表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰を抱く少女は、何度でも折れる  作者: ニィギンヤ
第2部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/47

ひとりを許さない

 医務室は静かだった。



 でも。



 空気だけが重い。



 “処分”。



 その言葉が。



 ずっと残っている。



 少女は眠っている。



 小さい体。



 細い指。



 こんなのを見て。



 消そうって判断できるの。



 本当に終わってる。



「ミナ」



 監査官が低く言う。



「感情で動くな」



「無理ですね」



 即答。



 監査官が眉を押さえる。



 最近。



 この人よく頭痛そうな顔するな。



「お前は状況を理解していない」



「理解してます」



 私は少女を見る。



「この子を怖がってるんでしょ」



 監査官が止まる。



「……当然だ」



「世界が壊れるかもしれないから?」



「そうだ」



「じゃあ壊さなきゃいい」



 沈黙。



 監査官だけじゃない。



 教師たちも止まる。



 たぶん。



 簡単に言いすぎた。



 でも。



 本音だった。



 ルナの時もそうだった。



 向こう側の存在もそう。



 壊れる前に。



 “いていい”って言われてたら。



 違ったかもしれない。



「……ミナ」



 ユナが小さく言う。



「それ、かなり無茶言ってる」



「知ってる」



 自覚はある。



 でも。



 無茶でも。



 誰かが言わないと。



 また同じことになる。



 その時。



 少女の体が跳ねた。



 ビクッ、と。



 全員が振り向く。



 少女の周囲。



 空間が歪む。



 黒いヒビ。



 小さい。



 でも。



 確かに開き始めている。



「っ、来るぞ!」



 教師が叫ぶ。



 監査官たちが術式展開。



 ルナが青ざめる。



 ユナが後退する。



 でも。



 少女は泣いていた。



 眠ったまま。



「やだ……」



 掠れた声。



「ひとり、やだ……っ」



 ヒビが広がる。



 空気が軋む。



 怖い。



 たぶん。



 この子。



 怖くなると裂け目が開く。



 孤独と恐怖で。



 世界がズレる。



「拘束する!」



 監査官が前へ出る。



 その瞬間。



 私は反射で少女を抱きしめていた。



「ミナ!?」



 ユナの叫び。



 でも。



 私は離さない。



 少女の体。



 冷たい。



 震えてる。



 まるで。



 世界そのものを怖がってるみたいに。



「大丈夫」



 耳元で言う。



「ひとりじゃない」



 少女が息を呑む。



 その瞬間。



 ヒビが止まる。



 空間の歪みが弱くなる。



 監査官たちが固まる。



「……安定、した?」



 教師が呟く。



 少女の呼吸が落ち着いていく。



 震えも。



 少しずつ止まる。



 私は。



 その小さい背中を撫でる。



 ただ。



 それだけ。



 すると。



 少女が。



 そっと服を掴んだ。



「……あったかい」



 小さい声。



 涙混じり。



 その瞬間。



 また。



 理解してしまう。



 この子。



 本当に。



 ただ。



 怖かっただけなんだ。



「……門、ね」



 私は小さく呟く。



 こんなの。



 門じゃない。



 ただの子供だ。



 その時。



 黒猫が。



 静かにベッドの端へ座る。



 金色の目。



 じっとこっちを見ている。



 そして。



 ゆっくり瞬きした。



 まるで。



 “正しい”と言うみたいに。



 監査官が。



 苦しそうに息を吐く。



「……報告内容を書き換える」



 全員が見る。



「対象は現時点で安定」



「危険性は低下傾向」



 教師が驚く。



「お前、それ……」



「規則違反だ」



 監査官が自嘲気味に笑う。



「今さらだろ」



 少しだけ。



 人間っぽい顔だった。



 私は。



 その顔を見て思う。



 この人も。



 たぶん。



 ずっと苦しかったんだろうな。



 正しい側にい続けるの。



 その時。



 少女が。



 眠そうに目を開けた。



 ぼんやりした瞳。



 涙の跡。



 そして。



 私を見上げる。



「……あなた、だれ」



 静かな声。



 私は少し考える。



 それから。



 小さく笑った。



「たぶん」



「居場所作る係」



 ユナが吹き出した。



「ダサい肩書き!」



 うるさい。



 でも。



 少女が少しだけ笑ったから。



 まあ。



 悪くなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ