逃げろ
『逃げろ』
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黒猫が言った。
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学院全体が静まる。
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誰も。
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聞き間違いだとは思わなかった。
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だって。
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今の声は。
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本気だったから。
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「……お前が?」
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私は黒猫を見る。
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「逃げろって?」
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黒猫は空を睨む。
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白い世界。
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無数の視線。
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無数の人影。
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そして。
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無数の敵。
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『今すぐだ』
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低い声。
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『あれはまだ観測段階だ』
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『本格介入が始まれば終わる』
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「何が」
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『全部だ』
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即答だった。
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ユナですら笑わない。
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ルナも。
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ノアも。
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監査官も。
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全員が異変を理解していた。
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空が軋んでいる。
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世界そのものが悲鳴を上げている。
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そんな感覚。
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その時。
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白い少女が一歩前へ出た。
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『七番』
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感情のない声。
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『任務違反を確認』
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黒猫は鼻で笑う。
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『今さらだ』
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『処分権限を行使します』
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その瞬間。
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空から光が落ちた。
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速い。
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速すぎる。
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誰も反応できない。
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いや。
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一匹だけ。
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反応した。
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黒猫。
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小さな体が跳ぶ。
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光と衝突する。
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轟音。
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学院が揺れる。
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地面が砕ける。
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土煙。
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衝撃波。
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生徒たちが悲鳴を上げる。
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「黒猫!」
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叫ぶ。
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煙の中。
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小さな影。
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立っている。
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でも。
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少し違う。
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輪郭が崩れている。
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黒猫の体が。
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光になっていた。
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「……は?」
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意味が分からない。
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黒猫が振り返る。
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その目は。
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少しだけ困ったようだった。
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『隠していたんだがな』
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学院が静まる。
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黒猫の体が崩れる。
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光へ。
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人の形へ。
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猫ではなくなる。
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長い黒髪。
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黒い外套。
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金色の瞳。
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青年とも。
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少女とも見える。
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不思議な姿。
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誰も声が出ない。
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「……誰」
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ユナが呟く。
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その存在は苦笑した。
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『その質問は毎回される』
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そして。
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私を見る。
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長い時間。
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ずっと見守ってきた目。
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『久しぶりだな』
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私は固まる。
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知らない。
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はずだ。
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でも。
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なぜか。
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懐かしかった。
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『ミナ』
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その声。
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胸がざわつく。
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何かを思い出しそうになる。
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でも。
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思い出せない。
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『思い出すな』
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即座に言われた。
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「は?」
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『今はまだだ』
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意味が分からない。
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今日は本当に意味が分からない。
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その時。
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白い少女が再び言う。
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『識別完了』
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初めて。
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声に感情が混じった。
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驚き。
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いや。
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恐怖。
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『第一観測者』
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学院が静まる。
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黒髪の存在がため息を吐く。
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『その名前で呼ばれるのは嫌いなんだが』
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少女は一歩下がる。
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本当に。
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初めて。
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怯えていた。
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『あり得ない』
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『なぜ生存している』
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『記録では消滅済み』
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黒髪の存在は笑う。
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少しだけ。
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皮肉っぽく。
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『消えたさ』
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空を見上げる。
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『一度はな』
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その瞬間。
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白い世界の奥。
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無数の人影が動いた。
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一斉に。
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こちらへ向く。
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ぞわり。
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寒気。
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学院中の誰もが感じた。
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まずい。
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本当にまずい。
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黒髪の存在も。
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初めて顔をしかめた。
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『……予定より早い』
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そして。
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私へ振り返る。
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『ミナ』
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真剣な目。
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『お前はまだ知らない』
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静かな声。
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『自分が何なのかを』
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空が割れる。
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白い世界が広がる。
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そして。
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その向こうから。
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巨大な扉が姿を現した。
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世界よりも大きな。
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白い扉。
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誰も見たことがないほど。
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圧倒的な存在感。
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黒髪の存在が。
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珍しく顔色を変えた。
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『……嘘だろ』
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その声には。
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はっきりとした焦りが混じっていた。




