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第二項 溢れる魔力と望郷の念(第44話)

第一部 新世界の産声編 第二章 英雄達の新世界紀行 第四節 密林の部族

 この村に来てからそろそろ五か月が経つ。


 本来であればもう少し早くにここを出ていたはずなのだけれど、ここまで滞在が長引いてしまったのは色々と理由があると言うか――本当に色々とあったのよ。


 まず始まりとしては魔力もだいぶ回復してそろそろここを出ようかしらと考えていた頃、恒例となりつつあった外の世界のお話を子供達にしていたら見守り役の女性が急に産気づいてしまって急遽お産の手伝いをすることになって、お産が終わったと思ったら生誕の宴と言う行事が始まって、そうこうしている内に神鳥様が戻ってきて――と、怒涛の日々を過ごしてきた。


 とにかく色々とあったわけなのだけれど、ここまで長期化してしまった一番の要因と言えば、近辺の魔力濃度が日が経つ毎に濃くなっていったことにある。


 原因として考えられたのは例の大樹の傍にある魔力が沸き出てくる泉なのだけど、不思議なことに魔力濃度の上昇により予測された被害は何一つとして起こらなかった。


 むしろそれが平常であるかのように、魔力濃度も一定の水準に達してからはそこから大きな変化が起こるようなことはなかったのよね。


 更には不思議なことに、魔法の才能があったクルルァさんに魔覚――魔力を感知する感覚が芽生え、固有魔法が発現した。


 当人が言うには魔力濃度の上昇に伴って魔力の存在が感知できるようになり、魔法の使い方を自然と理解したのだとか。


 それ自体は魔法少女が魔力を扱えるようになる行程と同じなので特別なことでもないのだけれど、クルルァさんのような成人を過ぎた年齢でこのようなことが起こるのは前代未聞で、機関の調査員が聞いたら発狂物の案件なのよ。


 機関の調査員の仕事は大きく分けて二つあり、そのうちの一つが魔法少女の早期発見なのだけど、今回の事象によってこれまでは未成年の女性のみが対象であったのが、それ以後の女性までもが対象になるのは確実でしょうね。


 ざっくりとした計算でも二倍以上、下手したら三倍にも調査対象が膨れ上がることになる。


 ただでさえ調査員不足が危ぶまれているのに、これが判明してしまえば現場の崩壊を招くことになりかねないわね。


 私にはもう関わりのない事ではあるけれど、娘を通して調査員の教育に力を入れるようにさせなければ若い子達が必要以上に苦労をするのは想像に難くない。


 なので、この事象を詳しく調べる為に滞在期間を延ばすことに決めたのだけれど、結果は想像以上だった。


 まず、クルルァさんには魔力の扱い方をしっかりと教えた上で固有魔法なども含めて一通りの魔法の使い方を教えたのだけれど、一日と経たずにあっさりと使いこなしてしまった。


 これは才能があるなどと言う問題で片付けられる物ではなく、常識で考えるのであれば不可能とされていることなのだけれど……なぜかクルルァさんとの訓練を見ていた子供達に始まり、他の住人達まで当然のように魔法を使い始めてしまった。


 ここまで来ると、もはやただの異常事態で片付けられるような問題ではない。


 魔力濃度が上昇した結果、誰もが魔法を使えるような事態になるだなんて想像できるわけがない。


 そもそもこれらに因果関係があるのかすらわからない。


 流石にこれは不味いと判断した私は、魔法の使い方をしっかりと教える為に滞在期間を延ばさざるを得なかった――と言うのが顛末ね。


『ハルカちゃん、ちょっとお話したいんだけど、大丈夫?』


 帰った時の為に報告用の文書を記していると、不意に頭の中に声が響いた。


 ここ数か月ですっかり慣れ親しんだ声だけれど、少しだけ緊張してしまうわね。


「神鳥様? ええ、大丈夫だけれど、何かあったかしら?」


『ハルカちゃん、もうすぐ帰っちゃうんだよね?』


 幼げな声音と口調であるけれど、神鳥様は数千年余りを生きている――と言うのが本人の言。


 詳細を尋ねたわけではないけれど、彼女――性別としては女性に当たるそう――が纏う魔力の質が若い頃に見た神の使いと同等かそれ以上の物なので嘘ではないと思う。


 長い年月を生きる個体は魔力の質が変異して行くことが実証されていて、永い時を生きるほどに魔力の深みが増していく、と言うのかしら? 魔法少女の界隈ではよくワインに例えられていた覚えがある。


 神鳥様の場合は魔力の質も量も桁違いなのだけれど。


 それほどの魔力を持ちながらも神鳥様はとても気安く、それでいてよく喋る方なので、話しかけられた当初は困惑の方が強かったわね。


 そんな神鳥様だけれど、どうにも懐かれた――と言えばいいのかしら? ともかく、何やら気に入られたらしく、こうして私によく話しかけてくる。


 魔力に思念を乗せた意思伝達手段――念話という物には驚いたものだけれど、慣れてしまえば携帯電話より便利で使いやすいそれでもって毎日のように話しかけてくるの。


 なんでも、これまでは巫女と呼ばれる娘を相手にそうしていたというのだけれど、いつからか巫女が生まれなくなってしまってからはずっと話す機会がなかったのだとか。


 それでも、ここの人達と神鳥様の関係が良好なのは昔から変わらず敬ってくれているからだそう。


 神鳥様にとって、ここの人達は家族のようなものとも言っていたわね。


 と、そんな話をしたからか、家族を強く意識してしまった私は早々に帰らなくてはと言う念に駆られてしまったのよね。


「ええ、流石に長居し過ぎてしまったし、家族も心配していると思うの」


 流石に五か月も音信不通となれば心配――はどうかしら? あまり心配はされていないかもしれないけれど、それはそれで複雑ね。


 むしろ、私の方が家族――とりわけ夫や孫達の事が心配なのよね。


 娘達は……まあ元気でやっているでしょう。軟弱な鍛え方はしてないもの。


 そんな私の想いを知る由もない神鳥様は少しだけ寂しそうな念を乗せて言った。


『うーん、確かにそれは心配するよね。でも帰る時はちゃんと言ってね? ボクが送るから』


 どうやら帰りの際は目的とする街まで神鳥様が送ってくれるという事なのだけれど、本当に大丈夫なのかしら?


「ええ、ありがとう。でも、本当にいいのかしら?」


 守り神とされている神鳥様がこの森を離れても問題が無いのであれば構わないのだけれど。


 神鳥様が言うには、この周囲に限って言えばむこう数十年は自身が居なくとも万全の守りが維持できるとのこと。


『ボクがそうしたいんだからいいのさ。それに、そうでもしないとクルルァちゃんがそうするって聞かないと思うよ?』


「そうなのよねぇ……」


 クルルァさんに魔法を教えるようになってから、やけに慕われるようになってしまったのよね。


 ただ、現状に至ってもここで私が魔法少女だと知っているのは神鳥様だけだ。


 クルルァさんがついてくるとなると目的地まで徒歩で移動することになってしまう。


 何ならクルルァさんが私を背負って移動しかねないのが困りものね。


 それと、なぜ神鳥様が知っているのかというと、正体がバレたというわけではなく、明かさざるを得なかったというのが正しい。


 どういうわけだか、神鳥様には私が変身後の姿に見えているようなのよね。 


 超常的な存在が特殊な眼を持っているのは珍しい事ではないから、流石に対処のしようもなかったというのもあるわね。


『ま、帰り道はボクの翼でひとっ飛びだから任せといてよ』


「ええ、その際にはお世話になるわね」


 ただ、若干不安な点があるのよね。


『人を乗せて飛ぶのは久しぶりだけど、ハルカちゃんならいざと言う時は飛べるし大丈夫だよね?』


「え、ええ、そうね」


 こういった軽い言動も含まれているのだけれど、神鳥様って見た目も大きさもフクロウオウム――カカポにそっくりなのよね。


 ……どうやって乗ったらいいのかしら? そもそも、本当に飛べるのかしら?


 飛ぶと言う話はクルルァさんからも聞いているから信用に値するのでしょうけど、どうにも気になってしまう。


 ここに帰ってきた時もいつの間にか居たという感じだし、普段は地面をとことこと歩いているから余計に不安に思ってしまうのよ。


『あー、楽しみだなぁ。早くハルカちゃんと飛びたいなぁ』


 ……今も、私が着いている机の上で身体を左右に振りながら首を上下に動かすと言う陽気な踊り? を披露している。


 クルルァさん曰く、最高潮に機嫌が良い時はこの踊りに加えて七色に光り輝くという事だけれど、本当かしら?


 本当に、超常的な存在と言うのはそういう理解しがたい部分が多くて畏れ多いわね。


『ところでさ。ハルカちゃんって権力に興味ある?』


 ……? 突然の事で意味が図り切れなかったけれど、なぜ急に権力の話を?


「……特にないけれど、どういった意図の質問なのか聞いてもいいかしら?」


『うん、ハルカちゃんさえよければ、ボクの巫女になってほしいなって』


「それはつまるところ契約と同じような物かしら?」


『うん、そんな感じかな? 今のハルカちゃんって誰かと契約してるわけじゃないよね?』


「……ええ、そこまでわかる物なのね」


『まあね! それで、どうかな? ボクと契約したら常時魔法少女っていう状態になれるよ?』


 確かに、神鳥様と契約したのならばその程度は可能になると思う。でも――


「申し出は嬉しいのだけれど遠慮しておくわ。私はもう力は要らないもの」


 あとの事は若い人達に任せて年寄りは引かないと。


 次代を育てるのならまだしも、それもしないでいつまでも現役気取りで居座るのはよくないものね。


『そっかぁ……』


「そういうのはクルルァさんに頼んだらどうかしら?」


 今のクルルァさんであれば魔法少女に成る条件を満たしていることだし、神鳥様の巫女に成ることも可能じゃないのかしら?


『んー、クルルァちゃんは良い線行ってるんだけど、もうちょっとって感じかな』


「何かしらの基準があるという事なのだろうけど、あとは何が足りないのかしら?」


『単純に魔力不足かな。魔力に目覚めたばかりであの魔力量はすごいけどね』


 確かに、クルルァさんの魔力量は私の幼少期――魔覚に目覚めた頃の倍以上はあるのよね。


 当時の同年代の中では世界でも五指に入る程度だったみたいだから、魔覚に目覚めたばかりであの魔力量はすごい事なのよね。


 魔力というものは魔覚を持たない者にはよくない影響を与えてしまうから、一定以上の魔力は身体に留まることなく素通りするようになっている。


 これが魔覚に目覚めた者だとその一定量を超えて個人の素質による許容量一杯まで魔力を取り込むことが可能になる。


 クルルァさんの場合はこの許容量が大きく、尚且つ魔力の変換効率も高いようなのよね。


 この変換効率と言うのは外界に漂う魔力を身体に取り込む際、その生体に合った魔力に変換されるのだけれど、変換される過程で半分以上の魔力は変換時に生じる余剰分として生体に取り込まれることなく流出してしまうのが通常の事なのだけれど、どうやらクルルァさんの場合は外界の魔力を余すことなく取り込んでいるようなの。


 これがどれほど凄いかと言うと――発電に例えるなら太陽光や水力、風力、火力等によって生じたエネルギーが余すところなく電力に変換できているような状態ね。


 あとは、取り込んだ魔力を純化する方法を習得したのならクルルァさんは名実ともに最強の魔法少女を名乗れそうね。もっとも、当人は魔法少女に成るつもりはないみたいだけれど。


 魔力の純化に関しては触りだけは教えておいたけれど、よく考えてみたら魔法少女や魔女の秘奥に当たる技術なのよね。流石にこれ以上は情報漏洩になるかしら……?


 ……まあ、クルルァさんならいずれ自力でものにするでしょうし、それが少しくらい早くなったところで問題はないわね。


「そればかりは時間が必要でしょうね。まだ魔法を使えるようになって間もないのだし、基礎魔力の増やし方は教えているから、いずれ私を越えていくはずよ?」


『ハルカちゃんがそう言うなら、もう少し待とうかな』


「そうしてあげてちょうだい。そう長くはかからないと思うわ」


『へぇ、ハルカちゃんがそこまで言うんならそうなんだろうね』


「えぇ……ところで神鳥様?」


『ん? なにかな?』


「神鳥様は現状の魔力濃度について、どういうお考えなのかしら?」


『以前にも言ったとおり、現状維持かな。この状況に害がないことはハルカちゃんもわかってるでしょ?』


「やっぱりそういう認識なのね……神鳥様、今、世界では何が起こっているの?」


『うーん……ハルカちゃんはこの異変を認識してるんだね?』


「ええ」


『それならまぁ……いっか。まず結果だけを伝えると、滅びそうだった世界が救われたってことかな』


 ……あまりにも予想外の答えが来て気を失いそうになってしまったわ。


「……あの、神鳥様? この状況と世界が救われたことに結び付く要因がわからないのだけれど」


『あー、うん。それもそっか。じゃあ、順を追って説明するけど、ボクらの居た世界は徐々に衰退していて、近いうちに滅ぶんじゃないかって危惧してたんだ。多分、それはハルカちゃんの居た世界も同じで、そう言った世界と世界を融合させたのが今の世界なんじゃないかって感じだね』


 世界の融合だなんてあまりにも非現実的なのだけれど、信用に足る要素はすでにいくつか目にしている。


 目の前の神鳥様こそがまさにそれだし、ふと見上げた夜空に浮かぶ月の数がおかしかったり。


 月に関してはもっと早く気づいていたらとは思ったけれど、歳を取ってからはわざわざ月を見るような事がほとんどなかったのよね。まさか月が増えているだなんて思わないし。


 とにかくそのようなこともあって、神鳥様の言葉はすんなりと信じることができた。


「……つまり、その……私は異世界人という事になるのかしら?」


『ボクらの視点からしたらそうだけど、この世界の住人であることには変わらないよ。ボク自身、世界の融合なんて事象は初めて体験したけど、これはそういうものだからね』


 世界の融合だなんて私も初めて体験したけれど、そういうものだと言われたら仕方がないのかもしれない。


 明言こそしていないけれど、これはきっとそういう次元の存在が行ったことなのだと思われた。


 気になるところではあるけれど、明言しないという事は踏み入るなと言外に告げているのでしょうね。


 最も、聞けたところで既に終わっていることなのでどうしようもないと言うのもあるけれど。


「じゃあ、この状況への違和感は私が異世界人だから――と言うわけでもないのよね? 神鳥様やクルルァさんが違和感を感じているのと同じなのかしら?」


 これもまた気になることで、クルルァさんが初めて魔法を使った際はとても驚いていたのに対して、他の人達はそれほど驚いていなかったのよね。


 なんていうのかしら……まるで魔法そのものは知っていて、見たのは初めて、と言った感じだったのよね。


 そう言った人達は、当然今の状況に対して違和感を抱いている様子などは全く見られない。


『お、鋭いね。これはボクの推測だけど、世界の融合に当たって異なる世界の自身と統合されたかどうかが肝なんじゃないかな』


「異なる世界の自分? 自身と同じ存在という事かしら?」


『まったく同じ存在と言うよりは、根源を同じくする存在かな。例えば、異世界のハルカちゃんがボクみたいな存在だったなんてこともあるかもしれないし』


「異世界の自分が人間であるとは限らないという事ね」


『そうそう。なんだったら生物ですらないなんてこともあるよ? 根源っていうのは森羅万象全ての物事に宿るものだからね。あ、魂って言い方の方が解りやすいかな? 魂の源と書いて魂源とも云われてるし』


 別の世界の自身が神羅万象の何らかである可能性があるという事よね?


「この世の全ての起源を辿ると一つの存在に行き着くという説があるけれど……」


『うん、それは正解でもあり間違いでもあるね。こんな答えになるのには理由があって、説明しようと思ったらすごく長くなるけど、聞きたい? 聞きたいんならボク、語り尽くしちゃうよ?』


 神鳥様はすごく話をしたそうにしているけれど……神鳥様の話は長話で済まされる長さではないのよね。


「出来たら手短にお願いできるかしら?」


『ちぇ、残念。じゃあ、簡単に言うけど、そういった人間が辿り着いた諸説の大体は当たっているんだよ』


「大体は、と言うと?」


『全部が全部正解じゃないんだけどね。起源についての説は複数あるのが正解ってことだね』


「それだと、一つの世界で収まる話じゃ……あぁ、そういうことなのね」


『そう、複数の世界があるからね。ここはどこかと融合しちゃったけど』


「そうだったのよね……ああ、ごめんなさい。すっかり脱線してしまったけれど、違和感を感じる者とそうでない者の違いは何なのかしら?」


『むしろボクは幾らでも話が逸れてくれた方が嬉しいんだけどね。いっぱいお話しできるし。ちなみに、ここまでの話を聞いて、その事についてハルカちゃんはどう思う?』


「そうね……いつ世界が融合したのかもわからないくらいだから何とも言えないけれど、私はここに来る前に異空間にいたから、それが原因かしら?」


『え、なにそれ怖い。でもたぶんそれが原因じゃないかな。たかだか異空間にいた程度で世界規模の融合の影響からは逃れられないだろうし』


「そうなのね。じゃあ、答えは何かしら?」


『ほかに思い当たる節は?』


「あら、まだ答えてもいいのね。でも、思い当たる節と言われても……」


『ハルカちゃん自身に何かがあるはずだよ? よく思い出してごらん?』


「私自身に? そうは言われても……あ、もしかして、あれかしら? 若い頃に何度か死にかけたことがあるのだけれど、急に力が湧いてきて助かったことが何度かあるのよ」


 我が身に起こったことながら、何が起こったのか全く理解できない現象だったわね。


『おっ、やっぱりね。ちなみにそれって何回くらいかな?』


「ええと、確か……そうね。三回くらいかしら?」


『三回かぁ……となると、少なくとも四つの世界が融合したのかな?』


「待ってちょうだい。それと私が死にかけたことに何の関係があるのかしら?」


『ああ、ごめんごめん。この件とハルカちゃんの事に直接的な因果関係はないよ。ただ、ハルカちゃんが世界融合による影響を受けていない要因にはなっているけどね』


「影響を受けていない……違和感を感じているのは融合の影響を受けていないから、ということ?」


『そうなるね。世界が融合するにあたって、各世界の生命は異なる世界の自分と統合されて然るべきなんだけど、一部の者にはこれが起こらなかったんだろうね』


 世界の融合に対して個に対しては統合と言われているのが引っかかるけれど、要は世界が融合した際に統合された個と統合されなかった個がいるという事みたいね。


「……私を含む、影響を受けていない者がその一部という事なのね?」


『そうなるね。なんでだと思う?』


 思わせぶりなことを言うあたり、神鳥様はなかなか性格が悪いと思うわ。


 けど、ここまでの会話からおおよその予測はついている。


「世界が融合される前に統合されていた存在は、世界の融合の際に統合から漏れたのね。何せ統合させるべき存在が居ないから」


『はい、正解! じゃあ、どうして世界が融合される前に統合されてたんだと思う?』


「おそらくだけれど、別の世界の私が死んだから……かしら?」


『うん、それも正解だよ』


「俄かには信じ難いけれど、あの奇跡がそういう事だったのなら納得するしかないわね」


 若い頃にそのような映画を見たことがあるけれど、まさか自分にも同じことが起こるだなんて思わなかった。


 それでも信じられるのは、私の身に起こった三度の奇跡でしょうね。


 まさか、異世界の自身と統合されることで窮地を乗り切っていたなんて思いもしなかったわ。


『まあ、異世界の自分と統合されるなんてそうそうある事じゃないんだけどね』


「え?」


『まあ、色々と条件があるんだよ。そうしないと異世界に跳んで自分を殺し始める愚か者が出るし』


 ああ、映画のようなことにはならないのね。それは良かった……のかしら?


 しれっと異世界に行く方法があると言われたようなものだけれど、深く追求するのはよしましょう。


 とはいえ、世界の融合に乗じて統合された人達は今の世界を違和感なく過ごしている一方で統合済みだった私のような人達は違和感に戸惑っているわけで。


「つまり、私やクルルァさん、あと神鳥様はこの先、苦労するという事なのかしら?」


『そういう面はあるだろうね。何しろ四つの世界が融合したわけだし、普通であれば受け入れられていたはずの感覚も違和感として残るから、そう言った部分に慣れていかなきゃいけない場面が出てくるだろうね』


「最悪の場合、異なる常識に苦しめられるような状況も出てきそうね」


『今のところ、ボク達の世界とハルカちゃん達との世界間における常識的な差異はなさそうだけどね』


「何なら神鳥様のような超常的な存在もいるし、意外と似通った世界だったのかしら?」


『えっ! ボクみたいなのが他にもいるのっ? 聞きたい聞きたい!』


「私も神鳥様達の世界の事が出来るだけ知りたいから、ここを出るまでにしっかりと話をしておいた方が良さそうね」


『まあ、ボク達はこの森の外の事はあんまり知らないけどね』


「そう、だったわね……」


 そうだったわ。


 せめて、ここを出る前に外に出ていると言う人達が戻って来てくれたらよいのだけど。


 まさか世界が融合していただなんて思いもしなかったから、家族が心配でたまらないわ。


 統合という事象についてもよくわかっていないことが多いし、家族が知らない誰かに――誰かどころか、人ですらない可能性だってあるのよね。


 ……最悪の状況を覚悟しておいた方が良いのかもしれないわね。


 ようやく余生を平和に過ごせそうだと思っていたのに、最後の最後にこの状況……本当に最悪の状況になっていたとしたら、神様でも恨めばいいのかしら?


 なんにせよ、今はやれることをやって早く帰ることができるようにしないといけないわね。

いきなり出てきた神鳥様。燈牙の世界の存在ですが、位置付け的には龍王様の同胞に近いです

見た目は作中に書いている通りカカポのような見た目で性質は幼稚で陽気な発光体質の陽キャ全開の存在となっています

謎のダンスや発光はネットミームの『party_parrot』をそのまま引用しています



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