同じもの
触れた瞬間。
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音が消えた。
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風。
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悲鳴。
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魔法の炸裂音。
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全部。
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一瞬で遠くなる。
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静かだった。
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世界ごと。
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止まったみたいに。
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「……あ」
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黒い獣が揺れる。
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輪郭が崩れる。
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形が定まらない。
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まるで。
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世界に拒絶されているみたいに。
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その感覚を。
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私は知っている。
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ずっと。
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知っていた。
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「お前も」
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自然に言葉が漏れる。
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「合わなかったんだ」
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返事はない。
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でも。
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獣の揺れが。
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少しだけ弱くなる。
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後ろで誰かが叫んでいる。
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「離れろ!!」
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監査官。
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焦っている。
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初めて聞く声だった。
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でも。
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私は動かない。
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怖くないから。
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このズレを。
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初めて。
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理解できたから。
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私は。
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目を閉じる。
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意識する。
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今までみたいに。
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“合わせる”んじゃない。
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逆。
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拒絶しない。
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無理に揃えない。
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ズレたまま。
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そのまま受け入れる。
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その瞬間。
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黒い獣の輪郭が。
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少しだけ安定する。
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「……え」
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誰かが息を呑む。
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当然だ。
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今まで攻撃が通らなかった相手が。
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急に静かになった。
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暴れない。
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吠えない。
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ただ。
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じっと。
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私を見ている。
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まるで。
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確認するみたいに。
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本当に。
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壊されないのか。
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確かめるみたいに。
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「大丈夫」
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また言う。
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今度は。
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ちゃんと意味が分かっていた。
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私は。
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お前を壊さない。
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無理に世界へ押し込まない。
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だから。
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大丈夫。
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その瞬間。
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黒い獣の体が崩れる。
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周囲がざわつく。
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でも。
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消滅じゃない。
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崩れた黒が。
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ゆっくり形を変えていく。
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小さく。
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細く。
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やがて。
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そこに残ったのは。
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一匹の黒猫だった。
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「……は?」
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監査官が固まる。
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教師も。
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上級生も。
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全員。
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止まっている。
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黒猫は。
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静かに私を見上げる。
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金色の目。
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少しだけ不機嫌そうな顔。
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それから。
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当然みたいに。
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私の足元へ座る。
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「…………」
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沈黙。
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長い。
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誰も理解できていない。
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正直。
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私も分からない。
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でも。
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黒猫を見る。
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さっきまでの。
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あの壊れそうな感覚が。
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もうない。
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代わりに。
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妙な安心感だけが残っている。
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「ミナ」
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教師の声。
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かなり硬い。
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「……説明できるか」
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「できません」
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即答。
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本当に分からない。
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でも。
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一つだけ。
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理解していた。
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「たぶん」
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黒猫を見ながら言う。
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「無理に直そうとしたから、壊れてたんだと思います」
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静かになる。
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誰も喋らない。
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「世界に合わせようとして」
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続ける。
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「だから、ズレた」
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自分にも言っているみたいだった。
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教師が黙る。
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監査官も。
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誰も。
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すぐには否定しなかった。
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その時。
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ユナが近づいてくる。
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慎重に。
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でも。
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止まらずに。
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「……触っていい?」
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黒猫に向かって聞く。
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知らないよ。
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そう思った瞬間。
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黒猫が威嚇した。
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「シャーッ!!」
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「えっ怖」
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ユナが下がる。
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少し笑いが起きる。
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緊張が。
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少しだけ崩れる。
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私は。
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その空気を見て。
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少しだけ思う。
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ああ。
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もしかしたら。
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まだ。
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戻れるのかもしれない。
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完全には。
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壊れていないのかもしれない。
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その時。
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黒猫が。
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小さく私の足に頭を擦りつけた。
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その感触だけが。
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なぜか。
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やけに温かかった。




