居場所のないものたち
巨大だった。
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黒い。
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形が定まらない。
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空の裂け目から。
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ゆっくり。
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落ちてくる。
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まるで。
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世界そのものに拒絶されているみたいに。
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「総員、防御陣形!!」
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教師が叫ぶ。
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上級生たちが動く。
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魔法陣。
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結界。
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連携。
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速い。
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かなり練度が高い。
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でも。
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たぶん。
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意味がない。
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「やめて」
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自然に声が出る。
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誰かが止まる。
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でも。
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遅い。
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巨大な黒が。
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地面へ落ちる。
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瞬間。
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ズレが広がる。
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空間。
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音。
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重力。
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全部。
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噛み合わなくなる。
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結界が砕ける。
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魔法が途中で消える。
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生徒たちが吹き飛ぶ。
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「っぁ!?」
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悲鳴。
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混乱。
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でも。
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死んでいない。
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壊そうとしているわけじゃない。
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ただ。
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存在できないだけ。
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この世界で。
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うまく。
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呼吸ができないだけ。
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だから。
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暴れてしまう。
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私は前へ出る。
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「ミナ!!」
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ユナの声。
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止める声。
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心配する声。
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でも。
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怖くなかった。
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今はもう。
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分かるから。
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あれは。
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昔の私だ。
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誰とも噛み合わなくて。
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世界全部が痛くて。
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それでも。
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どうしていいか分からなくて。
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壊れるしかなかった。
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巨大な黒が。
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こちらを見る。
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目はない。
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顔もない。
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でも。
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確かに。
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見られていた。
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怯えるみたいに。
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縋るみたいに。
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「……大丈夫」
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また。
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その言葉だった。
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私は手を伸ばす。
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ゆっくり。
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無理に合わせない。
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押し込まない。
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否定しない。
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ただ。
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“そこにいていい”と認める。
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その瞬間。
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世界が揺れる。
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空気が震える。
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監査官が叫ぶ。
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「下がれ!!」
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でも。
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誰も動けない。
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目の前の光景が。
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理解できないから。
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黒が。
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泣くみたいに崩れていく。
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暴力じゃない。
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破壊じゃない。
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ただ。
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張り詰めていたものが。
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ほどけていく。
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そんな崩れ方。
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「……ぁ」
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小さな音。
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声だった。
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初めて。
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黒の中から。
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言葉が漏れる。
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「いた……い」
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空気が凍る。
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教師も。
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監査官も。
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全員。
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止まる。
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でも。
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私は驚かなかった。
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やっぱり、と思った。
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怪物じゃない。
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最初から。
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これも。
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誰かだった。
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「いたい」
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黒が繰り返す。
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「くるしい」
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崩れる。
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輪郭が。
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空間が。
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存在そのものが。
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世界と噛み合えなくて。
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擦り切れている。
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私は近づく。
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一歩ずつ。
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黒猫が隣を歩く。
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静かに。
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導くみたいに。
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「もう、大丈夫」
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触れる。
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巨大な黒へ。
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その瞬間。
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視界が割れる。
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流れ込んでくる。
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知らない記憶。
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暗い場所。
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叫び声。
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研究室。
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鎖。
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数字で呼ばれる誰か。
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『適合失敗』
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『同期率崩壊』
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『廃棄対象』
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頭が痛い。
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吐きそうになる。
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でも。
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分かる。
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こいつら。
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“作られた”。
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世界から弾かれたんじゃない。
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最初から。
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世界に合わせるために。
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壊された。
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「……最低」
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自然に漏れる。
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怒りだった。
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初めて。
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はっきりと。
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誰かに向いた感情。
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その瞬間。
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黒が。
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ゆっくり形を変えていく。
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巨大だったものが。
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縮む。
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崩れる。
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やがて。
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一人の少女が現れる。
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地面に倒れる。
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白い髪。
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痩せた体。
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傷だらけ。
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呼吸は浅い。
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でも。
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生きている。
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静寂。
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誰も喋らない。
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教師たちも。
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監査官も。
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動けない。
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私は。
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少女を見る。
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少女も。
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こっちを見る。
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震えながら。
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壊れた目で。
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「……なんで」
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掠れた声。
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「なんで、こわくないの」
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その質問に。
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私は少しだけ考える。
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そして。
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小さく息を吐いた。
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「同じだから」
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その瞬間。
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少女が。
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声もなく泣いた。




