名前をくれる人
その場は、一旦止まった。
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中央直属部隊も。
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教師たちも。
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監査官も。
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誰も。
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すぐには動けなかった。
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理解できなかったから。
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“危険存在”が。
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誰かの言葉一つで落ち着くなんて。
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今までの理論が。
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全部。
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崩れる。
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「……一時撤収する」
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先頭の男が言う。
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低い声。
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でも。
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さっきより少しだけ人間っぽかった。
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「中央への再報告が必要だ」
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部隊が後退する。
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規律正しく。
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乱れなく。
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それでも。
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最初より。
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ほんの少しだけ。
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足取りが迷っていた。
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転移光。
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黒い装甲たちが消える。
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静寂。
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長い沈黙。
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そして。
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「……はぁぁぁぁぁぁ……」
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ユナが崩れ落ちる。
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「寿命縮んだ……」
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「元気そうでよかった」
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「どこが!?」
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うるさい。
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でも。
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少し安心する。
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銀髪の監査官が壁にもたれる。
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珍しく。
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かなり疲れた顔だった。
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「お前、本当に規格外だな……」
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「褒めてます?」
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「半分は」
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半分は何だ。
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聞かないけど。
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私は少女を見る。
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まだ少し震えている。
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でも。
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さっきよりはマシだった。
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黒猫が隣にいるからかもしれない。
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ずっと寄り添っている。
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「……ねえ」
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ユナが言う。
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「今のうちに名前決めよ」
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空気が少し止まる。
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少女がこっちを見る。
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不安そうに。
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でも。
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少し期待するみたいに。
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「名前」
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小さく繰り返す。
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まだ。
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自分のものとして馴染んでいない声。
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「うん」
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ユナが笑う。
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「番号じゃなくてさ」
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「ちゃんと、“あなた”になるやつ」
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少女の目が揺れる。
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その言葉は。
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たぶん。
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この子にとって。
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想像以上に重い。
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私は少し考える。
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名前。
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人間なら。
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当たり前に持ってるもの。
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でも。
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この子は。
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一度も貰えなかった。
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誰にも。
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存在を認めてもらえなかったから。
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「……ルナ」
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ぽつりとユナが言う。
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「やっぱこれ、似合うと思う」
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「安直」
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「でもかわいいじゃん!」
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少女が小さく呟く。
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「……るな」
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自分で口にする。
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確かめるみたいに。
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「ルナ」
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もう一度。
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今度は少しだけ。
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音が柔らかい。
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ユナが嬉しそうに笑う。
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「ほら!絶対似合う!」
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「……嫌じゃ、ない」
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その瞬間。
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空気が変わる。
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ほんの少しだけ。
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でも確かに。
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“誰でもなかった子”が。
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“ルナ”になった。
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私は。
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なぜか少しだけ安心する。
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名前って。
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たぶん。
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居場所そのものなんだ。
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誰かに呼ばれることで。
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ここにいていいって。
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証明されるもの。
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「よろしくね、ルナ!」
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ユナが手を差し出す。
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ルナが止まる。
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怖がっている。
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でも。
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逃げない。
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ゆっくり。
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本当にゆっくり。
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その手に触れる。
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小さく。
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震えながら。
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「……よろしく」
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掠れた声。
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でも。
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ちゃんと。
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“人間の声”だった。
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その時。
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黒猫が突然。
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私の膝へ飛び乗る。
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「うわっ」
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重いな。
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こいつ。
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黒猫は。
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じっとこっちを見る。
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金色の目。
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それから。
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当然みたいに鳴く。
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「にゃ」
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「……お前も名前欲しいの?」
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聞いた瞬間。
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黒猫がドヤ顔みたいな顔をした。
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腹立つな。
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ユナが吹き出す。
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「絶対欲しいって顔してる!」
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「猫の顔でそこまで分かる?」
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「分かる!」
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ルナが。
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小さく笑った。
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本当に。
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少しだけ。
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でも。
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今までで一番自然に。
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その笑顔を見て。
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私は思う。
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ああ。
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もしかしたら。
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これが。
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“居場所”なんだ。
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完璧じゃなくても。
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壊れていても。
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名前を呼んでくれる誰かがいる。
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それだけで。
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人は。
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ちゃんと存在できるんだ。
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その時。
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窓の外。
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遠くの空に。
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また小さく。
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黒いヒビが走った。
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誰にも気づかれないくらい。
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静かに。
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まるで。
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次の“居場所のないもの”が。
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迷い込もうとしているみたいに。




