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灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ
第2部

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不良品の王

 沈黙。



 学院中が。



 完全に止まった。



「友達いないだろ」



 私の言葉だけが残る。



 監査官が顔を覆う。



 ユナが肩を震わせている。



 笑うな。



 割と真面目な話だ。



 口だけの怪物は。



 じっと私を見る。



 顔はない。



 でも。



 確実に見ている。



『……友達?』



 声。



 不思議そうだった。



 本当に意味が分からないみたいに。



「ほらな」



 私は頷く。



「やっぱりいない」



 ユナがついに吹き出した。



「今それ言う!?」



「大事なことだろ」



「たぶん違う!」



 怪物は黙っている。



 怒っている。



 そんな感じじゃない。



 むしろ。



 困惑していた。



『必要ない』



 少しして。



 怪物が言う。



『不要だ』



「へえ」



『弱い者同士が群れる行為』



 口が歪む。



『価値がない』



 少女が震える。



 ルナも。



 俯いている。



 たぶん。



 思い出している。



 昔を。



『壊れたものは捨てる』



 怪物が続ける。



『不要なものは排除する』



 静かな声。



 当たり前のことを言うみたいに。



『それが正しい』



 私は少し考える。



 そして。



「なるほど」



 頷いた。



『理解したか』



「いや」



 一歩前へ出る。



「だから友達いないんだなって」



 再び沈黙。



 監査官が壁を見始めた。



 現実逃避だろうか。



 ユナはもう笑いを堪えていない。



 怪物は。



 初めて。



 少しだけ不機嫌になった。



『……人間』



 空気が揺れる。



『お前は理解していない』



「うん」



 即答。



『何?』



 今度は怪物が戸惑う。



「理解してない」



 私は肩をすくめる。



「壊れてたら捨てるとか」



 ルナを見る。



 少女を見る。



 黒猫を見る。



「意味分かんないし」



 静かになる。



『……』



「だって」



 少しだけ笑う。



「壊れてる方が面白いじゃん」



 ユナが爆笑した。



 教師が咳き込む。



 監査官は頭痛を堪えている。



 でも。



 私は本気だった。



 ルナも。



 ユナも。



 黒猫も。



 みんな。



 普通じゃない。



 でも。



 だから出会えた。



 だから面白い。



 だから。



 ここにいる。



 怪物は黙る。



 長く。



 長く。



 黙る。



 そして。



 初めて。



 少し低い声で言った。



『お前は異常だ』



「よく言われる」



『理解できない』



「お互い様だな」



 その瞬間。



 空気が変わる。



 怪物の周囲。



 黒い空間が広がる。



 学院の地面が軋む。



 今までとは違う。



 本気。



 そう分かった。



『ならば』



 怪物が一歩前へ出る。



『証明してみせろ』



 巨大な圧力。



 生徒たちが膝をつく。



 教師たちも苦しそうだ。



 監査官ですら顔色が悪い。



 でも。



 私だけは立っていた。



『居場所とやらを』



 裂け目が広がる。



 世界が軋む。



『守れるというのなら』



 少女が震える。



 ルナが私を見る。



 ユナも。



 黒猫も。



 全員。



 こっちを見ている。



 私は。



 小さく息を吐く。



 そして。



 少しだけ笑った。



「分かった」



 怪物を見る。



 真っ直ぐ。



「じゃあ証明する」



 世界が揺れる。



 裂け目の奥で。



 無数の影が動く。



 怪物は笑う。



 口だけで。



 不気味に。



 そして。



 私は初めて。



 この世界そのものを相手にする戦いへ。



 一歩踏み出した。

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