↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ
第3部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
41/47

思い出してはいけない

 砕ける。


⸻


 頭の奥で。


⸻


 何かが。


⸻


 音を立てて。


⸻


 砕けていく。


⸻


「……あ」


⸻


 膝が揺れる。


⸻


 立っているはずなのに。


⸻


 世界が遠い。


⸻


 学院も。


⸻


 空も。


⸻


 みんなの声も。


⸻


 全部。


⸻


 遠くなる。


⸻


『ミナ!』


⸻


 誰かが呼ぶ。


⸻


 ユナ。


⸻


 たぶん。


⸻


 でも。


⸻


 うまく聞こえない。


⸻


 代わりに。


⸻


 知らない声が聞こえる。


⸻


『失敗した』


⸻


 男とも女とも分からない声。


⸻


 遠い。


⸻


 昔の声。


⸻


『また失敗だ』


⸻


 白い部屋。


⸻


 知らない場所。


⸻


 私はそこにいた。


⸻


 小さい。


⸻


 今よりずっと。


⸻


 小さい。


⸻


 目の前には。


⸻


 大人たち。


⸻


 顔が見えない。


⸻


 でも。


⸻


 笑っていない。


⸻


『存在が安定しない』


⸻


『観測不能』


⸻


『世界へ定着しない』


⸻


『廃棄対象』


⸻


 声。


⸻


 声。


⸻


 声。


⸻


 声。


⸻


 全部。


⸻


 嫌になるほど冷たい。


⸻


「……やめろ」


⸻


 頭を押さえる。


⸻


 痛い。


⸻


 痛い。


⸻


 痛い。


⸻


 その瞬間。


⸻


 空の扉から。


⸻


 声が響く。


⸻


『記憶封印の解除を確認』


⸻


 学院全体が震える。


⸻


『観測対象の再接続を開始』


⸻


「再接続……?」


⸻


 ルナが呟く。


⸻


 黒髪の存在は顔をしかめる。


⸻


『まずい』


⸻


 本気の声だった。


⸻


『思い出させる気だ』


⸻


「何を」


⸻


 ユナが叫ぶ。


⸻


 黒髪の存在は答えない。


⸻


 答えられない。


⸻


 そんな顔だった。


⸻


 その時。


⸻


 私の周囲に。


⸻


 光が現れる。


⸻


 一つ。


⸻


 また一つ。


⸻


 また一つ。


⸻


 光の欠片。


⸻


 記憶。


⸻


 忘れていたもの。


⸻


 封じられていたもの。


⸻


 そして。


⸻


 一つの映像が映る。


⸻


 広い空間。


⸻


 果てのない白。


⸻


 無数の扉。


⸻


 無数の世界。


⸻


 無数の命。


⸻


 その中心。


⸻


 一人の少女が立っていた。


⸻


 銀髪。


⸻


 白い服。


⸻


 今のあの少女によく似ている。


⸻


 でも。


⸻


 違う。


⸻


 笑っていた。


⸻


 ちゃんと。


⸻


 笑っていた。


⸻


『あなたは特別』


⸻


 その少女が言う。


⸻


 誰かに。


⸻


 私に。


⸻


『だから怖い』


⸻


 映像が揺れる。


⸻


『でも』


⸻


 少女が泣いている。


⸻


『私はあなたが好き』


⸻


 胸が痛む。


⸻


 知らない。


⸻


 知らないはずだ。


⸻


 なのに。


⸻


 懐かしい。


⸻


 どうしようもなく。


⸻


 懐かしい。


⸻


『だから』


⸻


 少女が手を伸ばす。


⸻


『生きて』


⸻


 映像が途切れる。


⸻


 そこで終わる。


⸻


「……誰だ」


⸻


 呟く。


⸻


 答えはない。


⸻


 しかし。


⸻


 扉の向こうから。


⸻


 別の声が響く。


⸻


『確認』


⸻


 冷たい声。


⸻


 機械の声。


⸻


『危険因子の覚醒を確認』


⸻


 空が震える。


⸻


『修正処理を開始』


⸻


 巨大な影が動く。


⸻


 扉の奥。


⸻


 世界より大きな存在。


⸻


 それが。


⸻


 ゆっくりと手を伸ばした。


⸻


 学院へ。


⸻


 世界へ。


⸻


 私へ。


⸻


 その瞬間。


⸻


『下がれ』


⸻


 黒髪の存在が前へ出る。


⸻


 圧倒的な魔力。


⸻


 学院全体を包む。


⸻


 今までとは比較にならない。


⸻


 別格。


⸻


 本物。


⸻


 それでも。


⸻


 巨大な手は止まらない。


⸻


 まるで。


⸻


 虫を潰すように。


⸻


 世界ごと。


⸻


 消そうとしていた。


⸻


『ミナ』


⸻


 黒髪の存在が言う。


⸻


 振り返らないまま。


⸻


『思い出せ』


⸻


 静かな声。


⸻


『お前が何者かじゃない』


⸻


 巨大な手が迫る。


⸻


 学院が悲鳴を上げる。


⸻


『なぜ生きたかったのかを思い出せ』


⸻


 その言葉に。


⸻


 私の心臓が跳ねた。


⸻


 そして。


⸻


 忘れていた最後の記憶が。


⸻


 ゆっくりと開き始める。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。