リリーの手帳(3)
アミは目を見開き、ぱちぱちとさせた。
座って聞いていた為うとうとしかけていたアミは、その衝撃で心臓がばくばくし、脳が冴えていくのを感じた。
「そんなことって……」
言葉は続かない。
「もう少しで読み終わるから、続けてもいいかのぅ」
お爺さんは、落ち着いた眼差しをアミに向ける。
「あ……はい」
『……言葉が足りなかったのです。言わなければ伝わるはずがありません。言っても伝わらないことが山ほどあるというのに。
そしてダークに、この子は将来、光国と闇国を繋ぐ架け橋になるのだと。貴方を救う光になるのだと教えてあげればよかったのです。
今現在、闇国の方たちがさまざまな方法で光国に攻め入ってきています。私たち光国の者は、守ろうとは思いますが、戦おうとは思いません。滅びるのだとしたら、それは必然的な定めなのかもしれません。心の片隅でダークの幸せを願い、戦争の終息を願っています。
どうか、忘れないで。私がいたことを。あの頃の気持ちを。私が思い出せなかったら、ウサギの触り心地でもいいから。
お願い。信じてほしい。私を。自分を。本当は貴方も分かっているはずなんだから。』
お爺さんは手帳をぱたんと閉じた。これで読み終わったということらしい。
アミはふらふらと立ち上がり、お爺さんに向かって深くお辞儀をした。
「お爺さん、長々とありがとうございました。私は宮殿へ向かいますね……」
力なく言う。お爺さんもアミも酷く疲れた様子だ。
「気を付けて……」
お爺さんから手帳を受け取ったアミは、門を背にして遠くを見据えた。まだ見えぬ未来に覚悟を決めて。




