表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/29

リリーの手帳(2)

 私はその日、ダークの為に力を強くする方法を考えました。そして“魔法の石”をダークにあげるということに至ったのです。“魔法の石”は、光国の宮殿に代々伝わるもので、その力を使えば何でも叶うとまで言われている強大な力を持った石です。

 

 しかしさすがに、代々伝わる石自体をあげることは出来なかったので、闇国の市場に行こうと考えました。その方が闇国の力なのでダークも喜ぶと思ったのです。門の前でダークと闇国に行った時のことを思い出しました。殺伐とした気持ちになろうとしました。ですが、私には出来なかったのです。


 そこで、「お願いです。私の大事な方の為に、闇国へ行きたいのです」と祈ったのです。目を開けると、そこは純白の世界でした。そして右手に光国。左手に暗い空の闇国がまるで、水の中にあるように見えていました。多分門の中だったのでしょう。「なぜ願うか」声が聞こえました。「大事な方の為に、力が欲しいのです」私は答えました。そしてまた闇国に入れるよう願いました。「いくら願ってもお前を闇国に入れることは出来ない」声が言いました。私は願うのをやめませんでした。


 すると目の前から、小さい影が現れたのです。お爺さんでした。「わしはこの門の妖精で、門番をやっている者じゃ」そして石を二つくれたのです。「これは力を持つ石じゃ。力の使い方を誤ると破滅が待っているぞ。この石はこの石より強い力を持つ。なにかあれば、お前が止めるのじゃ」私は喜んで帰りました。


 ダークに渡したかったのですが、あの様子がおかしかった時からしばらく姿を見せませんでした。ついに姿を見かけた時、近寄り、これをあげると言って弱い力の方の石を渡したのです。また、ダークは変で、手を私の手に重ねてきたのです。そしてキスをしてきました。お礼だったのでしょうか。私は嬉しさと同時に、ダークの気持ちが分からなくて困りました。


 それから、十年ほど経ちました。あれから、ダークは姿を見せていなかったのです。

 しかし、私はどうしても結婚するということを伝えたくて門の前で待っていました。結婚したら、女王を受け継ぐことになり、今のように宮殿を抜け出してここに来ることはあまり出来なくなってしまうからです。ずっと待っていました。そしてついに、結婚する前夜にダークは姿を現わしたのです。


 私はダークの顔に違和感を感じました。もちろん、十年も経っているので変わっていても不思議はありません。しかしまるで別人に見えたのです。十年前なのでおぼろげにしか顔を覚えていませんでしたが、目の前にいるその方は見覚えのない顔をしていました。つい、「本当にダークなの」と聞いてしまったほどです。闇国から入ってくる方なんてダークしかいないのにも関わらず。


 ダークは顔を変えているのだと教えてくれました。石のおかげで顔を変えられて、被り物がいらなくなったのだと。そしてダークが、石の力が暴走してしまって両親を殺してしまい、自分が王になったことや、実質は弟が国を動かしていることを教えてくれました。


 ダークが不憫でなりませんでした。無表情で何の感情も忘れてしまったかのように淡々と語るダークの代わりに、私は涙を流しました。俺は悲しくないのだから、代わりになってないよと言い、泣くなと怒られましたが私は泣き続けます。そして今度は私が明日結婚して女王になることを伝えました。ダークは酷く驚いていました。


 ダークは会わない間にとても変化していました。

 光国に入るために四時間かかったのだと言い、嘔吐を繰り返しているのです。身体が触れた時思わず逃げ出したくなるほどでしたが、同時に愛おしさが溢れてきました。心の闇の中に一筋の光があったのです。私はダークに忘れられていなかったのです。弱さや闇を隠そうとしているのに隠しきれていなくて、それに呑まれていくのに必死で抗おうとしている。可哀想で可愛くてどうしようもない。何とも言えない気持ちを抱えてしまったのです。


 私とダークは約束しました。


 私を忘れないこと。光国に入るときの気持ちを忘れないこと。そして年に一回は会うこと。

 堕ちていくのを放ってはおけませんでした。目の前にいるこの方を、救いたかったのです。


 しかし、結果を言ってしまうと、救うことは叶いませんでした。


 最後に会ったのは、生まれた赤ん坊を見せた時です。

 私は嬉しくて舞い上がっていましたので、その時は気がつかなかったのですが、ダークは浮かない顔をしていたように思います。と言っても、無表情なのであまり分かりませんでしたが。その時、ダークはそれが誰の子であるかなど聞きませんでした。そして私も言いませんでした。言わなくても分かってくれると。言ってしまったら、女王としては“いけない”と怒られてしまう気がして。


そんな不安や恐怖、捨ててしまえばよかったのです。そして言ってしまえばよかったのです。


それが貴方の子であることを――』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ