名前のない子
少女は、あまり喋らなかった。
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というより。
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喋れなかった。
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言葉を忘れているみたいだった。
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人を見るたびに怯える。
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扉の音で震える。
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白衣を見ると、呼吸が乱れる。
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たぶん。
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全部。
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刷り込まれている。
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痛みと一緒に。
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「……」
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私は医務室に通っていた。
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理由はよく分からない。
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でも。
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放っておけなかった。
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放っておくと。
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昔の自分を見ているみたいで。
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少し。
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苦しかった。
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「ミナって意外と面倒見いいよね」
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ユナが言う。
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窓際。
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果物を勝手に食べている。
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「それ私の」
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「細かいこと気にするとハゲるよ」
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「お前が言うと妙に腹立つな」
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少女が。
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少しだけこっちを見る。
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会話を聞いている。
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でも。
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まだ混ざれない。
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どう入ればいいか。
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分からない顔をしている。
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「名前、どうする?」
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ユナが急に言う。
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「番号じゃ不便じゃん」
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少女の肩が揺れる。
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番号。
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その単語だけで。
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体が強張る。
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「……やめろ」
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少し強めに言う。
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ユナが止まる。
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「あ、ごめん」
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悪気はない。
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分かってる。
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でも。
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少女は俯いたままだった。
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沈黙。
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重い。
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その時。
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黒猫が。
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少女の膝へ飛び乗る。
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「にゃ」
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短く鳴く。
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少女が固まる。
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それから。
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恐る恐る。
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黒猫へ触れる。
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ぎこちない。
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でも。
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優しい触り方だった。
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「……あったかい」
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初めて。
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少しだけ。
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柔らかい声だった。
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ユナが笑う。
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「でしょー?」
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「お前の猫じゃないだろ」
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「もう私たちの猫ってことでよくない?」
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勝手だな。
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でも。
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否定する気にもならなかった。
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少女が。
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小さく口を開く。
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「……名前」
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私とユナが見る。
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「ほしい」
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その言葉だけで。
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胸が少し詰まる。
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ああ。
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この子。
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今まで。
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一度も。
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“誰か”として扱われなかったんだ。
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「じゃあ考えよう!」
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ユナが急に張り切る。
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「ルナとか!どう!?かわいくない!?」
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「軽い」
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「えぇ……」
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「もっとちゃんと考えろ」
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「ミナに言われたくない」
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失礼だな。
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でも。
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少女が少しだけ笑った。
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本当に。
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一瞬だけ。
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壊れそうなくらい小さく。
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でも。
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確かに。
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笑った。
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その瞬間。
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医務室の空気が。
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少しだけ変わる。
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柔らかくなる。
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たぶん。
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初めて。
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この部屋が。
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“監禁場所”じゃなくなった。
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その時。
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扉が開く。
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監査官。
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銀髪の女。
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表情が硬い。
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嫌な予感。
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「中央から正式通達が来た」
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空気が冷える。
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少女が震える。
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すぐ分かる。
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過去を思い出している。
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「対象の回収命令だ」
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やっぱり。
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ユナが立ち上がる。
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「は!?ちょっと待ってよ!」
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「決定事項だ」
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女の声は冷たい。
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でも。
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少しだけ。
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苦しそうだった。
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「明日、移送される」
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少女の顔色が消える。
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完全に。
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呼吸が浅くなる。
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黒猫が唸る。
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空気が揺れる。
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ズレ始める。
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また。
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壊れかけている。
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「……やだ」
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少女が震える声で言う。
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「やだ……っ」
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小さい。
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でも。
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はっきりした拒絶。
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私は。
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立ち上がる。
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自然に。
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「行かせません」
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銀髪の女が目を細める。
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「ミナ」
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「また壊す気ですか」
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静かに言う。
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「世界に合わせるために」
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沈黙。
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長い。
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女は答えない。
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でも。
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その沈黙だけで。
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十分だった。
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私は少女を見る。
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怯えている。
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でも。
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少しだけ。
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こっちを見ている。
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縋るみたいに。
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信じたいみたいに。
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だから。
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私は。
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初めて。
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ちゃんと決める。
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守ろう、と。
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自分と同じものを。




