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【完結】孤児院イチの悪ガキだった俺が、次期国王の腹にアイスクリームをぶつけたら  作者: りっく
第四章 未来の国王

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40.内緒の手紙

 久々の再会を喜ぶ兄弟4人の前に、許された面会の時間は飛ぶように過ぎた。

 ニナを一人地下牢に残して去るのは苦しかったが、また会いに来ることを約束して、三人は留置所を出た。


「このあとアシュリーはまっすぐ帰るか? 俺たち、行くところがあって乗合馬車に乗るんだが」

「え、なら途中まで一緒に帰ろうよ!」


 カストルの問いにアシュリーは嬉しそうに提案する。

 彼らも会うのは三年ぶりだ。仲良さそうに肩を並べて歩く二人を見ているとトットまで嬉しくなってきた。

 この幸せがこれから先も続いていいのだと思うと、感無量だ。


 三人仲良く馬車に乗り込み、それぞれの目的地を目指す。

 下町に帰るアシュリーを見送って、トットとカストルはリーシェナが住まう保護シェルターに向かった。



 保護シェルターに到着すると、話はすでに通っていたようで応接室に案内された。

 リーシェナが一人そこで待っていて、トットとカストルがやってきたのを見て立ち上がる。


「二人とも、ご足労ありがとう」

「お、お久しぶりです」


 リーシェナは前と変わらない元気そうな姿……どころか、前よりもどこか溌剌(はつらつ)としている気さえした。

 元気そうでよかった、と思いながらトットはぺこりと頭を下げる。


 時間が惜しいと言わんばかりにリーシェナは本題を持ちかける。

 彼女が手にしていたのは、一枚の手紙だった。


「コーストランドに住んでいた頃の友人が、一人だけいるんです。エリザベートというのですけれど」

「エリザベート……?」


 どこかで聞いたことのある名前が出てきて、トットは眉をひそめる。

 その変化に気づいたリーシェナはパッと顔を輝かせた。


「ご存知ですか? アンリ王太子殿下の元婚約者の姫様ですわ」

「ああ、どおりで聞いたことがあると思った」

「ええ。孤児院にいた頃はこっそり文通をしていたのだけれど、父様と一緒に暮らしはじめてからはそれきりになってしまって。けれどここに来て自由になったので、また手紙を出してみましたの」


 そう話してからリーシェナは口の前に人差し指をぴんと立てる。内緒のジェスチャーだ。

 隣国の姫様とこっそり手紙を交わしていることが知れたら、リーシェナもマウフェルの隣の部屋で牢屋暮らしするハメになる。

 トットは頷きながら、続きを促す。


「そうしたら嬉しい返事が届いて……この手紙ですわ。ほら」

「読んでも?」

「ええ」


 トットは手紙を受け取って開く。

 女性らしい丁寧な筆跡で書かれた文章はこうだ。


『――海賊の数がもう少し減ったら、お忍びでシュタリスに行こうと思っています。

 大陸の別の国への交易船に隠れて乗って、それから陸路で。何も婚約に未練があるわけではありませんが、シュタリスの文化が好きなのです。

 同じ海を擁する文化なのに、私の国とは全然違う。

 さっぱりして明るくて綺麗で、活気溢れる雰囲気があって、食べ物も美味しくて……本当に魅力的です。

 けれど治安の悪さだけは不安なのです。誰か、腕に自信のある騎士様はいらっしゃらないかしら。

 知っていたら紹介してもらえると嬉しいです』


 読み終わるころ、リーシェナが捕捉するように言った。


「この手紙を読んで一番にカストルのことを思い出して、依頼したのです。けれどそうしたら、お屋敷の警備がいなくなってしまいますから」

「あー……確かに、それはよくないな」


 マウフェルの屋敷には、以前のまま使用人は残っているしカストルも警備として暮らしている。

 しかしマウフェルが逮捕されたことは周知の事実。屋敷が空くタイミングがあれば、使用人や財産が危機に晒されかねない。


「そういうことなら、俺がそれとなく上官に頼んでおくよ」

「ありがとう存じます!」


 リーシェナは目をキラキラと輝かせて礼を言う。

 本当はトットにそんな権限はないのだが、自分が持ち場を変更させてもらうくらいの融通は効く。

 リーシェナと、まだ見ぬ隣国の姫様のためにそれくらいの人助けはしてもいいだろう。


 嬉しそうなリーシェナを前に、トットは少しの無理をすることを決断したのだった。

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