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孤児院イチの悪ガキだった俺が、次期国王の腹にアイスクリームをぶつけたら  作者: りっく
第二章 因縁のカストル

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22/29

22.引き離されたのは

 リーシェナの見送りが終われば、馬車は帰路につく。

 アンリにはマウフェルの一件の事後処理で大量の仕事が残っているし、カストルには主人のいなくなった屋敷を守る役目がある。

 トットは彼らとともに一度王都に戻り、荷物を引き上げてから大陸軍の兵舎に戻ることとなった。


「リーシェナ様、大丈夫でしょうか……実はここ数日、シェルターについて調べていたのですが。あまりいい噂は聞かず」

「当然これまでの暮らしほど快適ではないだろうけれど。監視は行き届いているし、不当な目には遭わせないよ」

「あ……失礼しました。王太子様の前で」


 不安そうなカストルだが、アンリの前で国営の施設を疑うのは無礼だと気づいたようで、すぐに謝罪する。

 トットは二人の会話を聞き流しながら、会わない間にすっかり貴族の使用人らしくなっているカストルの姿に感心していた。騎士であるトットよりも、ずっと礼儀や気遣いに長けている。

 世の中向き不向きがあるものだ、と他愛もないことを考えながら、トットは馬車の外の景色を見つめる。


 トットの胸中もまた、晴れやかではなかった。


(結局、カストルの心配通りのことになっちまった。俺が首を突っ込んでなけりゃ、リーシェナは……)


 こちらにも事情がある、とトットを追い出そうとしたカストルの言葉を思い出した。決闘でトットが負けていれば、カストルがトットたちに全てを話すことはなく、マウフェルは罪を重ねることもなく――リーシェナが、孤児に逆戻りすることもなかった。

 孤児院という施設は嫌いではなかったが、親のいないひとりぼっちの寂しさはよく知っている。

 決闘に負ける気はさらさらなかったが、自分がきっかけで一人の少女が心細い思いをすることになるのは看過しがたかった。


「せめて、お母さんに会えればいいんだけどな……」


 ぽつり、と放たれたトットの言葉に、アンリとカストルが一斉にトットの方に視線を向ける。

 いきなり二人が自分の方を向いて、トットは驚いたように頬杖をついていた顔をあげた。


「……なんだよ。俺なんか変なこと言ったか」

 

「変ではない、けれど……」

「王太子様の前で言うことではないな。俺以上に」


 アンリとカストルは口々にそう指摘する。

 確か、隣国コーストランドの民であるリーシェナの母親とは、国交が断絶されているせいで会えなくなったんだったか……とトットは聞いた話を思い返した。

 

 国交を絶ったのは政府の考えだから、その担い手である王太子の前で言うことではない、ということだろうか。

 

「いや……政府の()()()リーシェナ様は母親と引き離されたんだから、言う先はアンリで合ってるだろ。今後どうにかできるとしても、この中じゃお前だけなんだぞ」

「そうだね。耳が痛いよ」


 アンリはそう言いながら、話したくなさそうに話題を畳もうとする。

 それに気づいて眉をひそめたトットが何か言う前に、カストルが待ったをかけた。


「トット。王太子様にだって事情があるんだ。もう10年前の話なんだから、当時の国政に王太子様が関わっているわけないのはわかるだろ」

「……どういうことだよ? 昔の悪政だったなら、なおさらアンリがなんとかすれば――」


 カストルが遠回しな表現で何か自分を諌めようとしていることはわかるのだが、その理由がわからない。

 頭上にハテナを山ほど浮かべるトットを見て、アンリは観念したようにため息をついた。


「いいよ、カストル。気を遣ってもらってありがとう。……カストルが言っているのは、僕もまたその被害者だってことだ」

「被害者?」


 突然出てきた物騒な言葉に、トットは思い切り目を細めて首を傾げた。

 アンリは自嘲気味に笑って、トットには話したことのない、自分の10年前の経験を言葉にする。


「僕はもともと、コーストランドの妹姫と結婚する予定だった。正式に婚約を済ませて、順調に仲を深めていたと思ったのだけれど――10年前。国王の政治的判断によって、破談になったんだ」

「被害者――お前も、大切な人と、引き離されて……」


 トットは何を言っていいかわからず、尻すぼみに言葉を途切れさせた。

 そんなトットの気持ちを沈ませすぎないように、アンリは声の調子を作って言った。


「ちょうど王都までは小一時間かかる。歴史の勉強と行こうか?」

「あー……お手柔らかに」


 揺れる馬車の中。

 ちょうど運命に翻弄された当事者であるアンリの口から、10年前の出来事が語られはじめた。

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