優しいズレ
静かだった。
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本当に。
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気味が悪いくらい。
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静か。
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学院上空。
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さっきまであったはずの巨大術式は。
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綺麗に消えていた。
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跡形もなく。
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まるで。
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最初から存在しなかったみたいに。
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「……は?」
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誰かの声。
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たぶん。
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監査官。
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でも。
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それくらいしか聞こえない。
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全員。
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理解が追いついていなかった。
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当然だ。
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中央直属部隊の最上位術式。
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国一つ消せるレベルの魔法を。
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私は。
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“ズラした”。
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ただそれだけで。
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壊したわけじゃない。
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防いだわけでもない。
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少しだけ。
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世界から外した。
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それだけ。
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「ミナ……」
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ユナの声。
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震えていた。
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怖がっている。
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でも。
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逃げていない。
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私は少し安心する。
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もし。
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ここでユナまで私を怪物を見る目で見たら。
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たぶん。
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結構傷ついてた。
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「……大丈夫?」
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ユナが聞く。
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その言葉で。
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少しだけ笑いそうになる。
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普通。
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今の状況で心配するの。
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世界の方だろ。
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「たぶん」
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そう答える。
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でも。
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本当は。
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少し危なかった。
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今。
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ほんの一瞬だけ。
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“向こう側”へ落ちかけた。
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分かる。
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裂け目の感覚が。
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やけに近かったから。
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その時。
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黒猫が。
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ぺしっ。
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前足で頬を叩いてきた。
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「痛」
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地味に痛いな。
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黒猫はじっとこっちを見る。
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金色の目。
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まるで。
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“戻ってこい”と言うみたいに。
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「……ありがと」
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自然に口から出る。
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黒猫が満足そうに目を細めた。
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なんなんだこいつ。
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その時。
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空の裂け目が揺れる。
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巨大な影。
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向こう側の存在。
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でも。
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最初ほど苦しそうじゃなかった。
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『あたたかい』
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声が響く。
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優しい声だった。
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『ここ』
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黒い世界の向こう。
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無数のズレた存在たちが。
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静かにこちらを見ている。
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誰も暴れていない。
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ただ。
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戸惑っている。
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たぶん。
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初めてなんだ。
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拒絶されなかったの。
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「……帰れそう?」
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私は聞く。
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自分でも不思議だった。
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巨大な異形へ。
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普通に会話してる。
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『わからない』
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影が揺れる。
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『でも』
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一瞬。
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静かになる。
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『もう、こわくない』
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その言葉で。
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胸が少し痛くなる。
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ああ。
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やっぱり。
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この存在たち。
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怪物じゃない。
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ただ。
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ずっと怖かっただけなんだ。
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世界に拒絶され続けて。
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居場所がなくて。
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だから壊れた。
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それだけ。
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その時。
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銀髪の監査官が前へ出る。
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武器は下がっていた。
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でも。
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顔はかなり複雑だった。
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「……お前は」
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少し止まる。
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「何なんだ」
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私を見る。
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怖がるみたいに。
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理解したいみたいに。
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私は少し考える。
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それから。
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小さく息を吐いた。
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「分かりません」
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本当に。
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分からない。
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怪物なのか。
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人間なのか。
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外れてるのか。
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壊れてるのか。
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でも。
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一つだけ。
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前より分かることがある。
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「でも」
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空を見る。
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裂け目。
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向こう側。
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居場所のないものたち。
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「居場所がないのは、苦しいです」
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静かな声。
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誰も喋らない。
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「だから」
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少しだけ笑う。
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「出来れば、追い出さないであげたい」
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風が吹く。
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裂け目が揺れる。
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巨大な影が。
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静かに目を閉じる。
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『やさしいな』
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その言葉が。
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なぜか。
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少しだけ悲しく聞こえた。
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次の瞬間。
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裂け目が縮み始める。
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ゆっくり。
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少しずつ。
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向こう側が遠ざかる。
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巨大な影も。
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無数のズレた存在たちも。
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黒い空間も。
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全部。
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ゆっくり閉じていく。
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『またね』
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最後に。
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その声だけが残った。
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そして。
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裂け目は消えた。
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静寂。
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学院へ。
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普通の空が戻る。
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誰も。
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すぐには喋れなかった。
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私は。
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空を見上げたまま。
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少しだけ思う。
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ああ。
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もしかしたら。
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世界って。
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思ったより。
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少しだけ狭いのかもしれない。
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居場所のないものが。
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こんなに簡単に溢れるくらいには。




