不良品の王
沈黙。
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学院中が。
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完全に止まった。
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「友達いないだろ」
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私の言葉だけが残る。
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監査官が顔を覆う。
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ユナが肩を震わせている。
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笑うな。
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割と真面目な話だ。
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口だけの怪物は。
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じっと私を見る。
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顔はない。
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でも。
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確実に見ている。
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『……友達?』
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声。
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不思議そうだった。
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本当に意味が分からないみたいに。
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「ほらな」
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私は頷く。
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「やっぱりいない」
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ユナがついに吹き出した。
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「今それ言う!?」
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「大事なことだろ」
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「たぶん違う!」
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怪物は黙っている。
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怒っている。
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そんな感じじゃない。
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むしろ。
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困惑していた。
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『必要ない』
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少しして。
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怪物が言う。
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『不要だ』
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「へえ」
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『弱い者同士が群れる行為』
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口が歪む。
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『価値がない』
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少女が震える。
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ルナも。
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俯いている。
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たぶん。
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思い出している。
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昔を。
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『壊れたものは捨てる』
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怪物が続ける。
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『不要なものは排除する』
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静かな声。
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当たり前のことを言うみたいに。
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『それが正しい』
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私は少し考える。
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そして。
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「なるほど」
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頷いた。
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『理解したか』
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「いや」
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一歩前へ出る。
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「だから友達いないんだなって」
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再び沈黙。
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監査官が壁を見始めた。
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現実逃避だろうか。
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ユナはもう笑いを堪えていない。
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怪物は。
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初めて。
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少しだけ不機嫌になった。
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『……人間』
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空気が揺れる。
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『お前は理解していない』
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「うん」
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即答。
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『何?』
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今度は怪物が戸惑う。
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「理解してない」
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私は肩をすくめる。
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「壊れてたら捨てるとか」
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ルナを見る。
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少女を見る。
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黒猫を見る。
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「意味分かんないし」
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静かになる。
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『……』
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「だって」
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少しだけ笑う。
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「壊れてる方が面白いじゃん」
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ユナが爆笑した。
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教師が咳き込む。
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監査官は頭痛を堪えている。
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でも。
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私は本気だった。
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ルナも。
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ユナも。
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黒猫も。
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みんな。
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普通じゃない。
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でも。
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だから出会えた。
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だから面白い。
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だから。
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ここにいる。
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怪物は黙る。
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長く。
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長く。
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黙る。
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そして。
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初めて。
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少し低い声で言った。
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『お前は異常だ』
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「よく言われる」
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『理解できない』
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「お互い様だな」
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その瞬間。
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空気が変わる。
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怪物の周囲。
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黒い空間が広がる。
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学院の地面が軋む。
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今までとは違う。
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本気。
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そう分かった。
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『ならば』
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怪物が一歩前へ出る。
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『証明してみせろ』
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巨大な圧力。
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生徒たちが膝をつく。
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教師たちも苦しそうだ。
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監査官ですら顔色が悪い。
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でも。
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私だけは立っていた。
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『居場所とやらを』
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裂け目が広がる。
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世界が軋む。
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『守れるというのなら』
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少女が震える。
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ルナが私を見る。
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ユナも。
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黒猫も。
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全員。
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こっちを見ている。
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私は。
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小さく息を吐く。
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そして。
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少しだけ笑った。
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「分かった」
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怪物を見る。
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真っ直ぐ。
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「じゃあ証明する」
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世界が揺れる。
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裂け目の奥で。
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無数の影が動く。
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怪物は笑う。
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口だけで。
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不気味に。
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そして。
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私は初めて。
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この世界そのものを相手にする戦いへ。
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一歩踏み出した。




