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灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ
第3部

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開くはずのない扉

 巨大な扉。



 空の向こう。



 白い世界の中心。



 それは存在していた。



 学院より大きい。



 山より大きい。



 世界そのものみたいな。



 圧倒的な存在。



 誰も声を出せない。



 白い少女ですら。



 動けなくなっていた。



『あり得ない』



 震える声。



『許可が出ていない』



『まだ時期ではない』



 初めて。



 少女が狼狽していた。



 黒髪の存在が舌打ちする。



『最悪だ』



「だから何なんだよ」



 私は聞く。



 そろそろ説明してほしい。



 本当に。



 そろそろ。



 限界だ。



 黒髪の存在は少し黙る。



 そして。



 諦めたように言った。



『あれは世界の中枢だ』



 学院が静まる。



「……は?」



『この世界を管理している場所』



『全ての観測』



『全ての記録』



『全ての選別』



『全ての修正』



『全ての消去』



 空を見る。



 巨大な扉。



 言われてみれば。



 どこか機械的だった。



 神秘的じゃない。



 むしろ。



 巨大な装置。



 そんな印象。



『本来なら』



 黒髪の存在が続ける。



『誰も見ることはない』



『存在すら知らない』



『それでよかった』



 声が重い。



 何かを知っている。



 何かを隠している。



 そんな声だった。



「お前」



 私は聞く。



「何者なんだ」



 沈黙。



 ユナも。



 ルナも。



 ノアも。



 全員が見ている。



 黒髪の存在は。



 少し笑った。



 寂しそうに。



『昔』



 静かな声。



『世界を作る側だった』



 全員が固まる。



「は?」



 今日は何回目だ。



『正確には違うが』



『近い』



 黒髪の存在が空を見る。



『そして失敗した』



 短かった。



 でも。



 その一言だけで。



 十分だった。



 失敗。



 だから追放された。



 だから消された。



 だから黒猫になった。



 たぶん。



 そういうことだ。



 その時だった。



 巨大な扉が。



 ゆっくり開く。



 ゴゴゴゴゴ。



 音ではない。



 世界そのものが軋む。



 学院の窓が割れる。



 地面が震える。



 空が裂ける。



 生徒たちが悲鳴を上げる。



 教師たちが結界を張る。



 でも。



 意味がない。



 規模が違う。



 あまりにも。



 違いすぎる。



 そして。



 扉の隙間から。



 光が漏れた。



 白い光。



 温かくない。



 優しくない。



 ただ。



 冷たい。



 完璧な光。



 その中から。



 声が響く。



『観測開始』



 世界が止まる。



『異常個体』



『識別番号未登録』



『通称ミナ』



 私の名前。



 呼ばれる。



 知らない声に。



 知らない場所から。



『存在矛盾率』



『計測開始』



 数字が浮かぶ。



 空中に。



 無数の数字。



 文字。



 記号。



 理解できない。



 でも。



 嫌な予感だけは分かる。



『結果』



 少しの沈黙。



 そして。



 その声は言った。



『矛盾率百パーセント』



 学院が静まる。



 黒髪の存在が目を閉じる。



 白い少女が青ざめる。



 監査官が言葉を失う。



 ルナが私を見る。



 ノアも。



 ユナも。



 全員が。



 私を見る。



 そして。



 次の言葉が落ちた。



『対象を認定』



 冷たい声。



 機械のような声。



 神のような声。



『世界外生命体』



 私の思考が止まる。



『ミナは』



 扉の向こう。



 何かが立ち上がる。



 巨大な影。



 世界より古い存在。



 それが。



 ゆっくりこちらを見る。



『この世界の住人ではない』



 その瞬間。



 私の頭の奥で。



 何かが砕けた。



 忘れていた記憶。



 封じられた何か。



 遠い昔の声。



 知らない景色。



 知らない空。



 知らない自分。



 そして。



 私は初めて。



 本能的に理解した。



 この戦いは。



 今までの全部が前座だった。



 本当の物語は。



 ここから始まる。

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