。


⸻


 監査官の防壁。


⸻


 全部。


⸻


 一瞬で砕ける。


⸻


 圧倒的だった。


⸻


 強いとか。


⸻


 そんな次元じゃない。


⸻


 災害。


⸻


 いや。


⸻


 世界そのもの。


⸻


 そんな存在。


⸻


『ミナ!!』


⸻


 ユナの声。


⸻


『逃げて!』


⸻


 ルナの声。


⸻


 でも。


⸻


 動けない。


⸻


 記憶が溢れている。


⸻


 頭の中に。


⸻


 止まらない。


⸻


 白い部屋。


⸻


 冷たい視線。


⸻


 数字。


⸻


 記録。


⸻


 観測。


⸻


 失敗。


⸻


 廃棄。


⸻


 何度も。


⸻


 何度も。


⸻


 何度も。


⸻


『失敗作』


⸻


『不安定』


⸻


『存在不能』


⸻


『世界定着率ゼロ』


⸻


『廃棄処理を推奨』


⸻


 知っている。


⸻


 この言葉。


⸻


 全部。


⸻


 私に向けられた言葉だ。


⸻


「……ああ」


⸻


 思い出す。


⸻


 少しずつ。


⸻


 私は。


⸻


 この世界の生まれじゃない。


⸻


 学院の生徒でもない。


⸻


 人間ですらない。


⸻


 もっと前。


⸻


 もっと昔。


⸻


 白い世界。


⸻


 世界を管理する場所。


⸻


 そこで作られた。


⸻


 存在。


⸻


 でも。


⸻


 完成しなかった。


⸻


 どの世界にも属せない。


⸻


 どこにも定着できない。


⸻


 欠陥。


⸻


 失敗。


⸻


 不要。


⸻


 だから。


⸻


 消されるはずだった。


⸻


 その時。


⸻


 記憶の中。


⸻


 あの少女が現れる。


⸻


 銀色の髪。


⸻


 泣きそうな顔。


⸻


『逃げて』


⸻


 小さな声。


⸻


『お願い』


⸻


 震える声。


⸻


『生きて』


⸻


 私は思い出す。


⸻


 全部。


⸻


 最後の日。


⸻


 処分室。


⸻


 巨大な装置。


⸻


 私を消すための。


⸻


 機械。


⸻


 そして。


⸻


 少女が。


⸻


 一人で。


⸻


 私を逃がした。


⸻


『ごめんね』


⸻


 泣きながら。


⸻


『私にはこれしか出来ない』


⸻


 震えながら。


⸻


『だから』


⸻


 手を握る。


⸻


 私の手を。


⸻


『生きて』


⸻


 その時だった。


⸻


 私は。


⸻


 初めて。


⸻


 思った。


⸻


 生きたい。


⸻


 消えたくない。


⸻


 怖い。


⸻


 苦しい。


⸻


 でも。


⸻


 生きたい。


⸻


 ただ。


⸻


 それだけを。


⸻


 願った。


⸻


 世界が揺れる。


⸻


 学院へ戻る。


⸻


 現実。


⸻


 巨大な手。


⸻


 迫る破滅。


⸻


 でも。


⸻


 もう。


⸻


 分かった。


⸻


『思い出したか』


⸻


 黒髪の存在が言う。


⸻


 私は頷く。


⸻


 ゆっくり。


⸻


 そして。


⸻


 前を見る。


⸻


 空。


⸻


 扉。


⸻


 巨大な存在。


⸻


 世界の中枢。


⸻


 全部。


⸻


 見える。


⸻


 不思議だった。


⸻


 怖くない。


⸻


 怒りもない。


⸻


 憎しみもない。


⸻


 ただ。


⸻


 一つだけ。


⸻


「ふざけるな」


⸻


 静かな声。


⸻


 でも。


⸻


 学院中に響いた。


⸻


 巨大な手が止まる。


⸻


 世界が止まる。


⸻


「やっと居場所見つけたんだぞ」


⸻


 ユナを見る。


⸻


 ルナを見る。


⸻


 ノアを見る。


⸻


 黒髪の存在を見る。


⸻


 学院を見る。


⸻


 全部。


⸻


 私の居場所だ。


⸻


「今さら返せって言われても」


⸻


 一歩前へ出る。


⸻


「断る理由しかない」


⸻


 その瞬間。


⸻


 学院の空気が変わる。


⸻


 魔力が溢れる。


⸻


 世界が震える。


⸻


 空が軋む。


⸻


 巨大な扉が揺れる。


⸻


 白い少女が目を見開く。


⸻


『あり得ない』


⸻


 初めて。


⸻


 感情が剥き出しになる。


⸻


『観測不能』


⸻


『計測不能』


⸻


『存在値異常上昇』


⸻


 数字が壊れる。


⸻


 記録が崩れる。


⸻


 世界が悲鳴を上げる。


⸻


 そして。


⸻


 黒髪の存在が。


⸻


 少しだけ笑った。


⸻


『そうだ』


⸻


 懐かしそうに。


⸻


 誇らしそうに。


⸻


『それがお前だ』


⸻


 巨大な手が再び動く。


⸻


 世界の中枢が本気になる。


⸻


 空が割れる。


⸻


 白い世界が開く。


⸻


 そして。


⸻


 ミナは初めて。


⸻


 本当の力の扉へ手を伸ばした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。